相続税の支払要否や額をざっくりと把握するのに、官庁がホームページで提供している計算ソフトを使うという方法があります。お金も手間もかからないです。また、数字を色々と変えて入力することで、相続税の仕組みを知ることができます。2つご紹介します。(この記事は5分で読めます)
国税庁「相続税の申告要否判定コーナー」
場所 https://www.keisan.nta.go.jp/sozoku/yohihantei/top
【概要】
・PC(またはスマホ)上で、「法定相続人の数」と「相続財産等」を指示に従って入力すると相続税額が計算されます。
・土地評価については、国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」にリンクしているので便利です。
・結果はファイルで保存でき、再利用できます。
・住所・氏名を入れると、「相続税の申告要否検討表」(お尋ねの回答で国税庁に提出可能)になります。
【使い道】
国税庁によると次のように使えます。
⓵相続税の申告のおおよその要否の判定に使える(相続税の申告書を作成するものでないので注意が必要です)。
③税務署からの「相続のお尋ね」への回答作成に利用できる。
④小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)及び配偶者の税額軽減(配偶者控除)を適用した場合の税額計算シミュレーションを行うことができる。
【使った感想】
手元に、登記事項証明書や、固定資産税の通知書などを用意して入力すれば、かなり正確に算出されます。国税庁の確定申告のツールに比べれば簡単な印象です。解説が分かりやすく相続税の勉強になります。相続税を仮に計算して、家族で共有化したり、対策を考える初めの一歩にするのには良いツールではないかと感じます。
農林水産省の「簡易計算シート(相続税速算表)」
場所 https://www.maff.go.jp/j/keiei/attach/xls/keieikeisyo-3.xlsx
【概要】
農水省のHP内で「簡易計算シート」と検索すると出てきます。
このシートは、エクセルです。エクセルシートをダウンロードして、「簡易計算シート(エクセル提供用・相続税)」というシートで⓵法定相続人と②相続財産を入力すると簡単に相続税がシミュレーションできます。
なぜ、農水省が作成しているのかは不明ですが、農業の継承施策に必要であるからと推定されます。
【使い道】
農水省は次のように断っています。
・税額を簡便にイメージするためのシートであり、実際の相続税額とは異なります。
・シートを利用した結果から生じた損害等には一切の責任を負いかねます。
・実際の税額計算においては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。
・相続時精算課税制度などの特例には対応していません。
・直系尊属または兄弟姉妹への相続には対応していません。
・子供5名以上には対応していません。
以上の注意点を理解して、シミュレーション用のエクセルと割りきって使うと、大変便利なツールです。
【農水省エクセルを使ったシミュレーション例】
例えば、次のようなケースで、相続税対策で生命保険(相続人が受けとる生命保険金はみなし相続財産として課税対象ですが、相続人1人当たり500万円の非課税枠があります)を使う効果をシミュレーションします。
・被相続人 母(父はすでに死亡)
・相続人 子ども 2人のみ
・相続財産
・現金 5000万円
・不動産 2000万円(家1000万円、土地1000万円)
【合計】 相続財産 7000万円
このままをシートに入力すると、相続財産総額は7000万円で、相続税総額は320万円(子供1人当たり160万円)と計算されます。
このとき、もし母が生前に、自分の財産を1000万円減らして、終身の生命保険1000万円に加入したと仮定します。
・被相続人 母(父はすでに死亡)
・相続人 子ども 2人のみ
・相続財産
・現金 4000万円
・生保 1000万円
・不動産 2000万円(家1000万円、土地1000万円)
【合計】 相続財産 6000万円
みなし相続財産 1000万円
これを計算シートで計算すると、相続財産は6000万円に減り、相続税総額は180万円(子供1人当たり90万円)となることが分かります。相続人には1名当り500万円の生命保険金の非課税枠があるためです。この非課税枠を使う使わないで、1名当りの納税額が70万円もの差が出ます。
エクセルに慣れている方でしたら、農水省のシートの方が、条件を色々と変えてシミュレーションするには便利かもしれません。
最後に
以上にご紹介したツールは、あくまで相続税の目安を計算したりシミュレーションしたりするものです。正式には最税理士や税務署等で確認が必要です。しかし、一度ご自分で操作してみると、疑問点も具体化されるので、その後、専門家に相談する際にも理解しやすくなる効果があると思います。
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