帰化語の氏名と戸籍 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

帰化の申請書には「帰化後の本籍」と「帰化後の氏名」を書く欄があります。許可後のことを先に決めておく欄で、ここをどう書くかで新しい戸籍の形が決まります。日本人と結婚している方の場合、この欄の意味が意外に知られていません。今日は、帰化後の氏と本籍をどこまで自由に決められるのかを整理します。

本籍も氏名も、原則として自由に決められる

法務局の「帰化許可申請のてびき」は、帰化後の本籍と氏名について「いずれも自由に定めることができます」としています。本籍は実在する地番か住居表示であればよく、今住んでいる住所をそのまま本籍にすることもできます。

氏名については、名に使える文字は原則として常用漢字表と戸籍法施行規則別表第三の漢字、ひらがな、カタカナに限られます。氏はそれ以外の正しい日本文字も使えるので、名のほうが制限が厳しい形です。

配偶者の姓を選んでも、自分を筆頭者にできる

よくある誤解が「配偶者の姓を名乗るなら配偶者の戸籍に入るしかない」というものです。

日本人同士なら民法750条で夫婦同氏になりますが、この規定は日本人と外国人の婚姻には適用されません。法務省の戸籍Q&Aも「外国人と婚姻しても日本人の氏は当然には変わりません」と明記しています。日本人配偶者には単独の戸籍が編製され(戸籍法16条3項)、その人が筆頭者になり、外国人配偶者は身分事項欄に記載されるだけです。

つまり婚姻の時点では夫婦の氏が決まっていない。決まるのは帰化して二人とも日本人になったときです。

そこで、たとえば日本人妻と結婚している男性が帰化し、姓を妻と同じ「山田」にしたいとします。妻の戸籍に入る形も取れますが、夫を筆頭者とする新しい戸籍を、本籍地も自由に定めて編製し、そこに妻が入る形も可能です。理由は単純で、帰化する人が定める氏は配偶者から承継したものではなく、自分で新しく創設した氏だからです。字が同じでも、位置づけが違います。

戸籍法6条は夫婦ごとに戸籍を編製すると定めるだけで、どちらが筆頭者になるかまでは決めていません。日本人同士の婚姻では氏を選べば筆頭者も自動的に決まるため連動していると思いがちですが、渉外婚姻からの帰化ではその連動がなく、姓・筆頭者・本籍をそれぞれ別に決められます。

配偶者の同意が前提になる

ただし、この形は帰化する人だけで決められるものではありません。新戸籍を編製して配偶者がそこに入るということは、配偶者が今の戸籍から抜け、法律上の氏も帰化者が定めた氏に変わるということです。呼び名が変わらなくても、戸籍の上では動きます。配偶者の身分に直接影響する以上、事前に話し合い、了解を得ておくことが前提になります。

申請書の書き方にも注意が必要です。「(  の氏)」の欄に「妻の氏」と書くと、妻の戸籍への入籍として処理される可能性があります。帰化する側を筆頭者にしたいなら「夫の氏」として、その字を配偶者と同じ字で定める、という立て方になります。この記載方法を明示した公表資料は見当たらず、実際の取扱いは戸籍実務の運用によりますので、法務局との事前相談で確認しておくのが確実です。

なお、日本国籍の子がいる場合、子は自動的には新戸籍に入りません。別途、入籍届が必要です。

まとめ

帰化後の氏名も本籍も原則として自由です。国際結婚では婚姻時に夫婦の氏が決まっていないため、帰化のときに初めて決めることになり、その分だけ選択の幅があります。配偶者と同じ姓を名乗ることと、配偶者の戸籍に入ることはセットではありません。

戸籍の形は後から変えると手間がかかります。申請書を書く前に、姓・筆頭者・本籍をどうするかを配偶者と話し合い、希望の形が申請書のどの記載に対応するのかを法務局に確認しておくとよいでしょう。

参考

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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