生命保険を利用した相続対策

 生命保険は、残された遺族の生活資金のために加入することが多いと思いますが、生命保険金は、保険金受取人の固有の財産とみなされたり、相続税の非課税枠があったりと、相続の点で、様々に活用が可能なものでもあります。

 整理すると、以下のような活用法があると思います。

1.遺族の生活保障や納税資金にあてることができる。

  生命保険金は現金で支払われます。必要な書類を揃えて、保険金請求をすれば数週間で支払われるので、遺産分割前に、必要となる葬儀代や諸々の経費の支払いにも便利です。不動産が相続財産の大部分であったりすると、10か月以内に相続税を支払うのが大変なこともあるでしょうから、現金が保険金として手元に入るのは遺族にとって助かることでしょう。また、長期間にわたる生活保障資金としても活用できます(保険会社によっては、年金払いにしてくれるところもありますか)。

2.財産を渡したい人に確実に渡せる。

生命保険金は、相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産となり(以前のブログご参照)、遺産分割の対象とはなりませんから、ご本人が渡したいと思う方を保険金受取人と指定すれば、遺産分割手続きを踏まずに保険金という形で、資産を渡すことができます。

3.相続税の非課税枠がある。

 相続人が、生命保険金を受領する場合は、生命保険金は「みなし相続財産」となり相続税がかかりますが、生命保険金には、非課税枠(500万円×相続人の数)があります。

 例えば、相続人が3名であれば、生命保険金の非課税枠は1500万円です。

 仮に生命保険料が1500万円で死亡保険金が1500万円の生命保険に加入し、3名の相続人に500万円ずつ受取人指定をした場合(保険金受取人の複数指定も可能です)には、生命保険金は相続税の非課税枠に収まります。一方、1500万円分だけ相続財産は減少しますので、相続税が多額な方は、相続税の節税にもなるでしょう。

 ただし、相続人以外(親が存命の孫など)が受け取ると、相続税の非課税役はありませんので、要注意です。

4.遺産分割の際の代償金として使う方法も。

 例えば、5000万円相当の自宅不動産と、現金1000万円が相続財産であるとして、相続人が長男と次男のときに、自宅は長男に残し、次男は現金を残したいというケースです。

 不公平がない解決としては、自宅を相続した長男が、2000万円の現金を次男に渡せれば、お互い、相続で3000万円ずつ財産を得ることになり円満です。これを代償分割と言いますが、長男がポンと2000万円だせるかが問題です。

 このようなときに、たとえ1千万円でも生命保険金が長男を保険金受取人指定とされていれば、長男は、相続財産以外に自分の固有の財産として生命保険金を受け取れば、そのお金に1千万円をたせば、いいのでハードルは下がるでしょう。

 このような代償分割に生命保険金を活用する場合は、事前に家族でよく話し合い、遺言にも記載しておくと後々がスムーズなようです。