ものづくり補助金と新事業進出補助金の統合 行政書士中村光男事務所

2026年度以降、中小企業の成長を支えてきた2つの主要な補助金制度——「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」と「中小企業新事業進出補助金(通称:新事業進出補助金)」——が統合され、「新事業進出・ものづくり補助金」(正式名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」)として再編される見込みです。

ものづくり補助金は旧来より中小企業の生産性向上を支援してきた制度であり、新事業進出補助金は事業再構築補助金の後継として2025年度に創設された比較的新しい制度です。

両制度の統合により、企業の成長ステージに応じた切れ目ない支援を実現することが期待されています。

今回は、この二つの補助金の目的と「新規性」の考え方の違いを整理し、統合後の新制度の特徴についても整理します。

1. ものづくり補助金(旧制度)の「新規性」

ものづくり補助金は、正式名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、中小企業の生産性向上と持続的な賃上げを目的とする制度です

ものづくり補助金の目的(23次公募要領より)

中小企業・小規模事業者が今後複数年にわたる相次ぐ制度変更に対応するため、生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発や海外需要開拓を行う事業のために必要な設備投資等に要する経費の一部を補助する事業を行うことにより、中小企業者等の生産性向上を促進し経済活性化を実現することを目的とします。

一番のポイントは「革新的な新製品・新サービスの開発」 という概念です。

 

特に以下の点が重視されていました。

  • 技術的革新性:新しい生産方式の開発、技術を組み合わせた新しい価値の創造など、従来の枠組みを超える技術的なチャレンジ。

  • 付加価値の向上:最新の加工機導入による精密加工の実現や、海外市場獲得のための新製品開発など。

  • 設備投資と一体的な取り組み:単なる設備の更新ではなく、革新的な取り組みを伴う投資計画。

ものづくり補助金における「新規性」は、あくまで既存事業の延長線上での 「技術的な革新性」 が評価の対象であり、「新しい市場への進出」そのものが支援目的ではなかったという点が重要です。

例えば、プレス工場が、需要増による生産性向上と厚板への対応などのために、より高スペックなプレス機の導入するケースは、「既存事業の延長線上での 「技術的な革新性」」ですので、対象となります。一方で、単なる設備更新では、対象外となりました。

2. 新事業進出補助金(旧制度)の「新規性」

一方、新事業進出補助金は、「既存事業と異なる事業への前向きな挑戦であって、新市場・高付加価値事業への進出等に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する」ことを目的としています

直近の第4回公募要領では、自社にとって新しい製品で、新しい市場に挑戦し、最終的に売上の1割以上をその新事業で稼ぐ計画であることが求められています。

    3つの新規事業進出要件(公募要領14頁)
    1. 製品等の新規性要件
      → 自社にとって本当に新しい製品・サービスであること。
      (×単なる増産・再製造・軽微な変更・性能差が小さいもの)

    2. 市場の新規性要件
      → その製品・サービスが向かう市場が自社にとって新しいこと。
      (×既存市場と同じ・市場の一部だけ・商圏が違うだけ)

    3. 新事業売上高要件
      → 事業計画の最終年度に、新事業の売上高(または付加価値額)が、
      申請時点の総売上高の10%以上(または総付加価値の15%以上) になる見込みであること。

    この制度で重視されるのは以下の概念です。

    • 市場における新規性:単に自社にとって初めての事業というだけでなく、既存事業の枠を超え、まったく異なる市場や顧客層への進出であること。例えば、機械加工のノウハウを生かした半導体分野への参入や、技術を転用した酒造業への進出などが想定されています

    • 新事業進出要件:公募要領では「新事業進出指針」に示された定義に該当する事業であることが基本要件として定められています

    • 市場の新規性要件に該当しない例:具体的には、公募開始前に製品の販売やサービス提供に関する宣伝等、いわゆる「事業化の第一段階」以上に着手していた場合、新規性は認められません

    ものづくり補助金では、プレス工場が、需要増による生産性向上と厚板への対応などのために、より高スペックなプレス機の導入するケースは、「生産性向上に資する革新的な新製品・新サービス開発」と認められましたが、新事業進出補助金では、この場合は、既存事業の延長線の事業展開とみなされるため、対象外にされる公算が大となります。

    3. 「新規性」の対比整理

    以上を踏まえると、両補助金における「新規性」の概念は、以下のように明確に整理できます。

    項目 ものづくり補助金(旧) 新事業進出補助金(旧)
    新規性の種類 技術的な革新性 市場における新規性
    支援対象 新製品・新サービスの開発 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出
    評価視点 技術的にどれだけ新しいか 市場に対して新しい挑戦か
    事業との関係 既存事業の延長線上での革新 既存事業とは異なる事業への転換

    4. 統合後の新制度:「新事業進出・ものづくり補助金」

    2026年度から開始される新制度では、以下の3つの申請枠で構成される予定です

    (1)革新的新製品・サービス枠

    ものづくり補助金の理念を継承する枠です。技術的革新性のある製品・サービスの開発を支援し、補助上限額は従業員数に応じて750万円から2,500万円、補助率は原則1/2(小規模事業者は2/3)です。

    (2)新事業進出枠

    新事業進出補助金の理念を継承する枠です。既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援し、補助上限額は2,500万円から7,000万円、補助率は原則1/2ですが、賃上げ特例を満たす場合には補助率2/3に引き上げられます。

    (3)グローバル枠

    海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化を支援する枠で、補助率は従業員規模に関わらず2/3です。

    5. 制度統合の実務的意義

    両制度が統合される実務的な意義としては、以下の点が挙げられます。

    • 成長プロセスの一貫支援:新製品開発(ものづくり補助金の役割)から市場進出(新事業進出補助金の役割)までを、一つの制度の中でシームレスに支援できるようになります

    • 申請判断の一本化:従来は「自社の事業計画がどちらの補助金に合致するか」を判断する必要がありましたが、今後は一つの制度の中で自社の目的に最も近い枠を選択する形になります

    • 政策の選択と集中:中小企業支援策は「救済型」から「成長型」へと舵が切られており、より高付加価値化や賃上げに積極的な企業への支援に焦点化されています

    6. 今後のスケジュール

    現時点では以下のスケジュールが確認されています。

    • ものづくり補助金第23次公募:2026年4月3日〜5月8日締切

    • 新事業進出補助金第4回公募:2026年5月19日〜6月19日締切

    • 新事業進出・ものづくり補助金:これらの公募終了後の2026年夏ごろからの開始が見込まれています

    なお、現行のものづくり補助金(第23次公募)が終了すると、以降は統合後の新制度での申請となります

    おわりに

    以上、行政書士の立場から、ものづくり補助金と新事業進出補助金の統合と、両制度における「新規性」の考え方の違いについて解説しました。

    中小企業の皆様におかれては、自社の事業計画が「技術的な革新性」に重点を置くものなのか、それとも「市場における新規性」に重点を置くものなのかを整理した上で、統合後の新制度における適切な申請枠を選択されることをお勧めいたします。

    【参照情報】

    中村光男

    この記事を書いた人

    行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

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