前回、外為法の事前届出が必要かどうかは、その会社が営む事業が指定業種に当たるかで決まると書きました。では、その該当性は誰が判断するのでしょうか。役所が事前に「該当します」と決めてくれるわけではありません。今回はその確かめ方を整理します。
公的に確定してくれる仕組みはない
先に結論を書きます。投資の前に、行政庁が「この会社はコア業種に当たる」と確定してくれる手続は用意されていません。
該当性の判断は、一次的には届出義務者である外国投資家が自分の責任で行います。財務大臣および事業所管大臣が審査を行うのは、あくまで届出が提出された後です。届出をしなかった場合、その判断が正しかったかどうかは、後になって問題になります。
一方で、判断の材料を持っているのは会社側です。どんな部材を扱い、どんな役務を提供し、製造まで行うのか、それとも仕入れて売るだけなのか。これを知っているのは会社であって、投資家ではありません。会社が事実を整理して投資家に渡す、という作業がどうしても要ります。
上場会社にはリストがあるが、非上場会社にはない
財務省は、上場企業について事前届出該当性の銘柄リストを公表しています。各社を次の3つに分類したものです。
- 指定業種以外(事後報告業種)の事業のみを営んでいる会社
- 指定業種のうち、コア業種以外の事業のみを営んでいる会社
- 指定業種のうち、コア業種に属する事業を営んでいる会社
このリストは2020年5月に初めて公表され、その後、コア業種を追加する告示改正のたびに改訂されてきました。医療関連、重要鉱物資源、サプライチェーン保全に関する追加など、対象は段階的に広がっています。
ただし、これは上場会社の話です。非上場会社にはリストがありません。設立して間もない会社であれば営業の実績すらありませんので、定款の目的と事業計画から詰めていくことになります。
確かめ方の順序
経済産業省は、実際の確認手順を次のように案内しています。
- 経済産業省の投資管理のページを開く
- 掲載されている指定業種の分類表に、自社の事業内容を当てはめる
- 分類表でも判断が難しければ、まず法律系の士業に相談する
- それでも迷う場合は、経済産業省の投資管理室(bzl-toushi-kanri-jt@meti.go.jp)にメールで照会する
この照会窓口は、投資を受ける立場からの疑問や相談も受け付けるとされています。自社が届出義務者でなくても問い合わせてよい、ということです。
なお、財務省および各財務局にも相談窓口が置かれていますが、業種の該当性そのものについては各事業所管省庁へ、という整理になっています。半導体や機械に関する分野であれば経済産業省、医療分野であれば厚生労働省、というように所管が分かれます。財務省のサイトに事業所管省庁の照会先一覧が掲載されています。
照会の回答は目安であって、確認処分ではない
ここは押さえておきたい点です。省庁からの回答は、告示の解釈についての行政の考えを示すものであって、法的な効力をもつ確認ではありません。
だからこそ、照会のやり取りを記録として残すことに意味があります。いつ、どの部署に、どういう事実関係を前提として尋ね、どう回答されたか。この記録が残っていれば、後から経緯を説明できます。
逆に言えば、前提とした事実が変われば、回答の前提も崩れます。「取扱品目が変わった」「製造も始めた」といった変化があれば、改めて確認が必要になります。
判断が分かれやすいところ
実際に迷いやすいのは、次のような点です。
製造か、卸売か。 同じ製品を扱っていても、自社で製造するのか、仕入れて販売するだけなのかで扱いが変わることがあります。指定業種の分類は日本標準産業分類を土台にしていますので、この区別は結論に影響します。
定款の目的と、実際に営む事業のずれ。 定款の事業目的は、将来の展開を見込んで広めに書かれるのが通例です。しかし判断の対象になるのは、実際に営む事業、または営むことが見込まれる事業です。定款に書いてあるから該当する、書いていないから該当しない、という単純な話ではありません。
一つでも当たれば対象になる。 会社が複数の事業を営んでいる場合、そのうち一つでも指定業種に当たる事業があれば、その会社への投資は事前届出の対象になります。主力事業かどうかは関係ありません。
事業を追加したとき。 新しい分野に進出した後で外国投資家からの出資を受けるのであれば、その時点で改めて確認が必要です。前回調べたときは該当しなかった、という記憶に頼るのは危険です。
まとめ
指定業種やコア業種への該当性は、行政庁が事前に確定してくれるものではなく、届出義務者である外国投資家が自ら判断します。ただし判断の材料をそろえられるのは会社側で、分類表への当てはめと、必要に応じた所管省庁への照会が実務の中心になります。省庁の回答は目安であり、その前提となった事実とあわせて記録に残しておくことが大切です。
次回は、この一連の流れの中で、行政書士に頼めることと頼めないことを整理します。
参考
- 財務省「対内直接投資審査制度について」(上場会社の該当性リスト、事業所管省庁の照会先一覧へのリンクを掲載) https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/fdi/index.htm
- 経済産業省「対内直接投資審査制度について(外為法)」 https://www.meti.go.jp/policy/anpo/toushishinsaseido.pdf
- 日本銀行「外為法Q&A(対内直接投資・特定取得編)」 https://www.boj.or.jp/about/services/tame/faq/t_naito.htm
この記事を書いた人
行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)
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