経営・管理 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

2025年10月の改正で、「経営・管理」ビザの資本金基準が500万円から3,000万円へと引き上げられました。すると、すでにこのビザで在留している方から「今すぐ3,000万円を用意しないと危ないのか」という不安の声が聞かれます。ですが、新しい基準がいつから自分に適用されるのかには、実ははっきりとしたルールがあります。今日は、既にビザをお持ちの方に設けられた「経過措置」の区切りがどこにあり、どの更新申請で初めて新基準に直面するのかを、具体的なスケジュール例でかみ砕いて解説します。

経過措置の”区切り”は「施行後3年」にある

今回の改正には、施行日より前から「経営・管理」で在留している人のための経過措置が置かれています。公表資料でのポイントは次の一文です。「既に在留中の者には、施行後3年を経過した後の最初の在留期間更新許可申請時以降は、原則として改正後の基準への適合を求める」。

つまり、基準が切り替わるタイミングが「施行後3年を経過した後の、最初の更新申請」という一点に定められていることです。施行日は2025年10月16日ですから、そこに3年を足した2028年10月16日が、経過措置と新基準の区切りとなります。

この日より前の更新申請はまだ経過措置の枠内、この日より後の最初の申請から新基準が原則として求められる、という仕組みです。

具体的なスケジュールで見てみる

言葉だけだと分かりにくいので、モデルケースで考えてみましょう。

2025年10月に1年間の許可を得て、その後は毎年10月に1年ずつ更新している方を想定します。この場合、それぞれの更新申請は次のように扱われます。

更新申請の時期 区切り(2028年10月16日)との関係 どう扱われるか
2026年10月 経過措置の枠内
2027年10月 経過措置の枠内
2028年10月 前(約2週間手前) 経過措置の枠内(猶予の最後)
2029年10月 新基準が原則求められる

注目したいのは2028年10月の更新です。3年の区切りをわずか2週間ほど手前で通過するため、これがまだ従前の基準で判断され得る「最後の一回」になります。そして、その次にあたる2029年10月の更新申請が、初めて3,000万円などの新基準を正面から求められる場面になるわけです。

判定は「申請した日」で決まる点も押さえておきましょう。更新申請は在留期限の3か月前から可能ですが、いずれにせよ2028年10月16日より後になされた申請かどうかで線が引かれます。

3年を過ぎても「即アウト」ではない

では、その2029年の更新で3,000万円を用意できていなかったら、直ちに帰国になるのでしょうか。

答えは「いいえ」です。

入管庁のQ&Aは、「3年以内に3,000万円を準備できなければ帰国しなければならないのか」という問いに対し、はっきりと「事実ではありません」と述べています。

具体的には、3年経過後の更新申請の時点で新基準を満たしていなくても、次の三つがそろっていれば、その他の在留状況も総合的に考慮して許否を判断するとしています。

  • 経営状況が良好であること
  • 法人税等の納付義務を適切に履行していること
  • 次回の更新時までに新基準を満たす見込みがあること

そのうえで、財産の総額が3,000万円に満たないこと”だけ”を理由に一律に不許可とするものではない、と明記されています。

つまり金額の未達だけで機械的に切る運用はしない、ということです。ただし、これは無条件の猶予ではありません。救われる余地があるのは、あくまで「次回までに満たす見込み」を示せる場合です。増資や事業拡大の道筋をきちんと描けるかどうかが、実質的な分かれ目になります。

見られているのは金額だけではない

もう一つ、大切な視点があります。

更新審査では、資本金の達否だけでなく、経営者として守るべきルール全般が常に確認されているという点です。

具体的には、労働基準法や最低賃金法といった労働関係法令を守っているか、社会保険・雇用保険・労災保険にきちんと加入し保険料を納めているか、事業に必要な許認可を取得しているか、といった点です。

これらに問題があれば、審査で消極的な要素と評価され、更新が認められないこともあります。3,000万円はあくまで数ある要素の一つであり、日頃のコンプライアンス全体が問われる——そう理解しておくことが大切です。

なお、ここまでは「毎回1年の在留期間で更新している」という前提での話です。途中で3年や5年の在留期間が付与されれば、区切りの見え方も変わってきます。ご自身のスケジュールは、在留カードの期限を基準に一度確認しておくとよいでしょう。

まとめ

既にビザをお持ちの方にとって、新基準が求められるのは「施行後3年(2028年10月16日)を過ぎた後の、最初の更新申請」からです。毎年更新しているモデルケースでは、2029年の更新が初めてその場面になります。そして、その時点で3,000万円に届いていなくても、経営が健全で、納税を適切に行い、次回までに満たす見込みを示せれば、総合的に判断される道が残されています。

「今すぐ用意しないと危ない」と慌てる必要はありませんが、逆に「まだ先の話」と放置してよいものでもありません。区切りまでの数年をどう使い、増資や事業成長の道筋をどう描くか——そこにこそ、今からできる準備の本質があります。


参考

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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