行政書士のデジタル署名 セコムパスポートforG-IDとAdobeの関係

会社設立の場合に、行政書士が行う、電子定款作成の前提となる、Adobeを使った電子署名(電子サイン)の方法について、行政書士側の手順が分かりにくにので、整理します。
習うより慣れろというのが正解かもしれませんが、色々調べながらやっても時間がかかります。システムのプロでないので、誤りがあるかもしれませんが、なるべく骨子が分かるように整理します。

まとめ

セコムパスポートをPCに保存後、Adobeの「プラグインソフト」(ハンバーガーメニューの下)に、法務省の登記・供託オンライン申請システムからダウンロードしたSignedPDF署名機能限定を、組み込んで、Adobeの環境設定で、電子署名(電子サイン)を行います。

電子署名は、PDFに目に見えない情報として記載されるので、目に見える、印影やサインは、電子署名ではありません。

標準的な方法

1、必要なツール

セコムパスポートforG-ID (行政書士電子証明書)⇒ 有料
②Adobe Acrobat Pro (サブスクリプション版) ⇒有料
SignedPDF署名機能限定版 ⇒無料(法務局の「登記・供託オンライン申請システム」⇒「ダウンロード」のタブ⇒「PDF署名ソフト」をDLする)

2.手順

以下の手順で、難しいところは、③~④ですが、これは主に、SignedPDF署名機能限定版のマニュアル(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/download_soft.html#PDFPlugin)を見て進めます。

①セコムパスポートforG-ID(cert.p12 ファイル)の自分のPCへのダウンロードとPIN確認
②Adobe Acrobat Proの契約
③「SignedPDF署名機能限定版」のダウンロード
④「SignedPDF署名機能限定版」をAdobe Acrobat Proで、環境設定する。

詳しくはマニュアルを見て進めますが、「ハンバーガーメニュー(左上の3本線)」から「環境設定」⇒「作成と表示方法」で、SignedPDFがあることを確認できると思います。環境設定の「IDと信頼済証明書」を開いて、セコムパスポートforG-IDが含まれていれば成功です。

Adobe Acrobat Pro 杉並区 | 行政書士中村光男事務所 杉並・練馬・中野・武蔵野市・新宿区・小金井市・小平市

マニュアルでは、SignedPDFを優先するように書いてありますが、優先しなくても、電子署名するときに、選択できるので、気にしなくて大丈夫です。

また、信頼済証明書も、セコムパスポートforG-ID を選択することできますが、選択しなくとも電子署名するときに選べるのは同じです。

また、SignedPDF署名機能限定版で、電子署名したときに、表示される画像を職印にしたい場合は、職印を何かの紙に押してスキャンしPDFにしたものを、ハンバーガーメニュー⇒プラグイン⇒環境設定で、「PDF印影情報」というところで読み込めばいいです。

なお、この印影のより読み込みをしないと、デフォルト(初期値)では、指摘した場所に、指定した大きさで、「印」という赤い字が表示されます。

電子署名は、見えないものなので、という効果の点では、印影あっても無くても、○でも△でも何でもいいということです。

(例えばフィリピンの電子アポスティーユには、紙面上のurlやQRコードから、証明を確認したする仕組みで「印刷されたら無効」と言う表示があります。つまり、電子的な証明というのは、その文書に紐ついた電子的情報で確認するのですから、書面上のサインや印は本質ではないということだと理解できます。)

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Adobe Acrobat ProでPDF文書に電子署名する方法

上記の設定が終わったあと、電子定款に行政書士が電子署名するためには、ワードで作成した定款をPDFにして、Adobeの「デジタル署名 証明」というメニューから行います。

面白いのは、この大切なメニュー項目は、私のAdobeのメニュー表示どこを見てもないことです。

隠れているのです。これは悩みますが、結局は、右上の検索ボタンに「証明」と入力すると、それらしきメニュー探し出します。

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検索で出てきた「デジタル署名 証明書を利用」をクリックすると、次のような選択肢が出てくるので、デジタル署名を選択します。
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そすると、次のように、証明する箇所を指定するよう指示がでます。予め記載した行政書士名の右側に、概ね、印鑑のサイズで「+」印のカーソルで四角を作り、クリックすると、印影が表示されます。

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なお、ハンバーガーメニューの環境設定で、SignedPDF署名機能限定版を優先せず、また、セコムパスポートforG-ID を優先選択していないと、その都度選択肢が出てきますが、その都度、選択すればいいです。

むしろ、AdobeをSignedPDF署名機能限定版の専用にする必要もないと思います。

分かりにくい点1 使うのは、Adobe の「電子サイン」のメニューではないということ

繰り返しですが、上記のように、行政書士がAdobe Acrobat Proで、セコムパスポートforG-ID を用いて、電子署名(証明)する場合、Adobe Acrobat Proでのメニューで目立っている「電子サイン」ではないということが分かりにくいですが、注意点です。

標準メニューにはないかもしれませんが、「デジタル署名 証明書を利用」というメニューを検索で探します。

分かりにくい点2 SignedPDF署名機能限定版で署名すると「検証できない」と表示されること

マニュアル通りに、定款にデジタル署名できると、「この製品では検証できません」というエラー表示めいたものが表示されます。しかし、これで正解です。

もともと、SignedPDF署名機能限定版の使用で、Adobeではこの表示が出るようになっているそうです。

(逆に、Adobeのデフォルトの電子署名を選択すると、Adobeの言う電子署名はできますし、「有効な署名です」と言う表示も出るのですが、これが電子署名法に言うところ有効な署名かは不明です。もし、Adobeの証明機能下の電子署名が法的にも有効なら、更にセコムパスポートなどは不要になるのでは無いかと思われます。ただ、電子署名法の有効な認証事業者にセコムは名前がありますが、Adobeはありません。https://www.moj.go.jp/MINJI/minji32.html)

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セコムパスポートforG-IDの購入とPCへの保存

順序は逆ですが、最初に行う、セコムパスポートforG-IDについて記載します。

セコムパスポートforG-IDとは何なのかが、当初はわからず苦労しました。

セコムに住民票や、印鑑証明などを送り、料金(2年分か3年分で結構なお値段)を払うと「cert.p12」というファイル(わずか5KB)がCDで送られてきます。これには、このファイルを自分のPCにDLするためのPWと、今後、このファイルで身分証明するために必要な、PINコードがついてきます。
DL用のPWは、そのときだけ必要なものですが、永続的に重要なのはPINコードです。

「cert.p12」の意味ですが、certはcertificate (証明書)の略、p12は、Public-Key Cryptography Standards(略称PKCS)の12番目の仕様という意味で、パスワードに基づく鍵(暗号)により保護された秘密鍵と、それに関連する公開鍵証明書を保管するために一般に利用されるファイルフォーマットです。

セコムパスポートforG-IDは、特に何かを能動的に行うプログラムではなく、電子的な身分証明です。セコムは、セコムパスポートの身分証明を行う、認証局という役割です。

セコムパスポートforG-IDを持っていると、行政書士電子証明が可能になるシステムは、e-Gov電子政府、電波利用の電子申請・届出システム、登記・供託オンライン申請システム、自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)、e-tax、eLTAX、東京都電子調達システム、東京電子自治体共同運営サービス電子調達サービスなどです。
https://www.secomtrust.net/service/ninsyo/gyosei/gyosei-forgidtsys.html

日本行政書士会連合会が公式に認定し推奨する電子証明書は、セコムパスポートforG-IDとなっています。

ちなみに、日本銀行外為法手続きオンラインのように、代理人として届出を申請すると、無料で、認証局から身分証明を取得できるようになっているサービスもあります。(日本銀行外為法手続きオンラインシステム用認証局

身分証明としてのセコムパスポートforG-ID

例えば、東京電子自治体共同運営電子調達サービスで、行政書士が顧客の代理を行う場合、次のように説明されます。

「(行政書士が)東京電子自治体共同運営電子調達サービスをご利用になるには、電子証明書が必要になります。申請書の登録時に電子証明書を使って署名を行うことにより、なりすましや改ざんなどによる申請書データの不正利用を未然に防ぐことができます。 東京電子自治体共同運営電子調達サービスで行政書士用として利用可能な電子証明書は次のとおりです。 セコムトラストシステムズ株式会社「セコムパスポート for G-ID 行政書士電子証明書」 」
https://www.e-tokyo.lg.jp/choutatu_ppij/cmn/tmg/cmn/jsp/indexQ.jsp

とあります。

電子定款作成のためのセコムパスポートforG-ID

分かりにくいのが、電子定款を作成するために必要なデジタル署名を、定款作成代理人としての行政書士が行う場合の、セコムパスポートforG-IDの役割です。

基本的には、「本人確認」という目的に「セコムパスポートforG-ID 」は使われる点で、上記の例と同じですが、Adobeを使って、(Adobeの目立つメニューのデジタルサインで無く、隠れているメニューの証明機能の電子サイン)で、作る定款等には、行政書士事務所名と氏名+「印影」が表示されるので、これは、セコムパスポートforG-IDとどういう関係にあるのか?ということが、混乱します。

このことについては、以下のように理解出来ると思います。

  • Adobeは単なる「入れ物(ソフト)」であり、どの電子証明書を用いるかが肝心です。
  • 実務上は、セコムパスポートfor G-IDやマイナンバーカードをAdobe Acrobatに設定し、「電子署名付きPDF」を作成して提出します。

•Adobeの「デジタル署名」機能そのものは法的効力を保証しません。

  • しかし、Adobeに 法務省が認める電子証明書(行政書士職務電子証明書、マイナンバーカード署名用証明書、セコムパスポートfor G-IDなど) を設定して署名すれば、合同会社の電子定款において有効です。

実務的には、登記•供託オンライン申請システムのの「Singed PDF」の導入マニュアルを見ながら設定してください。

会社の定款に行政書士が電子署名をすれば、発起人や合同会社の社員の電子署名は不要な理由

電子署名法では、定款の作成者が電子署名しなければ有効にならないようにも読めますが、行政書士が代理で電子署名すれば有効な電子定款となると言うのが実務です。

根拠

①三省連名の重要通知⇒https://www.meti.go.jp/covid-19/denshishomei_qa.html

②利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子署名法2条1項に関するQ&A)

利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A 

問2 サービス提供事業者が利用者の指示を受けてサービス提供事業者自身の署名鍵による電子署名を行う電子契約サービスは、電子署名法上、どのように位置付けられるのか。
 近時、利用者の指示に基づき、利用者が作成した電子文書(デジタル情報)について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行うサービスが登場している。このようなサービスについては、サービス提供事業者が「当該措置を行った者」1 (電子署名法第2条第1項第1号)と評価されるのか、あるいは、サービスの内容次第では利用者が当該措置を行ったと評価することができるのか、電子署名法上の位置付けが問題となる。
 電子署名法第2条第1項第1号の「当該措置を行った者」に該当するためには、必ずしも物理的に当該措置を自ら行うことが必要となるわけではなく、例えば、物理的にはAが当該措置を行った場合であっても、Bの意思のみに基づき、Aの意思が介在することなく当該措置が行われたものと認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はBであると評価することができるものと考えられる。  このため、利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。
 そして、上記サービスにおいて、例えば、サービス提供事業者に対して電子文書の送信を行った利用者やその日時等の情報を付随情報として確認することができるものになっているなど、当該電子文書に付された当該情報を含めての全体を1つの措置と捉え直すことよって、電子文書について行われた当2 該措置が利用者の意思に基づいていることが明らかになる場合には,これらを全体として1つの措置と捉え直すことにより、「当該措置を行った者(=当該利用者)の作成に係るものであることを示すためのものであること」という要件(電子署名法第2条第1項第1号)を満たすことになるものと考えられる。

続く