在留手続きの手数料が大幅に値上がりしそうです。政府は今国会に提出予定の入管難民法改正案に、在留資格の更新・変更や永住許可の手数料の引き上げを盛り込みました。2026年2月22日付の朝日新聞によると、永住許可は現行の1万円から20万円へ、実に20倍という衝撃的な数字です。現時点では、報道が先行しており、政府から確定的な数字は出ていませんが、日本に暮らす外国籍の方、外国人材を雇用する企業にとって、無視できない変化が迫っていると考えられます。
なぜ、いま値上げなのか
在留資格の手数料は2025年4月に値上げされたばかりです。⇒ 参考記事「在留資格手続きの手数料がお高くなります」 では、なぜ今値上げなのでしょうか?
日本に在留する外国人は増加の一途をたどり、2025年6月末の在留外国人数は、395万6,619人(前年末比187,642人、5.0%増)で、過去最高を更新しています。入管庁はこの値上げによって得た財源を、在留外国人が日本語や日本の制度を学ぶプログラムの創設など、外国人施策に充てたい考えです。
値上げのもう一つの理由として、「日本の手数料は国際的に見て低水準にある」という点が挙げられています。読売新聞(2025年11月20日)が入管庁のデータをもとに報じた各国比較は以下のとおりです。
就労資格の変更・更新の手数料(国際比較) ※在留資格は「米=I-539」「英=Skilled Worker(permission to stay)」の例
| 国 | 手数料 | 円換算(目安) |
|---|---|---|
| 日本(現行) | 6,000円(窓口申請) | 6,000円 |
| ドイツ | 93〜98ユーロ | 約1.6〜1.7万円 |
| アメリカ | 420〜470ドル | 約6.5〜7.3万円 |
| イギリス | 827ポンド | 約16.9万円 |
数字だけを見ると日本の水準が低いのは確かです。ただし、この比較をそのまま「値上げの根拠」として受け取るには注意が必要です。欧米諸国の多くは出生地主義や一定要件を満たす移民の子どもに国籍を与える制度を採用しており、外国人が「国民」になる道が日本より広く開かれています。これに対して日本は血統主義を採用しており、帰化のハードルも高い。在留手続きを何度も繰り返さざるを得ない人が相対的に多い日本の制度的背景を考えると、手数料の額だけを欧米と単純比較することには議論の余地があります。
なお今回の法改正は、上限額の引き上げに法改正が必要なため、1981年以来45年ぶりの改正となります。
ただし、財務省の試算では、在留手数料の値上げに加えビザ発行手数料・国際観光旅客税の引き上げを合わせ、2026年度に約2,250億円の収入増を見込んでいます。このうち6割は外国人施策に充てられますが、残りの4割は高校授業料の実質無償化やガソリン税の旧暫定税率廃止など、外国人施策とは直接関係のない財源にも回る方向であり、批判的な見方もあります。
手数料はいくらになるのか
現行制度では、在留資格の更新・変更の手数料は、在留期間にかかわらず一律6,000円(オンライン申請は5,500円)です。法律上の上限額も1万円に定められています。
今回の改正案では、この仕組みが大きく変わります。
法律上の上限額の変更
| 手続きの種類 | 現行上限 | 改正後上限 |
|---|---|---|
| 在留資格の更新・変更 | 1万円 | 10万円 |
| 永住許可 | 1万円 | 30万円 |
実際に窓口で支払う金額は政令で定められます。2026年2月22日の朝日新聞が複数の政府関係者の情報として報じた最新の想定は以下のとおりです。
更新・変更の手数料(2026年2月時点の想定)
| 付与される在留期間 | 現行 | 改正後(想定) |
|---|---|---|
| 3ヶ月以内 | 6,000円 | 1万円程度 |
| 1年 | 6,000円 | 2〜3万円程度 |
| 5年 | 6,000円 | 7万円程度 |
永住許可の手数料(2026年2月時点の想定)
| 現行 | 改正後(想定) | |
|---|---|---|
| 窓口申請 | 1万円 | 20万円程度 |
いずれもオンライン申請を利用すれば一定の値引きが設けられる見込みです。なお、ビザ(査証)*の発行手数料についても外務省が同時期の引き上げを方針としており、現行の1次ビザ3,000円・数次ビザ6,000円を米国(約2.8万円)・英国(約2.5万円)並みに引き上げることが検討されています。
*ご参考ブログ⇒「ビザと在留資格の関係」
減免制度も設けられるが、範囲は限定的
経済的な困難など特別の事情がある方には、手数料を減免できる仕組みも導入される予定です。ただし、永住許可の場合、減免を受けられるのは日本人・永住者・特別永住者の配偶者と子に限られます。就労ビザや高度専門職で長年日本で働いてきた方が永住申請する際は、経済的に困難な状況であっても減免の対象外となる可能性が高い点には注意が必要です。
今後のスケジュールと対応のポイント
法改正案は2026年3月に閣議決定・特別国会提出が予定されており、可決されれば2026年度中に手数料の引き上げが実施される見通しです。ただし、実際の金額は政令で定められるため、詳細は今後の政令公布を待つ必要があります。
永住許可を検討中の方へ
値上げ前に申請できるかどうかで、19万円の差が生じます。現時点で永住許可の要件を満たしている方、あるいは近い将来満たす見込みの方は、早めに専門家に相談し、準備を始めることをお勧めします。要件を満たしていないまま申請しても不許可になるだけですので、まずは要件の確認が先決です。 (⇒ご参考「永住許可申請サポート」(行政書士中村光男事務所HP))
更新・変更の手続きを控えている方へ
在留期間が長いほど手数料が高くなる設定ですが、長期的に見ると5年ビザを取得した方が1年ビザを繰り返すより総コストは低く抑えられます。次回の更新時に5年の在留期間を取得できるかどうか、一度確認してみてください。
外国人材を雇用する企業の方へ
従来、在留資格の手続き費用を会社が負担していたケースでは、今後のコスト増加が見込まれます。2026年度の予算編成に際してこの増加分を織り込むとともに、外国人社員への丁寧な説明と社内規程の整備を早めに進めることが求められます。
まとめ
今回の入管難民法改正案に盛り込まれた手数料の引き上げは、最大で現行の約12倍(5年ビザの更新)、永住許可に至っては20倍という大幅なものです。2026年度中の施行が見込まれており、時間的な余裕は多くありません。
手数料の使途については外国人支援施策への活用が掲げられている一方、一部が他の政策財源に回ることへの疑問も残ります。「外国人材に来てほしい」という政策目標と、負担増加のバランスについては国会での議論が注目されます。
永住申請や在留資格の更新・変更をお考えの方は、法改正の動向を注視しつつ、早めに行政書士などの専門家にご相談されることをお勧めします。当事務所でもご相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
(注)本記事は読売新聞2025年11月20日付および朝日新聞2026年2月22日付の報道を主な根拠としています。実際の手数料額は政令で定められるため、今後変更される可能性があります。最新情報は出入国在留管理庁の公式サイト等でご確認ください。)
この記事を書いた人
行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)
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ご参考 行政書士中村光男事務所 「ビザ申請・在留資格申請ならお任せください」






