自筆で書く遺言(自筆証書遺言)は、一人で手軽に作成できる反面、いざ相続になったときにな弱い点があるで、作らない方がいいとも言われます。その理由と対策をわかりやすく解説します。
【本テーマの結論】
・自筆証書遺言では、金融機関での預金引き出しができない場合がある。
・第三者や身内に信用されない恐れがある。
・とりあえず作るのには適しているが、専門家のチェックがあったほうがよい。
自筆証書遺言とは
・自筆証書遺言は、自分で書く遺言書のことです。
・15歳以上で、判断能力があれば誰でも作成できます。
自筆証書遺言の良い点
・立会人などは必要なく、一人で全文を自分で書いて印を押せば、遺言となりますので手軽です。
・公正証書遺言を作成する時間がない場合や、将来修正するつもりで、とりあえず作成する場合などに便利です。
自筆証書遺言を自分で作成するポイント
【事前準備】
1.遺言のルールを学ぶ。
2.財産を相続させたい人を(戸籍・住民票など)確認する。
3.財産をリストアップ(預金通帳、不動産登記事項証明書、株式口座情報、車検証など)
4.相続人の遺留分に注意しながら、遺産の配分案を考える。
【遺言作成】
1.遺言書と題名を書く
2.すべて自筆で書く(財産目録を除く)
3.日付を書く
4.氏名を書く
5.連名にしない(共同遺言は禁止)
6.加除訂正は書き直しが安全
7. 押印(なるべく実印)し、封筒に保管する。
8.信頼できる親族または第三者に保管場所を伝える。
これで完成です。以下は、もっとも簡単な例です。
自筆証書遺言の例
遺言書 山田太郎は、妻山田花子にすべての財産を相続させる。 令和4年10月17日 山田太郎 印 |
自筆証書の問題点
1.改ざんや本人意思の信憑性を疑われることがある。
ペン・インク・印で手軽に書ける便利な遺言であることの反面、作成したときに公正な第三者の立ち合いは無いので、「本当に本人が本心で書いたのだろうか」「これが最新の遺言だろうか」「同居の家族が無理やり書かせたのでは」等々、疑いを呼びかねない点があり、争続の引き金になることもあます。
2.遺言があっても預金を引き出せないことがある。
銀行によりますが、相続のトラブルに巻き込まれたくないことなどから、自筆証書遺言だけでは預金の引き出しに応じない場合があります。
3.家庭裁判所の検認が必要である。
遺言者が亡くなり相続が開始したときに、遺言書を裁判所に提出して「検認」を請求しなければなりません。これには、1~2か月かかります。また、検認は検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断しませんので、検認があっても争続になることはあります。
4.紛失や発見されないことがある。
遺言書の保管場所を明確にしておかないと、相続人が見つけられないことがあります。
5.法律通りに作らないと無効になる。
誤記があった場合は、直し方が面倒です。下記は、法務局のHPからとった誤記訂正例です。
出典 https://www.moj.go.jp/MINJI/03.html
なお、2020年7月からスタートした自筆証書遺言保管制度を使い、遺言書を法務局に保管すれば、遺言書の法的有効性の外形的チェック、遺言書保管や相続人への通知、検認不要などのメリットがありますので、上の3から5のリスクは軽減されます。保管制度の利用料は安価(手数料)ですので、自筆証書にする場合は、なるべく法務局への保管を検討すべきだと思います。
まとめ
自筆証書遺言は、紙とペンで手軽に作成できますが、信憑性などの点で弱い点もあるという説明をいたしました。また、相続の他の規程や判例等に沿った適切な内容にするには、独特の言い回しが必要なケースもあり、自分の想いが十分に伝わる遺言書にするためには、文案を専門家に見せてアドバイスを求めた方が良いこともあります。もし不安な点があおりであれば当事務所にご相談いただくこともできます。行政書士には守秘義務がありますので、ご安心してご連絡下さい。
参考コラム
・自筆の遺言の正しい作り方 https://mnakamura.net/archives/1207
・自筆証書遺言の保管制度 https://mnakamura.net/archives/331
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