在留資格該当性と上陸基準適合性の違い / 杉並区の行政書士が解説します。

【まとめ】在留資格該当性とは、「我が国に入国・在留する外国人は、原則として、入管法に定める在留資格のいずれかを有する必要がある。」ということです。上陸基準適合性とは、「在留資格のうち、活動内容から見て我が国の産業及び国民生活に影響を与えるおそれのあるとされる一部の資格について、法務省令で定める上陸許可基準に適合しなければ,我が国への上陸が認められない」とするものです。上陸基準は、上陸時点だけでなく、在留資格の変更や更新の際にも考慮されます。

外国人が日本で住む(=在留する)ためには、まずは、適法に上陸(入国)してから、在留資格を取得する必要があります。具体的には、外国人が上陸を入国審査官に申請して、審査官が審査するというプロセスとなります。ここで重要な条文が、出入国管理法の第7条1項2号ですが、ここに判断基準として「在留資格該当性」と「上陸基準適合性」という重要な考え方がでてきます。

「在留資格該当性」は、その外国人が日本で行おうという活動が、日本にある「在留資格」のメニューにありますか、ということですので比較的理解しやすいですが、「上陸基準適合性」とは何でしょう?これは、特定の在留資格に要求される要件のことです。

以下に、分かりやすく整理したいと思います。

出入国管理法第7条1項2号の内容

入国審査官の審査

二 申請に係る本邦において行おうとする活動が虚偽のものでなく別表第一の下欄に掲げる活動(二の表の高度専門職の項の下欄第2号に掲げる活動を除き、五の表の下欄に掲げる活動については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定める活動に限る。)又は別表第二の下欄に掲げる身分若しくは地位(永住者の項の下欄に掲げる地位を除き、定住者の項の下欄に掲げる地位については、法務大臣があらかじめ告示をもつて定めるものに限る。)を有する者としての活動のいずれかに該当、かつ、別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者については我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第1号に掲げる活動を行おうとする外国人については、一号特定技能外国人支援計画が第2条の5第6項及び第7項の規定に適合するものであることを含む。)。

この条文では、外国人の上陸申請を入国審査官が認めるための3つの条件が記載されています。

①日本で行おうとする活動が虚偽でないこと(非虚偽性)
②日本で行おうとする活動が入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること(在留資格該当性)
③上陸許可基準の適用のある在留資格についてはその基準に該当すること(上陸許可基準適合性)

■非虚偽性

①の「日本で行おうとする活動が虚偽でないこと(非虚偽性)」とは、上陸申請のある「当該外国人の陳述、証拠資料等に基づき、かつ、その主観的意図のほか客観的事実を総合的に考慮して、当該外国人の本邦において行おうとする活動が社会通念上虚偽のものでないということができる」(判例)という意味です。

■在留許可該当性

②は、外国人が、日本で行おうとする活動が、法で決まっている29種類の在留資格に当てはまらないと日本に上陸できませんということです。

入管法が定める在留資格

全部で29種類です。

【活動資格(入管法 別表第一)】

 ① 一の表 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道

 ② 二の表 高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習

 ③ 三の表 文化活動、短期滞在

 ④ 四の表 留学、研修、家族滞在

 ⑤ 五の表 特定活動

【身分・地位資格(入管法 別表第一)】

 ⑥ 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

なお、注意すべきは、入管法7条1項2号では、条文上かっこ書きで、上陸に際しては、在留許可該当性の判定から外されている資格(※)があるということです。

上陸に際して、在留許可該当性の判定から外されている資格
高度専門職2号(指導者でない研究職など
告示外の特定活動 ⇒ 法務省の告示
・永住者
・告示外の定住者  ⇒ 法務省の告示

例えば、定住者は、「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」と定義され、具体例は告示されています。第三国定住難民、日系3世、中国残留邦人等であれば、告示された定住者ですが、これ以外であれば、定住者として資格該当性のある方でも、定住者資格では上陸できないので、例えば短期滞在の在留資格で上陸許可を得て、その後、定住者告示以外の定住者(告示外定住)への在留資格変更が必要になります。

上陸許可基準適合性とは

上陸許可基準適合性とは

入管法7条1項2号に記載のある3番目の基準が「上陸許可基準適合性」です。これは、一部の在留資格に対して法務省令(基準省令)が上陸できる条件として定めたものです。このように、特定の在留資格には、在留資格該当性に加えて、上陸許可基準適合性を求める理由は、それらの在留資格で活動する外国人の範囲を、入国管理政策の観点から調整する必要があるからです。

また、この上陸許可基準は、入管法上は、外国人が入国審査官から上陸許可を受けるための要件に過ぎないのですが、実務上は、「在留資格変更許可申請」や「在留資格更新許可申請」でも判断要素に入れられていますので、大変に重要な位置づけのものです。

上陸許可基準が定められている在留資格

入管法7条1項2号では、「別表第一の二の表及び四の表の下欄に掲げる活動を行おうとする者」が上陸許可基準の対象です。

これは、先ほどの「入管法が定める在留資格」のボックスの②と④の資格を指します。

したがって、次の資格に上陸許可基準が定められているということになります。

【別表第一の二の表=就労系の資格】 
高度専門職*、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、技能実習 (*高度専門職1号のみ。高度専門職2号は本条の対象から除かれているためです。)

【別表四の表⇒身分系の資格】
留学、研修、家族滞在

これら以外の在留資格には、上陸基準適合性は問題になりません。例えば、別表第一の一の表にある「外交、公用、教授、芸術、宗教、報道」などには、活動の非虚偽性と在留資格該当性だけが問題となります。上陸基準許可基準は考慮しなくてよいのです。

上陸許可基準の例

例えば、出入国在留管理庁のHPで、在留資格の「介護」を見ますと、以下のように説明されます。上段が、在留資格該当性についてです。下段が、上陸基準適合性についてです。

こうなっているのは、上陸基準をさだめた「基準省令」(出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令)でそのように規定されているからです。

例 基準省令 介護について
法別表第一の二の表の介護の項の下欄に掲げる活動
申請人が次のいずれにも該当していること。
一 申請人が社会福祉士及び介護福祉士法(昭和六十二年法律第三十号)第四十条第二項第五号又は社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和六十二年厚生省令第四十九号)第二十一条第三号に該当する場合で、法別表第一の二の表の技能実習の項の下欄に掲げる活動に従事していたときは、当該活動により本邦において修得、習熟又は熟達した技能等の本国への移転に努めるものと認められること。
二 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

もうひとつ見てみます。代表的な在留資格である技術・人文・国際業務です。下の票の上段が、在留資格該当性について、下段が上陸基準適合性についてです。

「基準省令」では、次のように規定されています。

例 基準省令 技術・人文・国際業務について
法別表第一の二の表の技術・人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第九十八条に規定する国際仲裁事件の手続等及び国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

このように、在留資格のうち、高度専門職(1号)、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、技能実習(以上、就労系)と、留学、研修、家族滞在(以上、身分系)については、在留資格該当性に加え、上陸基準適合性が上陸・在留資格変更・在留資格更新のタイミングで判断要素となるのです。

【基準省令の全体】⇒ここ

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