相続税について、我が家は心配する必要があるのかどうか。固定資産税通知書で大体わかります。
以前、相続税の計算の流れを当ブログ(https://mnakamura.net/archives/1650)に書きましたが、今回は、自分の不動産の相続財産評価額がどれくらいなのかざっくり把握しておきましょうというお話です。
相続税上の不動産評価額に預貯金などの金融資産を足して相続財産評価額が分かります。これを相続税基礎控除(3000万円+法定相続人数✖600万円)と比べてみて、相続税基礎控除より小さな金額なら相続税は心配無用です。
結論
・建物の相続財産評価額は固定資産税評価額です。
・宅地(土地)の相続財産評価額は、結果的には概ね固定資産税評価額×8/7(1.14)となります。ただし、小規模宅地の特例があり、330㎡までは評価額が80%減額されます。
「建物の評価」は簡単
家屋(店舗・工場も同じです)は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けることになっていますが、倍率は全国的1.0ですので、結局は、固定資産税評価額=相続財産評価額となります。
固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書(毎年4から6月に到着する)の細長い「課税明細書」の「価格」欄に記載されています。「課税標準額」欄に書いてある数字ではないのでご注意ください。このことは土地も建物も共通に言えることです。
例えば、下記写真はマンションの固定資産税通知書の例です。建物の固定資産税評価額は57億37百万円です。この価格に、自分の敷地権割合(登記の表題部(敷地権割合)に書いてあります)を掛ければ、ご自分の持分の建物評価額が分かります。
なお、建物を他人に貸している場合は、30%引きの評価額となります。30%の価値は、借家人が持っていると考えるからです(ただ、借家人は相続の際、30%の借家権を相続財産に入れる必要はないです。この点、つじつまが合いませんが、税務ではそうなっています。)。
土地の評価も概ね国税庁HPで分かります。
土地(宅地。住宅用も事業用や工場用も含みます)の評価は、路線価方式と倍率方式の2種類がありますが、国税庁の下記のHPで調べると、どちらの方法で計算するべきなのか地域ごとに指定されます(併用はありません)。
【路線価方式】
例えば、この財産基準評価基準書で、東京都千代田区外神田2丁目を検索すると下記の図が出ます。見たい住所を地図で追って探します。
路線価方式では土地面積(㎡)×路線価(千円/㎡)=相続財産評価額となります。なお土地の形状や、2面道路の場合など特殊な計算をする場合は、結果は多少変わりますが、参考までに相続財産評価額を粗々で把握する目的ならば、あまり気にしなくても良いかと負います。
【倍率方式】
例えば、富山県砺波市を見ると倍率方式のページでヒットします。秋元という場所では、宅地は1.1と出てきます。この場所であれば、土地の固定資産評価額✖1.1=相続財産評価額となります。
ちなみに、土地の評価は、「国土交通省の公示価格」:「相続財産の財産評価」:「固定資産税評価額」の間には、
10:8:7の関係があります。
このため、固定資産税評価額を8/7倍すれば、概ね相続財産の財産評価も分かることになります。
〇『一般財団法人資産評価システム研究センター』の全国地価マップを使って、実例で比較してみました。やはり、
10:8:7の関係が確認できます。
小規模宅地等の特例が適用されると宅地評価は80%引
宅地評価には、色々なケースに毎に特例がありますが、その中でも、重要なのが「小規模宅地等の特例」です。
この特例の要件は、土地に関するものと、人に関するものがありますが、中でも「誰が相続するか」が重要です。
ここでは、一般的な事例として「被相続人が住んでいた自宅の敷地」の場合を考えます。この場合は、配偶者か、同居の親族が相続する場合には、評価額は330㎡まで80%引きされます。同居していない親族で家がない人が相続する場合も一定条件を満たせば同様の扱いとなります。
詳しくは国税庁 No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
計算例
以上のように、相続税を計算するための相続財産の価額は、建物は固定資産税評価額そのままです。宅地(土地)も固定資産税評価額を8/7倍すれば大体は分かるので、まずは固定資産評価額の通知書を見て概算で、ご自分のケースで相続税対象かどうかをつかむのがよいと思います。
【例】 家族構成:夫婦+子ども2名の4人家族、預貯金は2000万円、自宅土地150㎡、固定資産税評価は建物1000万円・土地2000万円、遺言で土地・建物は妻に相続させるつもり
【概算】
・相続税の相続財産評価額(概算) 2000万円+1000万円+2000万円✖8/7✖(1-0.8)=3457万円
・基礎控除 3000万円+600万円×3名=4800万円
⇒基礎控除額4800万円が、税務上の相続財産評価額3457万円より大きいので、相続税は課されません。
最後に
注意したいのは、税務での相続財産評価と、現実の遺産分割や遺留分の計算を行う際に用いる評価は違うという点です。遺産分割や遺留分計算は、税務上の修正等を加える前の、土地・建物の時価で考えます。売却した場合の財産価値としてどれくらいの価値があるかのという観点になります。
実務上は、土地は公示価格、建物は固定資産税評価額を基準にすることが多いかと思われますが、公示価格がついていないなど地域性によっても異なります。若干手数料はかかりますが、不動産鑑定評価を入れる方法もあります。これらは、遺産分割や遺言のときに遺留分との関係で気になる話です。詳しくは、遺言・相続に強い行政書士など専門家にご相談下さい。税務の個別計算は税理士にご相談下さい。
【あわせて読みたい関連コラム】
「相続財産の評価方法:相続人間の合意で決められます。」
参考
相続税路線価・固定資産税路線価⇒『一般財団法人資産評価システム研究センター』の全国地価マップ
相続税路線価⇒国税庁の『財産評価基準書路線価図・評価倍率表』
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