韓国 兄弟 遺留分 杉並区 | 行政書士中村光男事務所 杉並・練馬・中野・武蔵野市・新宿区・小金井市・小平市

韓国民法では、兄弟に相続分の1/3お遺留分を認める規定がありました。
この規定の合憲性が裁判で争われた結果、2024年4月25日に韓国憲法裁判所は、兄弟に遺留分を認める民法規定は、個人の財産権の侵害であるとして違憲であるという判断がくだされました。

その結果、2025年に民法が改正され、日本同様に、兄弟の遺留分はゼロとなりました。
兄弟に遺留分がないのは日本も同様です。
なお、韓国人の方が日本で遺言する場合の準拠法問題は、最後に触れます。

韓国の民法(意見判決前)

違憲判決前の、韓国民法では、各相続人に法定相続分のうち最低限の相続分(いわゆる「遺留分」)が認められていました。
その割合は、配偶者・子供が1/2、(子供や配偶者がいないとき)両親や兄弟が1/3となっていました。

【改正前】
第1112条(遺留分の権利者及び遺留分)相続人の遺留分
は、次の各号による。

1. 被相続人の直系卑属は、その法定相続分の2分の1
2.被相続人の配偶者は、その法定相続分の2分の1
3. 被相続人の直系尊属は、その法定相続分の3分の1
4. 被相続人の兄弟姉妹は、その法定相続分の3分の1 ⇒下記判決で違憲とされた

<参考>日本の民法規定

第1042条【遺留分の帰属及びその割合】

① 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
二 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1

違憲判決

本事案についての韓国憲法裁判所の判断は、以下の通りです。

1.遺留分自体は、合理的な制度である。
審判対象条項による遺留分制度は、被相続人の財産処分行為から遺族の生存権を保護し、法定相続分の一定比率に相当する部分を遺留分として算定して相続財産形成への寄与、相続財産に対する期待を保障しようとすることにその趣旨があり(9.2.2. 2007年ハンバ144)、家族の連帯が終局的に断絶されるのを阻止する機能を有する(憲法2013.12.26.2012ハンバ467)。今日、社会構造が産業化・情報化社会に変化し、家族の姿と機能が核家族に変わり、男女平等が次第に実現しているが、家族の役割は今日も重要な意味を持ち、相続人たちは遺留分を通じて緊密な連帯を維持している。

2.民法(1977. 12. 31. 法律第3051号に改正されたもの) 第1112条第4号は憲法に違反する。
現行油流分制度は、民法が1977. 12. 31. 法律第3051号に改正されて新設され、現在までそのまま維持されている。油流分制度を初めて導入した立法者の意図は、共同相続人の間の公平な利益が被相続人の贈与や遺贈により侵害されることを防止し、さらに被相続人の財産処分の自由、取引の安全と家族生活の安定、相続財産の公正な分配という対立する利益を合理的に調整するため。 しかし、今日の社会構造が変わり、家族制度の姿などが大きく変わり、油類分制度の本来の目的と機能が衰退しているという批判が提起されている。」
被相続人の兄弟姉妹は相続財産形成への寄与や相続財産への期待などがほとんど認められないにもかかわらず、遺留分権を付与することはその妥当な理由を見つけるのが難しいドイツ・オーストリア・日本などは兄弟姉妹を除いている)」

改正された韓国民法

上記憲法裁判所の違憲判決を経て、韓国民法1112条4項は、2024年9月20日改正で削除されました。
条文はここで確認できます。 

第3章 遺留分 <1990年1月13日改正>

第1112条(遺留分の権利者および遺留分)
相続人の遺留分は、次の各号による。<2024年9月20日改正>

  1. 被相続人の直系卑属は、その法定相続分の2分の1

  2. 被相続人の配偶者は、その法定相続分の2分の1

  3. 被相続人の直系尊属は、その法定相続分の3分の1

  4. (削除)<2024年9月20日改正>

参考
https://cm.asiae.co.kr/en/article/2024042515282701201?utm_source=chatgpt.com

韓国人の方が日本で遺言をする場合の注意点

韓国人の相続については、原則として韓国民法が適用されます(韓国国際私法77条I)。しかし、在日韓国人が明示的に常居所である日本法を指定するか、不動産が日本にある場合は、相続は日本法によるとされています。

また、日本の通則法41条本文は、「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。」としています(反致)。

したがって、韓国籍の人が遺言をする場合は、遺言に、相続の準拠法を指定する、次のような分を記載する必要があります。

(例)遺言者は、相続の準拠法として、遺言者の常居所在地法である日本法を指定する。

<参考>

韓国の国際私法の規定は以下のとおりです。https://www.law.go.kr/lsInfoP.do?lsiSeq=33789#0000

第77条(相続)
①相続は、死亡当時被相続人の本国法による。
被相続人が遺言に適用される方式により明示的に次の各号のいずれかに該当する法を指定するときは、相続は第1項にもかかわらずその法による。
1. 指定当時被相続人の日常居所地法。ただし、その指定は、被相続人が死亡までその国に日常居所を維持した場合にのみ効力がある。
2. 不動産に関する相続については、その不動産の所在地法

第78条(遺言)
①遺言は、遺言当時、遺言者の本国法による。
②遺言の変更又は撤回は、その当時、遺言者の本国法による。
③遺言の方式は、次の各号のいずれかの法による。
1. 遺言者が遺言当時又は死亡時に国籍を有する国の法律
2. 遺言者の遺言当時又は死亡当時の日常居所地法
3. 遺言当時の行為地法
4. 不動産に関する遺言の方式については、その不動産の所在地法

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