配偶者居住権とは? /杉並区の行政書士が解説

配偶者居住権とは

 ・平均寿命が延びたため、夫婦の一方が亡くなった後、残された配偶者が長期間にわたり生活をすることも多くなりました。

 しかし、配偶者以外にも相続人がいる場合には、配偶者の法定相続割合は50%(配偶者と子供が相続人)~75%(配偶者と被相続人の兄弟が相続人)の範囲ですので、自宅が高額の場合、これを所有権を相続すると、今後の生活資金を相続できる余地が少なくなってしまう懸念がありました。

 そこで、相続人の自宅相続を、「無償で住める権利(配偶者居住権)」「持つ権利(負担付き所有権)」に分けて行うことができることにして、低額な居住権を相続し、少しでも金融資産を多く相続できるようにすることで、高齢の配偶者の今後の生活をより安心なものにしようという新しい制度が「配偶者居住権」(2020年4月施行)です。

民法第1028条(配偶者居住権)

被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。

一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。

二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

配偶者居住権のポイント

・相続開始時に、残された配偶者が被相続人の所有する建物(夫婦で共有する建物でもかまいません。)に居住していた場合で,一定の要件を充たすときに,被相続人が亡くなった後も,配偶者が,賃料の負担なくその建物に住み続けることができる権利です(民法1028条~1036条)。

・遺産分割に際し、配偶者の相続する配偶者居住権の財産的価値は具体的相続分となりますが、、使用・収益はできても、処分行為はできないので、所有権よりは価値が低くなります。このため、自宅所有権を相続するよりは、他の金銭的財産を相続財産として多めに取得することができるのがメリットです。

・配偶者居住権は、配偶者の居住環境確保の目的の一身専属権ですので、第三者への譲渡はできず、配偶者の死亡により消滅します。

配偶者のメリット(具体例)

  (例)被相続人の財産=価値2000万の自宅、3000万円の預貯金。

     相続人=妻と子2人

法定相続分は、妻50%、子供2人で50%ですので、妻が自宅2000万円の自宅所有権を相続すると、残された法定相続分では、現金500万円しか相続できないので、将来の生活に不安が残ります。

遺言や相続人間の協議で、自宅に1000万円の配偶者居住権を設定すれば、同じ法定相続分の範囲でも、妻は配偶者居住権1000万円と、現預金1500万円が相続可能となります。

また、子供2人も、負担付所有権1000万円と預貯金1500万円を分け合って相続することができることになります。

配偶者居住権の成立要件

①「配偶者」が、「被相続人の財産に属した建物(居住建物)」に「相続開始のときに居住していたこと」

②居住建物について、配偶者が遺産分割(協議・調停・審判)、遺贈(または死因贈与)により配偶者居住権を取得するものとされたこと

したがって、遺言がなくても、相続人間の協議で、配偶者居住権は成立可能です。

家庭裁判所の審判で配偶者が配偶者居住権を取得することが可能ですが、他の相続人が反対している場合は、建物所有者と配偶者間の紛争になりますので「建物所有者の被る不利益を考慮しても、なお配偶者の生活の維持のために特に必要があると認められる場合」にのみ、配偶者居住権の取得が認められます(民法1082条1項2号)。

その他のポイント

  • 被相続人が賃借していた建物には、配偶者居住権は成立しません。賃借している建物は被相続人の財産ではないからです。

  • 建物が、配偶者以外の者との共有の場合は、成立しません。配偶者以外の共有者がある建物に、配偶者居住権を設定すると、共有者は家賃ももらえませんから、不利益が大きすぎるためです。

  • 配偶者が相続開始時に、入院などの理由で一時的に建物に滞在していなくても、生活の本拠がその建物であるならば、配偶者居住権の成立は可能です。

  • 配偶者は家賃は支払う必要はありません。居住建物の修繕は,配偶者がその費用負担で行うこととされています。

  • 建物の固定資産税は,所有者が納税しますが、配偶者は,建物の通常の必要費を負担することとされているので,建物の所有者は,固定資産税を納付した場合には,その分を配偶者に対して請求することができます。

  • 配偶者居住権の価額評価は、配偶者の平均余命などから計算する相続税の配偶者居住権の評価法などが公開されていますので、これらを参考にして相続人の協議で決定できます。

  • 配偶者はもともと自宅に住んでいるため、第三者からは、権利関係がよくわからないので、配偶者が配偶者居住権を第三者に対抗するためには、登記をする必要があります。配偶者は建物の所有者に対して配偶者居住権の登記請求権をもちます。

まとめ

配偶者居住権は、民法改正により新設された残された配偶者の居住権を保護するための方策です。これにより、遺産分割の選択肢が増えました。

しかし、配偶者居住権は、自動的に配偶者が取得できる権利ではありません。遺言か、遺言がない場合は相続人間の遺産分割協議での合意が必要です。

遺言作成の際には、検討する価値のある方法と思います。ご興味がある方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

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