財産目録を苦労して整理し、遺言書をせっかく書いても、万一相続人に見つけられなかったら、努力が水の泡となります。2022年4月1日から施行された「自筆証書遺言保管制度」では、遺言書が見つけられないリスクを軽減する仕組みが複数取り入れられています。それはどのようなものかを、杉並区の行政書士が解説します。
自筆証書遺言保管制度のポイント
自筆証書遺言保管制度の目的は、遺言者が死亡後に、相続人、受遺者や遺言執行者(まとめて関係相続人と言います)が、閲覧や通知を受けられるようにして、遺言書の内容を知ってもらうことです。主なポイントは以下の通りです。
1.自筆証書遺言を身近な法務局に預けることができます(手数料3,900円)。
預けることができる法務局は、遺言者の住所地、本籍地か不動産の所有地を担当する遺言書が保管できる法務局(以後、遺言書保管法務局)です。全国に312か所あります。
※全国の遺言書保管所の場所⇒https://www.moj.go.jp/MINJI/07.html
2.外形的チェックがなされます。
遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。注意点としては、遺言書保管官のチェックは外形的なことですので、遺言書の内容の相談には乗りませんし、預ければ必ず有効な遺言書になることを保証はしていません。
3.長期の保管管理がなされます。
遺言書は遺言者の死亡後に、原本は50年間、画像データは150年管理されます。
4.相続開始後に、家庭裁判所の検認は不要となります。
自筆の遺言は、遺言者の死亡後に家庭裁判所の検認を受けないと」罰則があります(民法1004条)が、自筆証書遺言保管制度を使えば、検認は不要です。
遺言者の相続人等が遺言書保管所に遺言が保管されていることを知る方法
1.関係相続人に伝えておく方法
遺言者の相続人や遺贈を受ける第三者、遺言執行人等ですが、遺言者から生前に「遺言を法務局に預けた」と伝えてもらえば、遺言書保管が分かります。
2.保管証を残す方法
万一、1のように口頭で伝えられていなくても、遺言書保管所からは、保管所名と保管番号が記載された「保管証」が発行されますので、これが遺品の中にあれば、ここで分かります。何らかの事情で、生前に伝えていなくても、発見されやすい場所に保管証を残しておけば伝わります。
3.関係相続人が問い合わせることができる
遺言者の相続人等は、自分が関係する遺言が預けられていないかどうかを、遺言者の死亡後に遺言書保管所に問い合わせできます。この問い合わせは、「遺言書保管事実証明書」を申請するという形で行います。この申請で、請求者自身に関係する遺言書が保管されているということが確認できた場合に、遺言書の内容を確認することができます。
また、保管されていない場合は、「保管されていない」という趣旨の事実証明を受け取ることができます。
【遺言書事実証明書ー保管がある場合】
4.一部の相続人がアクションすると関係遺言書保管通知が届く
遺言死亡後に、関係相続人の誰かが(1)遺言書を閲覧したとき(2)遺言書情報証明書交付を受けたとき、にすべての関係相続人に、遺言書保管官が「遺言書が遺言書保管所」に保管されている旨を連絡します。これは、このような動きがあることで、遺言書保管官が相続が開始したこと知るからできることです。
5.遺言者は通知する人を指定できる
遺言者は自分が希望することにより、遺言者の推定相続人・受遺者・遺言執行者のうち1名に自分が死亡後に、通知をするように申請できます。こうしておくと、戸籍担当部局と連携して遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した場合に通知が発送されます。
まとめ
上記のように、自筆証書遺言保管制度では、複数の発見のされ方がありますが、一番簡明なのは、ご家族に伝えておいていただくことです。そうすれば相続開始後、ご家族がスムーズに遺言書情報証明書の請求等を行うことができます。その際、保管証のコピーを渡すのが「遺言書が保管されている遺言書保管所」や「遺言書の保管番号」等の情報も伝わりますのでおすすめの方法です。
参考 自筆証書遺言保管制度(法務局)https://www.moj.go.jp/MINJI/05.html
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