熟練した技能を要する特定技能2号について、対象が大幅に追加されました。
今までの特定技能2号の対象は、「建設分野」及び「造船・舶用工業分野の溶接区分」のみが対象でしたが、2023年8月31日からの特定技能2号の対象は「ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の9分野と、造船・舶用工業分野のうち溶接区分以外の業務区分全て」とすることとしました。
つまり、特定技能1号の対象業種12のうち、介護分野以外はすべて、特定技能2号の対象になりました。
特定技能2号は、永住や家族滞在も可能ですので、これは大きな転換です。背景には経団連などの提言のあったようです。
おさらい 在留資格「特定技能」とは
- 特定技能1号は、特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
- 特定技能2号は、特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。
- 在留期間が通算で上限5年までであること
- 受入れ機関(又は登録支援機関)による一連のサポートが義務付けられていること
- 受入れに際しては技能及び日本語能力を試験によって確認すること
特定技能1号と2号の対象分野
特定産業分野(12分野)
①介護 ②ビルクリーニング ③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 ④建設 ⑤造船・舶用工業 ⑥自動車整備 ⑦航空 ⑧宿泊 ⑨農業 ⑩漁業 ⑪飲食料品製造業 ⑫外食業
2023年8月31日まで
特定技能2号の業種は、これまでは「造船」「建設」の2業種のみ
2023年8月31日以降
特定技能2号の業種は、これまでは「介護」以外の全て
介護分野については、現行の専門的・技術的分野の在留資格「介護」があることから、特定技能2号の対象分野とはしていません。
特定技能1号と2号の差
下表の様に、特定技能1号と異なり、2号は、5年で帰国する必要がなく、家族の帯同も可能となります。これは大きなメリットです。2号の対象業種が大幅に拡大したので、今後、2号を目指す外国人の数も増加されることが予想されます。
特定技能1号 | 特定技能2号 | |
在留期間 | 1年、6か月又は4か月ごとの更新、通算で上限5年まで | 3年、1年又は6か月ごとの更新 |
技能水準 | 試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等で確認 |
日本語能力水準 | 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除) | 試験等での確認は不要 |
家族の帯同 | 基本的に認めない | 要件を満たせば可能(配偶者、子) |
受入れ機関又は登録支援機関による支援 | 支援の対象 | 支援の対象外 |
なぜ特定技能2号を拡大したのか
以上のように、外国人労働者の事実上の永住につながる特定技能2号の対象分野が大幅に広がることになりましたた。これは、深刻な人手不足に直面する業界の声に押されたものと言われています。
例えば、経団連は、2022年に次のような提言を行っていました。
特定技能2号は将来的に永住権の取得が可能であり、企業としても幹部登用等も見据えた中長期的視点から人材育成ができることから、優れた人材の定着を促進したい産業において重要な役割を持つ。しかし、法律上の在留資格は整備されたにもかかわらず、2年以上経っても具体的な制度設計はなされていない。特定技能1号から2号への変更を目指す外国人や雇用者にとっては許可基準が早期に明確になることが望ましく、「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」に2号の受入に関する規定を設けるべきである。
また、現在は2業種のみ2号が認められており、選定基準および選定プロセスの透明性を確保したうえで、他業種に拡大すべきである。 (―2030年に向けた外国人政策のあり方― より)
今後、2号はどのようになっていくのか注目です。とくに「熟練した技能」という要件がありますので、2号がどれだけ増えるかは今後の運用にかかる部分が大となるようです。
参考HP 特定技能総合支援サイト 出入国在留管理庁「特定技能」
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