経営・管理_韓国と日本の差 行政書士中村光男事務所

「経営・管理」ビザといえば、2025年10月の改正で資本金の基準が500万円から3,000万円へと引き上げられたことが大きな話題になりました。ただ、この「お金」の要件をめぐっては、日本とよく比較される韓国との間で、実は意味合いが根本から違います。今日は、韓国は「投資家であること」を、日本は「経営者・管理者としてふさわしいこと」を軸にしている——という制度設計の違いを、できるだけかみ砕いて解説します。数字の大小よりも、この”軸の違い”を理解しておくと、制度全体がすっきり見えてきます。

同じ「お金の条件」でも、意味がまるで違う

両国とも、外国人が現地で会社を経営するには一定のお金を求めます。ここだけを見ると、似たような制度に思えます。ところが、その「お金」が誰の・何に対する条件なのかを見ると、方向性はむしろ正反対です。

ざっくり言えば、韓国のお金は「あなた自身がいくら投資したか」を問うもの、日本のお金は「その事業にどれだけの規模があるか」を問うものです。前者は人(申請する本人)に、後者は事業にひもづいています。この一点を押さえるだけで、両制度の性格の違いが見えてきます。

韓国は「投資家であること」を求める

韓国で日本の「経営・管理」に最も近いのが、企業投資ビザ(D-8)と呼ばれるものです。名前に「投資」と入っているとおり、このビザは申請する本人が投資家であることを前提にしています。

具体的には、本人が韓国の会社に一定額(原則として1億ウォン、日本円でおよそ1,000万円)を出資し、その会社の議決権のある株式を10%以上持っていることが求められます。つまり、単に会社を動かしているだけでは足りません。「自分のお金を入れ、株主として持分を持っている」という投資家としての立場が、ビザの土台になっているのです。

言い換えれば、韓国のビザは”その会社のオーナーであること”を強く意識した作りだと言えます。

日本は「経営者・管理者としてふさわしいこと」を求める

一方、日本の「経営・管理」ビザは、申請する本人が出資したかどうかを要件にしていません。基準となる法令の文言も「資本金の額又は出資の総額」——つまり、その事業が持つ規模を示す数字であって、「申請者が自分でいくら出したか」ではないのです。

このため日本では、自分は一円も出資しておらず株式も持っていない人でも、「経営・管理」の対象になり得ます。たとえば、海外の親会社が日本に子会社をつくり、その運営のために送り込まれた経営者・管理者がこれにあたります。本人は投資家ではなく、いわば”経営を任された人”ですが、それでも資格の対象です。3,000万円というお金も、親会社や他の出資者など、誰が用意しても構いません。

この性格は、制度の名前の移り変わりにも表れています。かつては「投資・経営」ビザという名称でしたが、2014年の法改正で「経営・管理」へと改められました。”投資”の語が外れたことは、出資者に限らず、事業を切り盛りする経営者・管理者を正面から受け入れる方向を示したものと理解できます。

そして2025年の改正で強化されたのも、出資の額ではなく、申請者本人の中身でした。一定の経営経験や学歴、日本語能力といった、「経営者・管理者としてふさわしいか」を測る条件が加わったのです。日本は”お金を出した人”ではなく”経営を担うにふさわしい人”を選ぶ方向へ、さらに舵を切ったと言えます。

二つの軸の違いを整理する

ここまでを、簡単な表に整理してみます。

日本「経営・管理」 韓国「企業投資(D-8)」
お金の意味 事業の規模を示す指標 申請者本人の投資額
本人の出資・株式保有 求められない 求められる(議決権10%以上)
主に問われるもの 経営者・管理者としての適格性 投資家としての立場

ただし、日本について一つ注意点があります。「本人の出資は要らない」といっても、お金の”出どころ”は厳しく見られます。そのお金がどこから来て、正当に用意されたものかは審査の対象です。「出資者でなくてよい」ことと「お金の素性を問わない」ことは、まったく別の話だという点は押さえておく必要があります。

まとめ

韓国は「投資家であること」を、日本は「経営者・管理者としてふさわしいこと」を軸にしている——これが両制度の一番の違いです。日本の3,000万円は、あなた自身が投資家である必要があることを意味しません。事業にそれだけの規模があればよく、お金は誰が用意しても構わないのです。その代わり、これからの日本では、経営を担う人物としての経験・能力がいっそう問われるようになりました。数字の大きさに目を奪われがちですが、本当に問われているのは「その事業を経営していく力があるか」だ——そう捉えておくと、制度の狙いが見えやすくなると思います。


参考

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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