経営・管理廃業の危機? 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

2025年10月の「経営・管理」ビザ厳格化から、半年あまりが過ぎました。資本金3,000万円という数字ばかりが注目されがちですが、外国人経営者の現場では、実際にどのような影響が出ているのでしょうか。

今日は、東京商工リサーチ(TSR)が2026年春に公表した調査結果をファクトの土台にして、厳格化の影響がどこまで広がっているのかを確認し、そのうえで、経営者やそれを支える側が持っておきたい視点を整理します。

半数近くが「何らかの影響」、5.3%が廃業を検討

まず全体像です。この調査は2026年3月末から4月上旬にかけて、日本人経営を除く外国人経営の企業を対象に行われ、299社から回答を得たものです。

結果として、TSRによれば、何らかの影響を受けると答えた企業は45.2%にのぼりました。裏を返せば、54.8%は「外国人による経営だが大きな変化はなかった」と回答しており、影響の有無で見ると、ほぼ半々に割れた格好です。ただ、影響を受けると答えた側の中身を見ると、決して軽くはありません。

  • 増員など要件を満たすよう対応する:27.4%
  • 企業や事業の売却、他社との合併を検討する:11.7%
  • 経営権を日本人や永住資格のある人物へ移譲する:6.3%
  • 廃業を検討する:5.3%

「廃業を検討する」が5.3%(回答299社中16社)に達している点は見逃せません。事業の継続そのものを断念する動きが、現実味を帯び始めているということです。

影響は「中小・零細」と特定の業種に集中している

次に、この影響が誰に強く出ているかです。TSRの分析からは、負担が一様ではなく、規模と業種によって偏っている様子がうかがえます。

規模別では、「影響はない」と答えた割合が、資本金1億円以上の大企業では70.0%だったのに対し、中小企業では53.7%にとどまり、16.3ポイントの差が出ました。もともと資本金が大きい企業は3,000万円の壁をすでに越えているため、影響が小さい——という自然な結果です。

逆に言えば、しわ寄せは小規模・零細の事業者に向かっているということになります。

業種別に見ると、「影響がない」の割合が低い、つまり影響を受けやすいのは、小売業、不動産業、建設業、サービス業などでした。また「廃業を検討する」が高かったのは情報通信業、小売業、サービス業で、いずれも10%を超えています。外国人経営者が多く、少人数・小資本で回している業種ほど、今回の厳格化を重く受け止めている構図が見えてきます。

何が一番効いているのか——最大の壁は資本金

では、複数ある新要件のうち、経営者は何を最も重い負担と感じているのでしょうか。影響を受けたと答えた企業に、その要因を尋ねた設問(複数回答)の結果が、次のとおりです。

影響を与えた要件 挙げた割合
資本金・出資総額(500万円→3,000万円) 44.4%
常勤職員の雇用義務(要件なし→1人以上) 35.5%
日本語能力(要件なし→相当程度) 28.8%
事業計画書の専門家確認(要件なし→専門家の確認) 24.4%
経営者の経歴・学歴(要件なし→経験3年または修士相当) 20.0%

やはり最大の壁は資本金の引き上げでした。この数字の重さは、別のデータからも裏づけられます。TSRによれば、2024年に国内で新しく設立された法人(個人企業等を除く)14万3,367社のうち、資本金1,000万円未満が95.2%を占め、3,000万円以上はわずか1.0%(1,491社)にとどまります。

日本の新設企業の圧倒的多数は、そもそも3,000万円という水準からはるかに小さい資本で立ち上がっている、ということです。

加えてTSRは、外国人経営者が多い小規模なカレー店など「その他の専門料理店」の2025年度の倒産が、過去30年で最多の91件に達したことにも触れています。物価高や人手不足ですでに経営が厳しい業種に、要件厳格化がさらに重なる可能性がある、という指摘です。

データは深刻。でも「即廃業」という話ではない

ここまでの数字だけを見ると、暗い気持ちになる方もいるかもしれません。ですが、慌てて結論を出す前に、制度の側の”逃げ道”も正しく理解しておく必要があります。

TSRの記事自身も触れているとおり、すでに在留資格を持っている人については、施行から3年を経過した後の更新で新基準に適合していなくても、適合の見込みなどを踏まえて判断される仕組みになっています。入管庁のQ&Aも、「3年以内に3,000万円を準備できなければ帰国」という理解を明確に否定しており、経営が良好で、納税を適切に行い、次回更新までに基準を満たす見込みがあれば、その他の在留状況も総合的に考慮して判断するとしています。財産の総額が3,000万円に満たないこと”だけ”を理由に、一律に不許可とするわけではないのです。

つまり、更新前に廃業を即断してしまうのは早計かもしれません。増資、雇用の確保、事業の一部譲渡、あるいは「技術・人文知識・国際業務」など他の在留資格への変更まで、選択肢を並べて比べる時間はまだ残されています。データが示しているのは「準備が要るかどうか」ではなく、「どれだけ早く準備に着手できるか」だと捉えるのが、建設的な向き合い方だと思います。

まとめ

東京商工リサーチの調査は、経営・管理ビザの厳格化が広範に影響を及ぼしていること、とりわけ中小・零細の事業者と特定の業種に負担が集中していること、そして最大の壁が資本金3,000万円であることを、具体的な数字で示しました。廃業を検討する企業が5.3%にのぼるという事実は、制度の副作用として重く受け止める必要があります。

一方で、制度には経過措置と総合判断の余地があり、「即アウト」ではありません。大切なのは、こうしたデータを”焦り”の材料にするのではなく、”逆算”の材料にすることです。

自社の在留期限と更新のタイミングを確認し、区切りまでの時間をどう使うかを早めに設計する——今できる最も確実な備えは、そこにあります。


参考

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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