永住許可 手数料 杉並区 | 行政書士中村光男事務所
  • 在留資格の手続にかかる手数料が、この秋、大きく変わります。出入国在留管理庁は令和8年7月3日、入管法施行令の改正案を公表し、パブリックコメントを開始しました。永住許可が1万円から20万円へ、在留資格変更・在留期間更新が一律6,000円から最大7万5,000円へ。数字の大きさばかりが報じられていますが、今回の改定は「なぜその額なのか」という積算の考え方まで公表されている点に特徴があります。今日は、公表資料に沿って、金額の全体像、積算の論理、諸外国との比較、減額の対象、そして実務上いちばん重要な経過措置を整理します。

    改定後の金額 ― 在留期間で階段状に上がる

    これまで在留資格変更許可と在留期間更新許可の手数料は、許可される在留期間にかかわらず窓口6,000円・オンライン5,500円の一律でした。改定後は、決定される在留期間に応じた階段状の金額に変わります。

    許可期間 窓口 オンライン
    3月以下 10,000円 10,000円
    3月超6月以下 18,000円 15,000円
    6月超1年未満 25,000円 21,000円
    1年 33,000円 27,000円
    1年超3年未満 48,000円 42,000円
    3年以上5年未満 64,000円 56,000円
    5年以上 75,000円 65,000円

    永住許可は、窓口申請で20万円です。現行1万円ですから、20倍の引上げになります。

    窓口とオンラインの差は3,000円から1万円。現行はわずか500円差でしたから、オンラインへの誘導は明確に強められました。ただし3月以下の在留期間では両者に差がなく、永住許可は窓口申請のみの扱いです。「オンラインなら常に安い」という単純な話ではありません。

    そして見落とされがちなのが、手数料は申請時ではなく許可時に納付するものだという点です。申請の段階で金額が確定するわけではなく、実際に何年の在留期間が決定されたかで納付額が決まります。1年更新が続いている方と3年許可が出る方とでは、負担がはっきり分かれることになります。

    20万円という数字の根拠

    入管庁は「在留許可手数料の積算について(案)」という資料を公表し、金額の内訳を示しています。ここを読むと、20万円という数字が何から出てきたのかが分かります。

    在留資格変更・更新の手数料は、次の三つの要素の合算です。

    • 審査に要する実費:人件費が約6,300円、システム開発・運用費などの物件費が約3,300円で、合計約1万円
    • 応益的要素:出入国在留管理に要する費用の年間総額を572億円程度と試算し、これを中長期在留外国人数(永住者・特別永住者を除く)約291万人で割った、1人あたり年間約2万円
    • 政策的要素:オンライン申請を促すための、窓口との差額3,000円〜1万円

    在留期間5年の場合で見ると、応益的要素は単純計算なら5年×2万円=10万円ですが、在留状況が良好な方への優遇措置として6万円に圧縮されます。そこに実費1万円を足し、オンライン促進分5,000円を窓口側に上乗せして7万5,000円、オンライン側から差し引いて6万5,000円、という組み立てです。在留期間が長くなるほど1年あたりの負担が軽くなる設計は、意図的なものだということになります。

    永住許可の20万円も同じ発想です。審査に時間を要することから実費を2万円とし、永住許可後の在留期間の平均が13.5年程度であることを踏まえ、5年分の応益的要素6万円の3倍にあたる18万円を上乗せする。合計で20万円、という積算です。

    なお、手数料の上限額は昭和56年以来1万円のまま据え置かれてきました。その間、在留外国人数は昭和56年末の約79万人から令和7年末には約413万人へと、およそ5.2倍に増えています。改正の背景として挙げられているのは、この40年余りの変化です。

    諸外国との比較をどう読むか

    改正法は、手数料の額を定めるにあたって「諸外国における同種の手数料の額」も勘案するとしています。入管庁はこれを、日本の額が「不当に高くないか、あるいは不当に安くないかを検討する際の指標」と説明しています。

    ところが、公表された調査結果を見ると、就労資格の滞在許可にかかる費用は国によって大きく開いています。

    就労資格の費用等 許可され得る期間
    アメリカ 約110万円 最長3年
    イギリス 約74万5,000円 1年
    カナダ 約13万3,000円 上限の定めなし
    フランス 約5万8,000円 最長1年
    イタリア 約2万9,000円 最長2年
    ドイツ 約1万6,000円 最長4年
    韓国 約1万1,000円 最長3年

    110万円から1万1,000円まで、実に100倍の幅があります。この中では、日本の水準はほぼどこにでも位置づけられます。比較する国の選び方次第で結論が動く以上、「諸外国との比較」は歯止めとしてあまり強く働きません。

    さらに注意すべきは、誰が払うのかという点です。入管庁の資料自身が「費用等の種類に応じて、負担者が外国人となる場合と雇用主となる場合がある」と注記しています。アメリカやイギリスの高額な数字は、相当部分が雇用主の負担です。日本の手数料は、本人が納付します。額面だけを並べた比較は、この違いを覆い隠します。

    そして永住については、韓国が約2万2,000円であるのに対し、日本の政令案は20万円。9倍の開きです。日本が人材の獲得で実際に競っている相手は、アメリカやイギリスよりもむしろ東アジアの近隣国でしょう。韓国が手数料を定める際の考慮要素として挙げているのは「歳入の増減に与える影響」「行政運営に係る費用」ですから、発想そのものは日本の応益的要素と大きく違うわけではありません。同じような出発点から、なぜ9倍の差が生じるのか。この点について、公表資料は正面から答えていないように見えます。

    減額・免除は、かなり絞られている

    「20万円は払えない」という声に対して、政令案は減額の枠組みを用意しています。ただし対象はかなり限定的です。

    減額の対象となるのは、生活保護法6条2項の要保護者に準ずる程度に生活に困窮していると認められる者であり、かつ、難民や補完的保護対象者の認定を受けているなど人道上の配慮を要する者です。入管庁のQ&Aは、この二つの要件を両方満たす必要があり、どちらか一方に該当するだけでは対象にならないと明言しています。該当した場合、変更・更新(3月超の在留期間が決定される場合)は1万円まで、永住許可は2万円まで減額できます。免除の対象は、外交・公用の在留資格への変更を受ける者などに限られます。

    つまり、「経済的に苦しい」というだけでは減額されません。入管庁は、手数料を納付できないほどの経済状況であればそもそも在留資格に該当する活動を継続できないと認められるため、原則として在留許可を受けられない、という論理を示しています。減額はあくまで、人道的保護の必要性と重なった場合の例外だということです。

    施行日と経過措置 ― 9月30日までが分かれ目

    施行日は令和8年10月1日が予定されています。そして実務上もっとも重要なのが経過措置です。

    入管庁のQ&Aは、令和8年10月1日より前に変更・更新・永住の申請をしていた外国人が同日以後に許可を受ける場合、納付する手数料は改正前の額になると明記しています。基準は「許可の日」ではなく「申請の日」です。

    永住許可でいえば、差額は19万円。9月30日までに受理されていれば1万円、10月1日以降の申請なら20万円ということになります。家族4人で永住申請を考えている世帯であれば、4万円と80万円の違いです。この差は、申請時期を検討する十分な理由になります。

    もっとも、永住許可申請は「出せばよい」手続ではありません。収入、納税、年金・健康保険の納付状況、在留状況、出国日数、身元保証人などが総合的に審査されます。準備が整わないまま駆け込みで申請すれば、残るのは不許可歴だけです。手数料の差額は大きいものの、判断すべきは「今出せるか」ではなく「今、許可を狙える状態か」です。

    まとめ

    今回の政令案は、在留手続の手数料を、実費に加えて「在留管理という行政サービスからの受益」を織り込んだ金額へと組み替えるものです。金額の階段化、オンライン申請の優遇、長期在留者への割引的な設計は、いずれもその発想から出ています。

    実務的な要点は三つに集約されます。第一に、納付額は決定される在留期間で変わるため、申請前に見込みを立てておくこと。第二に、減額の対象は生活困窮と人道上の配慮の両方を満たす場合に限られ、一般の方の救済策ではないこと。第三に、令和8年10月1日より前に申請していれば改正前の額が適用されるため、永住許可を検討している方は申請時期の判断が費用に直結すること。

    そして、諸外国との比較は「日本の額を正当化する材料」としても「高すぎると批判する材料」としても使えてしまう、幅の広いものだという点も、あわせて頭に置いておきたいところです。

    なお、現時点ではあくまで政令案の段階で、パブリックコメントを経て確定します。最終的な金額や施行日は、公布される政令で必ずご確認ください。

    参考

中村光男

この記事を書いた人

行政書士中村光男事務所 代表 中村光男(行政書士・防災士・AFP)

東京都杉並区 TEL 03-6356-3571

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