
相続税の発生するケースが増えています。
相続税改正で、相続税が発生するハードル(基礎控除)は2015年1月1日から、「5000万円+相続人の人数×1000万円」から40%減の「3000万円+相続人の人数×600万円」へとずいぶん低くなりました。
例えば、相続人が3人のケースでは、従来は8000万円の基礎控除額が4800万円となったわけです。相続税の支払いを心配しなければならいないケースがぐっと増えたと思われます。
相続税の申告期限は「知ってから」10か月以内と短い。円満な遺産分割協議が必要です。
その相続税ですが、相続があったことを知ってから、10か月以内に、税務署への申告と納税をしなければならないことになっています(相続税法27条)。
10か月以内に、相続人間で遺産分割協議が整わない場合でも、この「相続発生を知って10か月以内に申告・納税」という期限は延長できません。
そのような場合は、”すべての相続人が法定相続分に従って相続をする”と仮定して、相続税を計算することになっています。この場合は、もし遺産割協議が整っていれば使えた「小規模宅地の特例」「配偶者の税額の軽減」などの軽減措置は使えないため、高い相続税を支払う結果になりえます。
しかも、遺産分割協議がない間は、被相続人の口座の預金引き出しは「預金×1/3×各人の法定相続分(1金融機関当たり150万円)」(民法909条の2)(注)まで、と制限がありますので、金策も大変かもしれません。
救済措置はあるが、一時的に大きな資金が必要なこともあります。
このような場合の救済措置として「3年以内に分割協議が整う予定」である旨を届け出て、協議完了後に、これらの軽減措置を使って再計算した相続税との差額の還付を受けることが可能ですが、一時にせよ、大きな金額の支払いをする必要があります。(※「相続税の申告書の提出期限から3年以内に分割する旨の届出手続」(国税庁))
今から考えたいことー円満な相続ができるコミュニケーション作りと遺言の検討が有益です。
こう考えると、相続後10か月以内に、遺産分割協議を円満に終了させる環境を作っておくことが、大切な相続税対策であると言えそうです。特に、相続人が多い場合、相続人が日ごろあまりコミュニケーションが取れていない場合、故人の財産特定に時間がかかる場合などには、10か月という期間は短すぎるかもしれません。
少しでも心配がある場合は、相続のことを日ごろから関係者でよく話し合っておくことや、故人の意思を遺言で残す方法を検討する価値があると思います。
【ご参考】
今回の相続法の改正で、遺産分割協議前でも、それぞれの相続人が、一定程度の預貯金の引き出しが可能となりました。
第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
⇒ 上記の制限金額は、法務省令で150万円とされています。