パート・アルバイトの解雇と無期転換 ── 呼び名で守られ方は決まらない

「うちはパート・アルバイトだから、辞めてもらうのも簡単」── そう考えている方は少なくありません。でもこれは、法律上かなり危うい思い込みです。今日は、正社員・パート・アルバイトといった「呼び名」と実際の法律上の扱いがどう違うのかを、制度全体が見渡せるように整理します。

守られ方は「呼び名」では決まらない

まず押さえたいのは、「正社員」「契約社員」「パート」「アルバイト」「嘱託」といった呼び名は、法律が定めた区分ではないということです。これらは会社が管理上の便宜で付けている名前にすぎません。

法律が実際に見ているのは、呼称ではなく労働契約の中身です。とりわけ次の点が決め手になります。

  • 期間の定めがあるか(有期か、無期か)
  • 所定労働時間が通常の社員より短いか(短時間か、そうでないか)

「パート」と呼んでいても無期の人はいますし、「アルバイト」と呼んでいてもフルタイムに近い人もいます。呼び名をどう付けようと、有期か無期かなどは契約の中身で自動的に決まり、それに応じて適用される法律も決まります。「パートだから保護が薄い」ということはありません。

有期か無期か ── 解雇は思うほど簡単ではない

「辞めてもらう」のがどのくらい難しいかも、呼び名ではなく契約の型で決まります。

無期契約(正社員型)の解雇には、合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(労働契約法16条)。これは無期のパートでも同じです。一方、有期契約は「途中でいつでも切れる」と思われがちですが、実際は逆で、期間の途中で解雇するには「やむを得ない事由」が必要とされ(同17条1項)、無期よりさらに厳しいハードルです。

契約の型 期間途中・在職中の終了
無期(正社員もパートも) 合理的理由+相当性が必要
有期の期間途中 やむを得ない事由が必要(無期より厳しい)

なお、期間満了で更新しない「雇止め」は本来は自然な終了ですが、何度も反復更新していたり、労働者が更新を期待する合理的な理由がある場合には、雇止めにも解雇並みの規律がかかります(同19条)。有期雇用は「期間の途中はむしろ強く守られ、出口に弱点がある」という構造だと考えるとわかりやすいでしょう。

5年を超えると「無期転換」の問題が出る

もう一つ、制度を俯瞰するうえで欠かせないのが「無期転換ルール」です(労働契約法18条)。

有期契約が更新され、同じ会社との契約期間が通算5年を超えると、労働者は無期契約への転換を申し込むことができます。ポイントは、5年を超えたら自動的に無期になるのではなく、労働者からの申込みが必要だという点です。そして会社は、申込みを受けたら原則としてこれを拒めません。長く有期で働く人の「いつ雇止めされるかわからない」という不安を減らし、雇用を安定させるための仕組みです。

あわせて押さえておきたいのが、令和6年4月からの労働条件明示ルールの改正です。有期契約の労働者に対して、更新上限の有無と内容、無期転換を申し込める機会、無期転換後の労働条件などを明示することが求められるようになりました。有期で人を雇う際は、契約書(労働条件通知書)がこの明示に対応しているか、確認しておく必要があります。

「正月だけ」「夏休みだけ」のバイトは?

最後に、年末年始や学生の夏休みだけといった短期バイトです。これも法律上は有期雇用で、最低賃金や労働時間などの基本的な保護は当然に及びます。

ただ、こうしたバイトは最初から期間限定で更新を予定していないため、満了による終了に雇止め法理が働く余地はほとんどなく、期間が来れば自然に終了します。注意点は二つで、短期でも期間途中の解雇には「やむを得ない事由」が要ること、そして同じ人を毎年恒例で呼んでいると更新の期待が生まれ、断りにくくなることです。契約書に「更新を予定しない、この期間限りの契約」と明示しておけば、大半の心配は入口で防げます。

まとめ

呼び名で守られ方は決まらず、有期か無期かという契約の中身で決まる ── これが全体を貫く考え方です。解雇や期間途中の打ち切りはどの型でも簡単ではなく、有期でも通算5年を超えれば労働者の申込みで無期に転換できます。人を雇うときは「どう呼ぶか」より、「期間の定めをどうするか」「更新をどう扱うか」を契約書で明確にしておくことが、トラブルを防ぐいちばんの近道です。

参考資料
・労働契約法|e-Gov法令検索
・有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について|厚生労働省
・有期契約労働者の無期転換サイト|厚生労働省
・令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
・パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省

  • 労働契約法|e-Gov法令検索
    解雇、期間途中の解雇、無期転換、雇止めの根拠条文を確認する資料です。特に16条、17条、18条、19条が重要です。
    https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC0000000128
  • 有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について|厚生労働省
    有期契約の更新、雇止め予告、雇止め理由の明示などを説明する資料です。ブログの「雇止め」部分の根拠として使いやすいです。
    https://www.mhlw.go.jp/content/001249464.pdf
  • 有期契約労働者の無期転換サイト|厚生労働省
    通算5年超で無期転換申込権が発生する制度を、一般向けにわかりやすく説明しています。契約社員・パート・アルバイトなど名称を問わない点も説明されています。
    https://muki.mhlw.go.jp/
  • 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省
    更新上限の有無・内容、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件など、最新の労働条件明示ルールの確認に使えます。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html
  • パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省
    「パート」「アルバイト」という呼称ではなく、短時間労働者か、有期雇用労働者かで整理すると明確です。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000046152.html
中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

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