街で見かけるインド料理や中華料理のレストランの多くには、外国人の調理人さんたちが働いています。彼らには、「技能」という専門的な在留資格を持っている方がいます。
「技能」とは、日本で特別な技術や知識が必要とされる仕事に就くための在留資格です。例えば、
- 外国料理の調理師
- スポーツ指導者
- 航空機の操縦者
- 貴金属などの加工職人
などが該当します。
これらの仕事は、日本で働くために必要な特別なスキルを持っている人だけが取得できる資格です。
在留資格「技能」とは
「技能」資格は、入管法の別表第一の二で「技能:本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」と定義されています。 ※在留資格該当性といいます。
さらに、「技能」については、入管法第7条によって「我が国の産業及び国民生活に与える影響その他の事情を勘案して法務省令で定める基準に適合すること」が条件とされています。 ※上陸許可基準といいます。
つまり、外国人の方が日本で、外国料理の調理師として在留するための許可をもらうためには、1.在留資格該当性 2.上陸許可基準のふたつの条件をクリアする必要がります。ひとつひとつ説明します。
「技能」の在留資格該当性
在留資格該当性は法文にある次の2要素を満たしていることです。
1.「産業上の特殊な分野」に属する「熟練した技能を要する」業務であること
・「産業上の特殊な分野」とは、判例では「外国に特有な分野、外国の技能レベルが我が国より高い分野、我が国では熟練技能労働者が少数しかいない分野」です。
具体的には、味噌ラーメン・ちゃんぽん・皿うどんは中華料理ですが、日本化されているので「産業上の特殊な分野」でないが、チャーハンやシュウマイは産業上特殊な分野(中華料理)と判断されています。
・「熟練した技能を要する」業務とは、長年の修練と経験を要する業務のことです。機械的な単純労働は対象外です。
2.本邦の公私の機関との契約に基づいて行うこと
・「公私の機関」とは、事業主体性を有数する団体または個人のことです。
・「契約」は、雇用契約でも業務委託契約(請負)でも可ですが、請負の場合は確定申告している必要があります。また、業務委託を下請けに出してもよいのですが、半分以上を下請けに出すようだと、業務の継続性・安定性にクエスチョンマークがついて不許可になり得ます。
・「基づいて」とは、技能資格では、店の経営に従属的立場であることが必要ということです。つまり自らが事業主体となってはいけないのです。
たとえば、長くインド料理店で働いていた外国人コックが、独立して自分の店を持つようなときは、「技能」ではなく「経営・管理」の在留資格に変更するのがよいです。
「技能」の上陸許可基準
上記でご説明した在留資格該当性に加え、技能ビザを得るためには、省令で定める上陸許可基準を満たす必要があります。
・日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
・以下の業種と実務経験であること(コックは下記の①です。「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者」で10年以上の実務経験を有する者とされています。)
※日本国での専修学校の専門課程を修了して専門士資格を持っていても、技能ビザの要件緩和にはなりません。
①料理の調理又は食品の製造に係る技能(10年以上の実務経験。外国での教育機関での専攻期間含む)
②外国に特有の建築又は土木に係る技能(10年以上の実務経験)
③外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能(10年以上の実務経験。外国での教育機関での専攻期間含む)
④宝石,貴金属又は毛皮の加工に係る技能(10年以上の実務経験。外国での教育機関での専攻期間含む)
⑤動物の調教に係る技能(10年以上の実務経験。外国での教育機関での専攻期間含む)
⑥石油探査のための海底掘削,地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能(10年以上の実務経験。外国での教育機関での専攻期間含む)
⑦航空機の操縦に係る技能について二百五十時間以上の飛行経歴を有する者
⑧スポーツの指導に係る技能について三年以上の実務経験や国際的な競技会へ出場経験のあるもの
⑨ワイン鑑定等で5年以上の実務経験を有し一定以上のレベルのもの
上陸許可基準 基準1号:コック(調理師)の資格審査のポイント
1.事業所の規模
調理師の技能を十分に発揮できる規模の事業所、店舗が確保されていること。店舗の借主や営業許可名義は申請人であっては許可されません。技能の資格では、事業経営できないからです。
高級料理店を除き、座席数は30席程度あると有利です。
写真、見取り図、メニューなどが参考資料として必要です。特に、メニューより、在留資格該当性(産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務)、調理の上陸許可基準(料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務)が判断されます。
2.従業員
お店には、食器洗い・給仕・会計等の専任スタッフがいて、スタッフ名簿が提出できること。技能資格のコックは調理の仕事しかできないからです。
3.提供される料理
外国において考案され、熟練した技能を要する料理がメニューの大半を占めていること。外国料理でも、日本で広く普及している形態でのカレーライス・ラーメン・焼肉等は「熟練した技能を要する料理」とはなりません。
5,000円以上のコースメニューが存在し、かつ単品メニューがあることが有利です。
4.10年以上の実務経験
・10年以上の実務経験を証する在職証明書は、レターヘッド付きのものであること(レターヘッドの出せない店は信ぴょう性が疑われます。屋台等の経験は実務経験に認められにくいです。)
・海外で在籍していたレストランの住所・写真その他の真実性を証明する証拠はしっかりしていないと不利になります。
・中国の調理師は、戸籍簿・旅券・職業資格証明書等に、職業の記載があるはずなので確認がされます。
・ネパール人の調理師は、提出されるレストランの在職証明機関と、そのレストランのPAN(permanent account number )登録証明書の整合性がチェックさfれます。
・25歳以下の調理師の申請は、10代前半の経験は単なるヘルパー程度とみなされるため、「10年の実務経験」が認められにくいです。
まとめ
技能ビザを活用すれば、海外の優秀な外国人人材を雇用できるため、事業のサービス向上につながります。
「許可が取れるか不安」、「実務経験を証明できるのだろうか」等のお悩みがございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
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