
経営・管理ビザ2025年7月10日より、カテゴリー3・4に該当する中小規模の事業者向けに、経営・管理ビザ更新時の「事業活動内容説明文書(説明書)」の提出が義務化されました。
この制度になってから日も浅く、一体何を書けばいいのかと悩む方も多いと思います。
「説明書」が更新時に必要とされる背景
2025年7月までは、経営・管理の在留期間更新許可申請で、必要とされているのは、「在留期間更新許可申請書、写真、パスポートと在留カード(提示)、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(写し)*注1、直近の決算文書の写し、住民税の課税証明及び納税証明、外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料*注2」と、比較的あっさりしたものでした。
注1⇒カテゴリー2と3の会社のみ ㊟2⇒カテゴリー4の会社のみ
2025年7月以降は、カテゴリー3と4の会社には、これに加えて、説明書(直近の在留期間における事業の経営又は管理に関する活動内容を具体的に説明する文書)が加わったことになります。
通知文書

求められる資料(2025年7月17日以降の経営・管理の在留期間更新)

説明書に何を記載する?
では何を書けばいいかというと、特に、入管庁のHP等では、指示がありません。ヒントになるのは、「前回の在留申請時から変更がある場合は、その理由の説明を含む」と記載されていることくらいです。
様式は、自由でいいとされています。
ですので、このような制度背景となった事情を理解し、審査する側の問題意識に答えるような記述をするべきであると考えられます。
審査サイドの問題意識
このような制度改定の背景には、昨今の、世間の在留資格「経営・管理」への厳しい視線があるものと思われます。したがって、説明書では、これらの問題意識を意識して作成すべきです。また、期間更新申請の時点でも、行っている事業についても、経営者自身についても、経営・管理の「在留資格該当性」も「上陸基準」も満たしていることをアピールすべきです。
最近の審査サイドの問題意識
1.事業実態の把握を強化したい(休眠会社、代表者が経営に関わっていないケースの排除)
2.不正・偽装防止(経営・管理ビザの名義貸しや形だけの会社運営の排除)
3.審査の透明性・説明責任の強化(申請者から、前回申請時と比べて何が変わったか、また活動内容の問題点や改善点の情報を得たい)
4.経営・管理の制度厳格化(出資金最低ライン引き上げ、従業員要件の必須化、日本語要件新設などの動き)の流れの一環
さらに、そもそも、経営・管理の在留期間更新許可申請で、入管庁が重視しているのは「経営・管理」の在留資格該当性と上陸基準を、申請者が満たしているか?という視点です。
経営・管理の在留資格該当性と上陸基準
一方で、在留資格の在留期間更新許可の制度目的は、その在留資格の要件(在留資格該当性)と、その在留資格を取得するための条件(これを上陸基準と呼びます)が満たされていることをチェックすることです。
言葉の意味は、以下のとおりです。
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在留資格該当性 = 活動の種類がどの在留資格に当てはまるかを確認すること。
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上陸基準 = その在留資格を実際に取るために満たすべき条件。
経営・管理の在留資格該当性と上陸許可基準は次のようなものです。
【在留資格該当性】
本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)
⇒簡単に言い換えれば、
日本国内で貿易やその他の事業を経営したり、その事業の管理に従事する活動のこと(除く、弁護士や税理士などの資格の必要な事業)。
【上陸基準】
①事業所の確保
日本国内に、申請する事業を運営するための事務所・オフィスがあること。
まだ事業を開始していない場合でも、事業を行うための施設をすでに確保していること。
②事業規模の要件
申請する事業は、次のいずれかに該当していること。
(イ)経営者や管理者以外に、日本に住む常勤職員を2名以上雇用して運営されていること(ただし特定の在留資格者は除く)。
(ロ)資本金または出資額が500万円以上であること。
(ハ)上記イまたはロと同等と認められる規模であること。
③申請人の経営管理能力と待遇
申請人自身が事業の管理に従事しようとする場合には、経営または管理の経験が3年以上あること(大学院で経営やマネジメントを専攻した期間も含む)。
さらに、日本人が同じ立場で働く場合と同等以上の報酬を受けること。
※上陸基準は生の文が分かりにくいので、言い換えています(原本⇒https://www.moj.go.jp/isa/content/001367220.pdf)
説明書の内容
具体的に、入管の窓口に、経営・管理の期間更新で新たに求められるようになった「説明書」に何を書けばいいかを、質問しても、回答はまちまちです。
「詳しく」という人もいれば、「簡単に」という人もいます。しかし、審査する方の立場に立てば、なるべく簡明かつ、審査官が欲しい情報がなるべく盛られた内容がいいはずですので、A4で1から2枚で、下記の項目を抑えつつ、記載するのがよいと思います。
また、ある程度、簡明にして、追加資料が求められることもあるかと思いますが、その際は、その資料を速やかに提出して、審査に協力する姿勢が重要と思います。
下記は、「最近の問題意識」「在留資格該当性・上陸基準」を踏まえて説明書の項目案です。これらの全てでなくてもいいですが、該当事実のある項目は数行でも触れたらいいかと思います。
説明書項目の例(全てに触れる必要はないです)
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表題・提出情報
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表題:経営・管理 在留期間更新用「事業活動内容説明書」
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申請人氏名・在留カード番号、会社名・所在地、提出日
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会社・事業の概要(該当性の土台)
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事業内容・主要顧客層・提供価値
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直近期間の売上構成の概略(%やレンジで可)
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申請人の役割と関与(名義貸し対策)
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役職・権限(決裁範囲、署名権)
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週あたりの関与時間・主要業務(例:資金繰り、営業戦略、人事評価、許認可対応 等)
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定例会議・意思決定の実例(1–2個)
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直近在留期間の主な活動実績(実体把握)
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期間内の「経営・管理」行為の具体例(案件数・取引先数・契約更新など数で示すと◎)
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KPI推移の要約(例:売上レンジ、商談件数、在庫回転、滞納ゼロ など2–4点)
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事務所・設備の状況(上陸基準①)
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所在地・面積・用途(賃貸なら物件名・契約継続状況)
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固定電話・事業用回線・保管設備など業態に必要な実物
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人員体制・外部協力(上陸基準②)
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充足パターンの明示:
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イ:常勤2名以上の雇用実態(雇用形態・勤務実績の概略)
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ロ:資本金/出資額500万円以上(維持状況)
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ハ:同等規模の具体根拠(売上・投資・取引量等の客観指標)
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業務委託の範囲(管理行為の中核は申請人が担っている旨)
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資金繰り・収支の見通し(継続性の説明)
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直近の資金調達・返済・運転資金の回し方
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次期の売上計画(レンジ)とコスト管理の要点
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コンプライアンス状況(透明性)
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税務(申告・納付)/社会保険・労働法令/業法許認可の遵守状況
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反社排除・情報管理ポリシーの有無(1行で可)
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前回申請からの変更点と理由(記載必要)
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役員・資本・所在地・事業ライン・人員の変動
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変更の背景(市場変化/リスク対応)と結果
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リスクと改善措置
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直近課題(例:集客単価上昇、仕入先集中)
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打ち手(価格改定、販路多角化、原価見直し等)
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今後6–12か月の計画(実効性)
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主要KPI(例:月商レンジ、解約率、回収日数)とマイルストーン
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該当性・上陸基準の自己点検
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該当性:日本国内で事業の経営又は管理に従事している事実の総括
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上陸基準①②③のどれをどう満たすかを箇条書きで明示
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①事務所確保:住所/契約継続
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②事業規模:イ・ロ・ハの該当パターン
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③経験・待遇:経営経験(年数)/報酬が日本人同等以上
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参照・添付資料一覧
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例:賃貸借契約書写し、主要契約・請求書の抜粋、常勤者の雇用契約・勤怠サマリ、税・社保の納付関係、許認可写し、販促物や店舗・設備写真 等
最後に
経営・管理の期間更新の際にカテゴリー3,4の会社が提出する理由書については、実例の積み上げがまだ少なく、定番の内容というのはまだ固まっていない状況です。経営・管理の在留資格をいただいて、実態のある事業経営をしている様子を、審査官にわかりやすく伝える文書であれば、構成や様式は問われないと思います。上記の整理が、少しでもご参考になれば幸いです。
参考 ⇒ 「在留資格 「経営・管理」の在留期間更新申請で必要書類が追加された背景」