
特定技能の対象分野が拡大へ!物流倉庫、廃棄物処理、リネンサプライが新たに追加の方向へ
深刻な人手不足が続く日本で、外国人労働者の活躍の場がさらに広がります。
新聞報道によれば、政府は、特定の技能を持つ外国人が就労できる在留資格「特定技能」の対象分野を、現在の16業種から19業種へと拡大する方針を固めました。
新たに追加されるのは、物流倉庫の管理、廃棄物処理、そしてホテルなどで使われるリネン製品の供給の3分野です。
この方針は近く有識者会議で示され、2025年12月の閣議決定を目指し、2027年にも企業が新たな分野で特定技能の外国人労働者の採用を始められるよう、在留資格制度が変更される見込みとのことです。
特定技能制度とは?人手不足解消の切り札
改めて、「特定技能」制度について解説します。
この制度は、生産性向上や国内人材の確保に取り組んでもなお人手不足が深刻な分野において、一定の技能を持つ外国人を受け入れることを目的として、2019年に創設されました。
現在、対象となっているのは以下の16業種です。
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、自動車運送業
2024年12月末時点で、約28万人の外国人がこの制度を利用して日本で働いています。
「1号」と「2号」:段階的な受け入れ
特定技能には、求められる技術の習熟度合いに応じて「1号」と「2号」の区分があります。
特定技能1号: 一定の技能を持ち、日本語能力も基本的なレベルが求められます。在留期間は通算で5年間と定められています。
特定技能2号: より熟練した技能が求められ、在留期間の上限はありません。条件を満たせば家族の帯同も可能です。
今回追加される方向となった物流倉庫、廃棄物処理、リネン製品供給の3業種については、まずは特定技能1号からの受け入れが開始されると見られています。
なぜこの3分野が追加されるのか?
今回新たに追加される3分野は、いずれも有効求人倍率が高いことが特徴です。2023年度のデータを見ると、物流倉庫が1.92倍、廃棄物処理が3.06倍、リネン製品の供給業に至っては4.30倍と、企業が求人を出してもなかなか人が集まらない状況が続いています。
これらの分野では、研修などをしっかりと行えば、外国人労働者の能力を十分に活かせると見込まれています。
既存分野でも業務区分の拡大を検討
今回の対象分野の拡大に加えて、既存の分野においても業務区分の追加が検討されています。例えば、工業製品製造業では、これまで対象外だった電線・ケーブル、プレハブ、家具などの製造も含まれるようになる可能性があります。
外国人労働者受け入れを巡る最近の動き
政府は、外国人労働者の受け入れ体制について、近年様々な見直しを進めています。
・特定技能の受け入れ上限の拡大:
⇒2024年度からの5年間で、新たに82万人の受け入れ上限が設定されました。
・新たな対象分野の追加
⇒自動車運送業、鉄道など4分野が新たに追加されています。
・技能実習制度の廃止と「育成就労」制度の創設
⇒2027年4月からは、これまで途上国への技術移転を目的としていた技能実習制度が廃止され、新たな「育成就労」制度が始まります。この制度では、原則3年間でスキルを習得し、特定技能への移行が想定されており、原則禁止だった転職制限も緩和される予定です。技能実習制度は、人手不足を補うための安価な労働力として活用される側面がありましたが、劣悪な労働環境や失踪などの問題も指摘され、人権侵害の批判も出ていました。
新しい「育成就労」制度は17業種が対象となり、特定技能の19業種(自動車運送業と航空分野を含む)と合わせて、外国人労働者の活躍の場がさらに広がることが期待されます。
まとめ
今回の特定技能の対象分野拡大は、人手不足に悩む多くの企業にとって朗報となるでしょう。今後、具体的な制度設計や運用について、引き続き注目していく必要があります。
参考:日経新聞2025年5月13日(火)