補助金 事業範囲 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

複数の事業や収入をお持ちの個人事業主の方から、補助金申請のご相談を受けることがあります。そのなかでも整理を誤りやすいのが、「赤字要件」や「人件費増加要件」がある補助金で、どの数字を基準に判定するのか、という問題です。

レストランとコインランドリーを個人事業として営みつつ、別に未上場企業の株主や役員でもある、というように関係先が複数ある場合、どこまでが「自分の事業の数字」なのかが見えにくくなります。

今日は、こうしたケースを念頭に、補助金申請における判定単位の考え方を整理してみます。

まず公募要領で「要件」と「判定単位」を確認する

最初に押さえておきたいのは、すべての補助金に赤字要件や人件費増加要件があるわけではないということです。小規模事業者持続化補助金のように、これらの要件を求めない補助金も多くあります。赤字や人件費の話に入る前に、自分が申請する補助金にそうした要件が本当にあるのか、公募要領で確認することが出発点になります。

実例

例えば、第23次ものづくり補助金(2026年5月8日締切で公募終了)では、付加価値額や1人あたり給与支給総額の年平均成長率といった基本要件は、事業者全体の数値で判定する仕組みになっています。また、目標未達の場合の返還免除条件として規定されている「営業利益赤字」も、企業全体で見ます。補助対象事業そのものの内容や効果は事業計画書で説明しますが、要件判定の数字は事業者全体です。このような公募要領のもとでは、複数事業を営む個人事業主が補助対象事業だけを切り出して、都合のよい数字で判定することは避けるべきです。

要件があると分かったら、次に確認すべきは判定単位です。つまり、

  • 申請者である事業者全体の数字で見るのか
  • 補助対象事業や対象店舗の数字で見るのか

という区別です。多くの補助金では、明示がない限り事業者単位で見るのが通常ですが、「補助対象事業に係る」「対象店舗の」といった限定がある場合には、その範囲で判定することになります。ここを公募要領の文言できちんと確認せず、感覚で「自分の都合のよい単位」で計算してしまうと、後から要件不該当を指摘される可能性があります。

個人事業主の決算書には何が入るのか

個人事業主が青色申告をしている場合、確定申告書に添付するのが所得税青色申告決算書です。ここに記載されるのは、原則として個人事業全体の損益です。冒頭の例でいえば、レストラン経営とコインランドリー事業を合算した数字が記載されます。

一方、次のものは青色申告決算書には入りません。

内容 所得区分 青色申告決算書
自分が直接営む事業 事業所得 入る
未上場企業からの配当 配当所得 入らない
法人からの役員報酬 給与所得 入らない
関与する法人の売上・利益 法人の所得 入らない

つまり、確定申告書には個人全体の所得が並びますが、青色申告決算書は個人事業の損益に限られた書類です。補助金で「個人事業の決算書」を求められた場合、中心になるのはこの青色申告決算書になります。

したがって、判定単位が「事業者全体」とされている補助金で、赤字や人件費を見るときの基本軸も、まずはこの青色申告決算書の数字、つまり個人事業全体の合算値になります。レストラン事業だけが赤字でも、コインランドリー事業の黒字と合算して個人事業全体が黒字であれば、赤字要件を満たすとはいえません。人件費についても同様で、片方の事業で増えていても、もう片方で減っていれば、個人事業全体としては増加していないことになります。

配当・役員報酬・関与する法人の数字はどう扱われるか

未上場企業からの配当所得や、別の法人からの役員報酬は、個人の確定申告書には出てきますが、個人事業の損益とは別の所得区分です。したがって、補助金の赤字・人件費判定の計算には、通常、入りません。

関与している印刷会社のような法人についても、その売上、経費、利益、人件費は法人決算に属するため、個人事業の青色申告決算書には含まれません。

ただし、ここで安心しきってよいわけではありません。法人と個人事業の関係は、補助金によっては別の角度から確認の対象になります。たとえば、

  • 申請者が支配株主や代表者である関連法人がある場合の、補助対象事業者の範囲
  • 大企業に支配されている事業者を補助対象から除く規定(いわゆるみなし大企業)
  • 同じ店舗・設備・従業員を法人と個人事業で共用しているケース

といった場面では、決算書には載らなくても、関連事業者や実質的な事業実態として説明を求められることがあります。配当や役員報酬の金額が大きい場合も、「補助対象であるレストラン事業が実体として継続的に営まれているか」という観点で確認されることがあります。決算上は別、ただし審査上はまったくの無関係とは限らない、と整理しておくのが安全です。

事業ごとに数字を示したい場合に備える資料

公募要領が「補助対象事業」「対象店舗」単位での判定を明示している場合や、事業者単位での判定であっても補足説明として事業別の数字を示したい場合には、青色申告決算書だけでは足りません。事業ごとの根拠資料を準備しておく必要があります。具体的には、事業別・店舗別の損益表、売上台帳、給与台帳と勤務シフト表、共通経費の按分計算書などです。

特に注意したいのが共通経費の扱いです。事務所家賃、車両費、広告費、通信費、水道光熱費、事務員給与といった費目は、複数の事業にまたがることが珍しくありません。これを都合よく一方の事業に寄せると、審査で疑問を持たれます。床面積、売上比、従業員数、稼働時間など、合理的な按分基準を説明できるようにしておくことが重要です。

まとめ

複数の事業や収入をお持ちの方が補助金を申請する場合、最初の作業は、その補助金に赤字要件や人件費増加要件があるかを公募要領で確認すること、そしてその判定単位が事業者全体なのか補助対象事業単位なのかを読み取ることです。

明示がなければ、個人事業主の場合は青色申告決算書に記載された個人事業全体の数字で判定するのが通常です。配当所得や役員報酬、関与する法人の損益は、原則としてこの判定には入りませんが、関連事業者や事業実態の説明という別の角度で確認されることはあり得ます。

補助金申請で大切なのは、都合のよい数字だけを切り出さないことです。青色申告決算書との整合性、事業別損益の根拠、共通経費の按分方法、法人との関係を、求められたときに丁寧に説明できる状態にしておく。この準備があるかどうかで、申請後の対応の安定感は大きく変わってきます。

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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