超高齢化社会や離婚の増加により、遺言や任意後見、離婚給付等契約の公正証書の必要性が高まっています。しかし、公正証書の作成などを行う公証役場については、あまり知られていません。ここでは、公証役場の役割について解説します。
公証役場の位置づけ
公証人は、法務大臣が任命する国家公務員です。原則として30年以上の経験を有する裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった者が公募に応じて選任されます。
公証人のいる公証役場は法務省法務局に属する役所ですが、一般の国家公務員と違い給料は支給されません。「公証人手数料令」に基づく手数料を収入として、事務所の人件費や物権費を賄います。この点では個人事業主です。
公証役場は、法務省が人口や利用状況を見て所在地を決めます。概ね全国で約300か所、公証人は約500人です。
公証役場の所在地はここから分かります。
どこの公証役場に行けばいいのか
全国のどこに住んでいても、自由に公証役場は選んで利用可能です。
公証人は配置された公証役場で執務をすることが原則となっているため、通常は公証人は出張しません。売買契約や賃貸借を公正証書にしたい場合は、契約当事者が公証役場に行くか、委任状を持参した代理人が本人に代わり公証役場で手続きをします。
遺言等の場合は例外
ただし、遺言、任意後見、尊厳死宣言のように公証人による本人の意思確認が必要な場合は、代理で手続きできません。本人が病気や身体的衰えのために自宅や病院から動けない場合は、公証人が本人の場所まで出張して公正証書作成手続きをします。この場合は、各公証人は所属する都道府県外には出張できないことになっています。このため、本人の所在が東京都内の場合は、都外の公証役場に依頼はできません。
公証役場の役割
公証役場は将来の紛争を予防することが役割となっています。主な業務は以下の3種類です。
⓵公正証書の作成
公正証書は、公証人がその権限において作成する公文書のことです。公正な第三者である公証人が、その権限に基づいて作成した文書ですから、当事者の意思に基づいて作成されたものであるという強い推定が働き、これを争う相手方の方でそれが虚偽であるとの反証をしない限りこの推定は破れません。
さらに、金銭債務についての公正証書は、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されている場合は、執行力(債務不履行の場合、裁判所に訴えることなく直ちに強制執行をすることができる効力)を有します。この執行力を有する公正証書を特に執行証書といいます。
事業用定期借地権設定契約、任意後見契約は、公正証書で作成しなければ効力が生じません。このほかにも、法律で公正証書等の作成が求められている法律行為があります。
②認証の付与
「認証」は、私署証書(作成者の署名又は記名押印のある私文書)について、文書が作成名義人の意思に基づいて作成されたことを公証人が証明するものです。
株式会社や弁護士法人などの「定款」については、公証人の認証が法定要件になっています。
また外国において行使する文書には、公証人の認証を要するのが通常です。
③確定日付の付与
「確定日付の付与」は、私署証書(作成者の署名又は記名押印のある私文書)に公証人が確定日付印を押捺して、その日にその文書が存在したことを証明するものです。
まとめ
超高齢化社会の到来に伴い、遺言や任意後見の公正証書作成の必要性が高まってきています。また離婚件数の増加とそれに伴う金銭支払約束の不履行への不安を背景に、離婚給付に関して金銭の支払に実効性をもたせる「執行力ある公正証書」(裁判を経ることなく、金銭債権の回収のため相手の財産の差押えをすることができます。)の重要性が高まっています。
当事務所は、各種公正証書の原案となる約定や契約文書作成など、公正証書作成のサポート業務を行います。