抜本的な見直しが進められている「技能実習制度」

昨今、日本では、技能を学びながら働くアジアの若者へのいじめ事件(悲しいことです)が発覚するなど、技能実習生制度の改善を求める声が高まっています。

新聞報道によると、630日に、古川法務大臣が、訪問先のベトナム・ハノイのホテルで記者会見し、有識者らと進めている技能実習生制度などの見直しについて、「論点を7月に発表する」と語ったと報じられました。

この会見で、法務大臣は、「持続可能な制度にしなければならない」と強調し、実習生を派遣する送り出し機関の在り方を含めた論点を整理し、制度の抜本的な改正につなげたい意向とのことです。

そもそも、技能実習制度では、多くの技能実習生が、実習終了後に、母国等で活躍されている一方で、一部の受入れ企業等において労働関係法令違反等の問題が生じていることなどから、平成2911月に施行された技能実習法に基づき、更なる制度の適正化及び技能実習生の保護の取組等が進められていました。

技能実習法の附則では、「政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とされているのです。

2022年度の年頭所感で、古川法務大臣は、技能実習制度の見直しに意欲を見せていました。

*法務省のHPでは、古川法務大臣の2022年年頭所感として以下のような記載があります。

「年頭にあたり(略)「チャンスを逃さない」という意気込みです。目の前にチャンスボールが飛んできたら,迷わず思い切りバットを振る,その意気込みで仕事に臨みたいと思っています。例えば,技能実習や特定技能,これらは,ちょうど今見直しの時期を迎えています。ならば,チャンスです。この際,大胆に見直し作業に取り組みたいと思います。技能実習制度には,本音と建前のいびつな使い分けがあるとの御意見・御指摘にも,正面から向き合わなければなりません。」

https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00267.html

5月の法務省のHPでは、古川法務大臣の、「5月17日に勉強会を行い、タレントのパトリック・ハーラン氏からハーラン氏のこれまでの御経験等を踏まえ、在日外国人から見た日本社会の良し悪し、外国人労働者を受け入れるメリットなどについて、貴重なお話を伺い、大変有意義な意見交換ができたと考えています。」とのコメントも紹介されました。

一方で、日弁連は、2022415日に「技能実習制度の廃止と特定技能制度の改革に関する意見書」を公にしました。

この中で、「技能実習制度の目的は、名目上は,労働者受入れ制度ではなく、開発途上国等へ日本の高度な技術等を移転することにより国際貢献を果たすことにあり、技能実習法においても、1条において、人材育成を通じた開発途上地域等への技能,技術又は知識の移転による国際協力を目的とすることが明記されている。しかし、現実には(略)日本の深刻な労働者不足を補うための労働者受入れ制度として機能しながら、労働者不足の深刻化とともに制度が維持拡大してきていることが明らかであり、制度の名目と実態の乖離は甚だしいと言わざるを得ない状況が続いている。」とし、「技能実習制度を直ちに廃止するべきである」という意見表明意を行いました。

https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2022/220415.html

 さて、法務省が7月に発表する技能実習制度の改革の論点とは、どのようなものでしょうか。今後が注目されます。