入管法|外国人の転職時に役立つ「就労資格証明書」とは /杉並区の行政書士が解説

「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」のように、就労制限のない在留資格の外国人の場合は別として、「技術・人文・国際業務」の在留資格については、自分の会社で外国人に行ってもらう予定の仕事が、在留資格該当性があるかどうかを判断するのは難しいことです。判断がつかないまま、転職して働き始めてしまった後で、その仕事に在留資格該当性がないことが判明すると、転職後の仕事は不法就労となってしまいます。

日本の会社が、外国人を雇用しようとする場合に、その外国人が自社で就労できる資格があるのかについて、あらかじめ明確にしたいというニーズがあります。また、外国人本人も就職手続きをスムーズに行うためには、自分がその会社で就労可能な在留資格を持っていることを雇用主に明らかにしたいというニーズがあります。このようなときに役立つのが、就労資格証明です。杉並区の行政書士が解説します。

就労資格証明書とは

就労資格証明書とは、我が国に在留する外国人からの申請に基づき、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(以下「就労活動」といいます。)を法務大臣が証明する文書です。

外国人を雇用等しようとする者は、その外国人が我が国で就労する資格があるか否かについてあらかじめ確認したいと思いますし、他方、外国人本人も就職等の手続きをスムーズに行うためには、自分が就労できる在留資格を有していることを雇用主等に明らかにする手段があれば便利です。

外国人が我が国で合法的に就労できるか否かは、旅券に貼付(又は押印された)上陸許可証印、中長期在留者については在留カード、特別永住者については特別永住者証明書を確認するほか、資格外活動の許可を受けていることを確認することによっても判断することができます。

しかし、具体的にどのような活動が認められているかについては、入管法の別表に記載されている各種の在留資格に対応する活動を参照しないと判然としない場合もあります。

そこで、入管法は、雇用主等と外国人の双方の利便を図るため、外国人が希望する場合には、その者が行うことができる就労活動を具体的に示した就労資格証明書を交付することができることとし、雇用しようとする外国人がどのような就労活動を行うことができるのか容易に確認できるようにしました。

就労資格証明書の注意点

1.就労系在留資格を持っている外国人にとって、転職時の義務は「所属機関等に関する届出」を14日以内に行うこと(入管法第19条の16)であって、「就労資格証明書」の取得は義務ではありません。

2.外国人が我が国で就労活動を行うことができるか否かは、在留資格の種類又は資格外活動許可の有無によって決定されるものであるため、就労資格証明書自体は外国人が就労活動を行うための許可書ではありませんし、これがなければ外国人が就労活動を行うことができないというものでもありません。

例えば、技術・人文・国際業務の在留資格カードの有効期限の半年前に、「就労資格証明」を得て、A社からB社に転職したときに、半年後の在留資格更新審査で、転職以降のB社での就業実態に、技術・人文・国際業務としての在留資格該当性があったかが、改めて審査されることになります。

3. 就労資格証明書の申請者は、外国人本人です。就労資格証明書を提示しないことにより、雇用の差別等の不利益な扱いをしてはならない旨が入管法第19条の2第2項に規定されています。

入管法 第19条の2

法務大臣は、本邦に在留する外国人から申請があつたときは、法務省令で定めるところにより、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を証明する文書を交付することができる。

2 何人も、外国人を雇用する等に際し、その者が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動が明らかな場合に、当該外国人が前項の文書を提示し又は提出しないことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。

就労資格証明者を請求できる外国人

就労資格証明書は、本邦に在留する外国人からの申請によって、就労できることを証明する目的のものです。

したがって、この申請ができる外国人は、①活動類型資格のうち就労可能な在留資格者、②地位等類型資格者(「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」)、③特別永住者、④就労することができない在留資格を有している者で資格外活動許可を得た者です。

就労資格証明書の申請手続き

●申請書、必要書類(出入国在留管理庁HPより)

  1. 就労資格証明書交付申請書(新様式)(PDF:146KB)
    就労資格証明書交付申請書(新様式)(Excel:24KB)
  2. 資格外活動許可書を提示(同許可書の交付を受けている者に限ります。)
  3. 在留カード又は特別永住者証明書(特別永住者証明書とみなされる外国人登録証明書を含みます。)を提示
    ※ 申請人以外の方が、当該申請人に係る就労資格証明書交付申請を行う場合には、在留カードの写しを申請人に携帯させて、来庁する方が申請人の在留カードを持参してください。
  4. 旅券又は在留資格証明書を提示
  5. 旅券又は在留資格証明書を提示することができないときは、その理由を記載した理由書
  6. 身分を証する文書等の提示(申請等取次者が申請書類を提出する場合)

●審査基準
出入国管理及び難民認定法別表第一に定める在留資格のうち就労することができる在留資格を有していること、又は、就労することができない在留資格を有している者で資格外活動許可を受けていること、又は、就労することに制限のない在留資格を有していること。

●標準処理期間
 当日(勤務先を変えた場合などは1か月~3か月)

●不服申立方法
 なし

まとめ

先に述べたように、「技術・人文・国際業務」の在留資格については、自分の会社で外国人に行ってもらう予定の仕事が、在留資格該当性があるかどうかを判断するのは難しいことです。判断がつかないまま、転職して働き始めてしまった後で、その仕事に在留資格該当性がないことが判明すると、転職後の仕事は不法就労となってしまいます。

また、外国人にとっても、次の更新で、在留資格該当性がないと判断されれば、在留資格を失い、帰国を余儀なくされるリスクや、不法就労とされるリスクもあります。

そのような事態を避けるためには、少しでも疑問がある場合は、そもそもの問題として、その外国人の方の在留資格で認められた仕事なのかを専門家にも確認しながら十分に検討すること、さらに、(先に述べたように、外国人本人の希望があることが条件となりますし、更新許可が下りる保証にはならないですが)なるべく就労資格証明書を得ることが安心材料になると思います。

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