特定技能外国人 建設業特有の上乗せ規制とは

特定技能の在留資格を利用して外国人を建設業で雇用する場合、他の業界と比べて特有の注意点があります。ここでは、その注意点を解説します。

建設業の上乗せ規制とは

特定技能外国人を受け入れる建設業の企業には、業種横断の基準に加え、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める特定技能所属機関(受入企業)の基準を設定が設定されています。

これを「建設業の上乗せ規制」といいます。具体的には、以下の7つの基準において、建設分野の受入企業は、受入計画を作成し、国土交通大臣による審査・認定を受けることが必要です。

■受入計画の認定基準
①受入企業は建設業法第3条の許可を受けていること
②受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録
③特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入及び当該法人が策定する行動規範の遵守
④特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上、安定的な賃金支払い、技能習熟に応じた昇給
⑤賃金等の契約上の重要事項の書面での事前説明(外国人が十分に理解できる言語)
⑥1号特定技能外国人に対し、受入れ後、国土交通大臣が指定する講習または研修を受講させること
⑦国又は適正就労監理機関による受入計画の適正な履行に係る巡回指導の受入れ等

建設業における特定技能制度の概要 杉並区 | 行政書士中村光男事務所
建設業における特定技能制度の概要(国土交通省)

具体的な注意点

相当程度の知識や経験が必要な業務を担当してもらう

特定技能は、外国人に単純な作業を手伝ってもらうための制度ではないことがポイントです。担当してもらう業務は、1号特定技能外国人には「相当程度の知識または経験を要する業務」、2号特定技能外国人には「熟練した技能を要する業務」であることが必要です。

 建設特定技能受入計画の策定

建設業では、外国人を特定技能で雇用するために「建設特定技能受入計画」を作成する必要があります。この計画は、国に提出し承認を得ることが求められます。計画には、雇用条件や技能向上のための支援策などを詳細に記載することが大切です。

建設業許可を受けていること

建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、建設業第3条の許可(建設業許可)を得ていることが必要です。税込み500万円未満の軽微な工事しか請け負わない業者も、特定技能外国人を受け入れるためには、建設業許可を得ることが条件となります。

建設キャリアアップシステムへの登録

外国人を雇用する際には、企業自体が「建設キャリアアップシステム」に登録していることが求められます。このシステムを通じて、会社を変わったとしても、客観的に技能者の職歴や資格などを管理し、外国人労働者のキャリア形成をサポートすることが可能となります。

建設業人材機構(JAC)の構成員になっていること

建設人材機構(JAC)は、特定技能外国人の受け入れのための、海外での試験や教育訓練、就職あっせんを行う団体です。特定技能外国人を受け入れる建設業者は、建設人材機構(JAC)の直接的に構成員(賛助会員)になる方法と、すでに正会員となっている業界団体に加入して間接的に構成員になる方法を選択する必要があります。

国内人材の採用措置

外国人労働者を受け入れる前に、国内の人材を積極的に採用する措置を講じているかどうかが問われます。日本国内で人手不足が深刻な場合にのみ、外国人を受け入れる方針が求められます。具体的には、直近1年以内にハローワークに申請した求人申し込み書類などが審査されます。

報酬等の労働条件の適正化

特定技能で働く外国人の労働条件は、同じ仕事をする日本人と同等でなければなりません。具体的には、賃金や労働時間、福利厚生などを適正に設定し、差別がないようにすることが重要です。また、月給制であること、技能者としてのレベルアップに従い昇給することなどが、計画に盛り込まれていることが必要となります。賃金等の契約上の重要事項は、書面での事前説明(外国人が十分に理解できる言語)が求められます。

労働環境の包括的な配慮

外国人労働者が働く労働環境については、労働基準法や安全衛生法に従い、適正に維持されることが必須です。特に、過酷な労働環境や安全管理が不十分でないか、定期的に確認することが求められます。適正な指導・育成を行うため、特定技能外国人を受け入れる人数は、常勤職員数の範囲内となります。

安全衛生や技能習得に関する教育

建設現場は他の業種に比べて危険が伴うことが多いため、外国人労働者に対しては特に安全衛生の教育を徹底する必要があります。また、技能向上を目的としたトレーニングも定期的に提供することが求められます。

登録機関への定期的な報告

外国人労働者の受け入れについては、登録機関に対して定期的な報告が必要です。労働条件の適正化や技能習得状況を監視し、問題がないかどうかを確認する役割を果たします。また、技能検定の合格を目指した計画的な教育が求められます。

これらの注意点を守ることで、建設業における特定技能外国人の雇用が円滑に進み、安心して労働環境を提供することができます。企業としても、適切な対応を行うことで、外国人労働者の能力を最大限に引き出し、共に成長する関係を築くことが重要です。

参考

建設分野における外国人材の受入れ

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