自筆証書遺言の保管制度/杉並区の行政書士が解説

自筆証書遺言書は、紙とペン、印鑑があれば1人で手軽に作成ができます。しかし、一定の要件を満たす必要があり不備があると無効になってしまうリスクがあります。また、自宅で保管している間に、遺言書が改ざん・偽造されたり、紛失したりするおそれもあります。さらには、遺族が遺言書の存在に気がつかないということもあります。

そこで、2020年7月にスタートした、自筆証書遺言書保管制度では、自身で作成した遺言書を法務局が保管します。このため、紛失や消失、改ざんや隠匿のおそれがなくなります。また、遺言者の死後に法務局が相続人に遺言書の保管を通知しますので安心です。

1.自筆証書遺言保管制度の概要

①遺言書が法務局で適正に管理・保管されます。

遺言書保管場所は、全国312か所の各地方の法務局の、本局・支局・出張所が指定されています。

その中から、次のいずれかの条件を満たす場所にある遺言書保管場所を選びます。

遺言書保管所

法務省のホームページ等で、下記のいずれかにある遺言保管所から選択する。
・遺言者の所在地
・遺言者の本籍地
・遺言者の所有する不動産の所在地

②自筆証書遺言が民法の定める要件に適合しているかどうかの形式的なチェックが受けられます。

自筆証書遺言が、正式なものとも認められる条件は「遺言者が、全文、日付、氏名を自書して、押印すること」(民法968条1項。)です、

(なお、今回の民法改正で、相続財産の目録については、PC等で作成したものでもよいことになりました ← 民法968条2項)。

登記所の遺言書保管官が、遺言書がこのような外形的な条件に合致しているかどうかのチェックをしてくれます。

ただし、遺言書保管官が、遺言の内容のアドバイスや有効性の保証をしてくれるわけではありませんので、心配であれば専門家に相談するのがよいと思います。

 

③原本と画像データが長期間保管されます

遺言の保管期間

原本    : 遺言者死亡後50年間
画像データ : 遺言者死亡後150年間

このように、自筆証書遺言が、遺言書保管所に保管されるため、紛失や、相続人等の利害関係者による破棄・隠匿・改ざん等を防ぐことができます。

2.相続開始後、家庭裁判所の検認は不要となります。

通常、遺言書の保管者は、相続の開始を知った後に、家庭裁判所に遺言書を提出して、検認を求めなければなりません(民法1004条1項)。

遺言書の検認とは
「検認」とは、家庭裁判所が相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。(遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。)

しかし、公正証書による遺言と同様に、法務局で保管している自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は、検認の必要はありません。

3.相続開始後、相続人等は法務局で遺言書を閲覧や遺言書情報証明書の交付が受けられます。

遺言内容はデータでも管理しているため、遺言書の原本が保管されている遺言書保管所にかかわらず、相続人等は、全国どこの法務局においても、データによる遺言書の閲覧や、遺言書情報証明書の交付が受けられます。

ただし、遺言書の原本は,原本を保管している遺言書保管所においてしか閲覧できません。

4.相続人のための通知制度ができました。

遺言者が死亡後に、相続人が遺言書があるのかないのかを知りえるためにはどうしたらいいでしょうか。

もちろん、遺言者が遺言書の存在を相続人や遺言執行者に事前に伝えておけば、わかりますが、色々な事情でそうされないこともありえます。
そこで、この問題点を解決するため、以下のような二つの通知制度ができました。

遺言書の通知制度

①関係遺言書保管通知
相続人のうちの一人が、遺言書保管所において遺言書の閲覧をしたり、遺言書情報証明書の交付を受けた場合、その他の相続人全員に対して、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが発送される制度です。ただし、関係相続人等のうちのいずれかの方が、閲覧等をしなければ、仮に相続が開始した(遺言者が死亡した)としても、この通知は実施されません。

②死亡時の通知
遺言者があらかじめこの通知を希望している場合、その通知対象とされた方(遺言者1名につき、お一人のみ)に対しては、遺言書保管所で、法務局の戸籍担当部局との連携により遺言者の死亡の事実が確認できた時に、相続人等の閲覧等を待たずに、遺言書保管所に関係する遺言書が保管されている旨のお知らせが発送されます。

通知対象者は,遺言者の推定相続人並びに遺言書に記載された受遺者等及び遺言執行者等から1名を指定することとなります。まずは,その方に遺言書が保管されている事実が伝われば,その他の相続人等にも確実にそのことが伝わると思われるような立場の方や,確実に保管の事実を伝えたい方を選択していただくことが推奨されています。

また、確実に指定した方のもとに通知が届くようにするっためには、事前に通知対象者の協力を得て、申請時にそれらの方の住民票を添付することが望まれています。
なお、この死亡時の通知については、2021年度以降頃から本格的に運用を開始することとされています。

5.自筆証書遺言保管制度の手数料は・・・

遺言書の保管の申請手数料は、1件につき3,900円です。他の手数料は、下記の図の通りです。

関連コラム
「遺言書保管制度|相続人への通知や発見のされ方」 https://mnakamura.net/archives/1734
「吉日遺言は無効です」https://mnakamura.net/archives/1065

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