相続税は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付するのが原則です。
しかし、遺産の多くが不動産で現金が少ない、あるいは突然の相続で手元資金が足りない、というケースは珍しくありません。一括払いが難しいときの対処法は、大きく5つあります。
まず知っておきたい「放置のリスク」
対処法の前に、何もしないとどうなるかを確認しておきましょう。
申告・納付期限を過ぎると、延滞税が加算されます。税率は年利換算で最大14.6%程度と、一般的なローン金利をはるかに上回ります。さらに放置が続けば、財産の差し押さえという事態にもなりかねません。「どうしよう」と悩んでいる時間が、実は一番のリスクです。
公的制度を使う——延納と物納
① 延納(分割払い)
もっとも一般的な方法です。一定の要件を満たせば、数年から最長20年に分けて納税できます。
主な要件は次のとおりです。
- 相続税額が10万円を超えていること
- 現金で一括納付することが困難な事情があること
- 担保を提供できること(税額100万円以下かつ延納期間3年以内なら不要)
注意点は、利息にあたる「利子税」がかかることです。利子税率は財産の種類や不動産の割合によって異なりますが、令和7年現在は不動産中心の遺産で年0.4%程度と非常に低い水準です。ただし、この率は毎年変動します。延納を検討する際は、国税庁のサイトで最新の率を確認した上で、銀行ローンの金利と比較して判断するのが賢明です。
② 物納(財産そのもので納める)
延納によっても現金納付が困難な場合、相続した不動産や有価証券を国に引き渡して納税する方法です。
ただし審査は厳しく、境界が未確定な土地や権利関係に問題がある不動産は認められません。また、引き取り価格は時価ではなく相続税評価額(路線価など)が基準となるため、売却して現金で納めるよりも実質的な負担が重くなるケースもあります。「最後の手段」と位置づけ、慎重に検討してください。
民間の手段——売却とローン
③ 相続財産を売却する
相続した土地や建物を売却し、その代金で納税する方法です。申告期限(10か月)までに売却を完了させる必要があるため、早めに動き出すことが前提になります。
税制上の特典として、取得費加算の特例があります。相続税の申告期限から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を譲渡所得の経費に算入でき、所得税を抑えられる可能性があります。不動産の売却を検討する際は、必ず確認しておきたいポイントです。
④ 金融機関から借りる
銀行の「相続ローン」などを利用して一括納付し、その後銀行へ返済していく方法です。延納の利子税より金利が低いケースもあり、担保の選択肢が広いこともメリットです。
ただし、審査には時間がかかります。申告期限の直前に動き始めると間に合わないリスクがあるため、早期の相談が必要です。
最終手段——相続放棄
借金が多く、相続すること自体がマイナスになる場合は、相続放棄という選択肢もあります。
期限は「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」から3か月以内で、家庭裁判所への申し立てが必要です。相続放棄は他の相続人にも影響が及ぶため、家族間でよく話し合った上で判断してください。
まとめ
相続税が一括で払えない場合の対処法を整理すると、次のようになります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 延納 | 最長20年の分割払い。利子税あり(現在は低水準) |
| 物納 | 財産で納付。評価額基準で損をする場合も |
| 売却 | 不動産を現金化。取得費加算の特例が使える場合あり |
| ローン | 延納より有利なことも。審査に時間がかかる |
| 相続放棄 | 相続自体がマイナスなら検討。3か月以内の手続きが必要 |
どの方法が最善かは、遺産の内容や手元資金の状況によって異なります。共通して言えるのは、早めに動くほど選択肢が広がるということです。相続税の申告・納付は税理士の専門領域ですが、不動産の名義変更や遺産分割協議書の作成は行政書士・司法書士が担います。まずは専門家に相談し、自分の状況に合った方法を一緒に考えることをおすすめします。
この記事を書いた人
行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)
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