私事ですが、10年ほど前に、スペインの空港で、入国手続きをして空港ロビーに入った後、ドアを間違って開けてもとに戻ってしまい、なぜかまた出国してしまったという経験があります。このときは、再度、入国しなければならないかったのですが、この場合は、空港が出国と入国の境でした。
ところで、日本では、外国人が日本の「領海又は領空に入ること」を入国、日本の「領土内に足を踏み入れること」を上陸と言います。
したがって、出入国港で、いわゆる「入国審査」の結果、外国人に与えられる入国・在留のための許可のことを入管法上は「上陸許可」と言います。
外国と国境を接している国では、入国とは外国人が国境を越えて領土内に入ることですので、さらに上陸という概念を区別する必要はないでしょう。しかし、四方を海に囲まれた我が国では、両者を区別します。
今回は、外国人の入国と、日本人の帰国について、杉並区の行政書士が整理します。 (トップの写真は航空自衛隊HPより)
外国人の入国と上陸
外国と国境を陸続きで接する国では、外国人が国境を越えて領土内に入ることは「入国」イコール「上陸」ですかが、日本は周囲が海であることから、外国人が日本の領域(領海・領空)に入ることを「入国」、外国人が領土に入ることを「上陸」と2段階に区別しています。
外国人が日本に上陸する場合には許可を得ることが必要です。出入国港において、いわゆる「入国審査」を行って外国人に与えられる入国・在留のための許可を「上陸許可」と言います。
【領海】【領空】【領土】とは(下図はNHK for school)
領海とは、「領海の基線からその外側12海里(約22km)の線までの海域で、沿岸国の主権は、領海に及びます。」(海上保安庁HP)、領空とは「領土及び領海(海岸線から12海里(約22km)の範囲)の上空のことをいいます。領空の内側を許可なく自由に航行することは国際法上認められていません。」(航空自衛隊HP)と説明されます。
入管法でも、入国と上陸を別個の概念として区別して、この2つに対してそれぞれ異なった規制をしています。
【入国条件】 ⇒ 「有効な旅券を所持すべきこと」等という入国条件を定め,この入国条件に違反した外国人は規制の対象となるという法制になっています。
根拠法は、入管法3条(外国人の上陸)です。ここでは、次のように規定しています。1項2号を見ると、たとえ有効な旅券を持っていても、その後に控える入国審査を何とか免れようという密入国者を意図している人は、そもそも入国ができません・・・という規定の仕方です。
第3条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に入つてはならない。
一 有効な旅券を所持しない者(有効な乗員手帳を所持する乗員を除く。)
二 入国審査官から上陸許可の証印若しくは第9条第4項の規定による記録又は上陸の許可(以下「上陸の許可等」という。)を受けないで本邦に上陸する目的を有する者(前号に掲げる者を除く。)
【上陸条件】⇒ 日本に上陸し在留しようとする外国人については,日本の社会と実質的なかかわりを持つことから,これを認めるか否かについて上陸のための審査を行うことが必要となります。
日本の領海や領空内に入ったとしても,日本に上陸はしないで、領海や領空を通過するだけの外国人も存在します。そこで、外国人からの上陸申請をもって審査し上陸の許否を決定がなされることになります。
根拠法は、入管法6条です。
第6条 本邦に上陸しようとする外国人(乗員を除く。以下この節において同じ。)は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。以下、略。
2 前項本文の外国人は、その者が上陸しようとする出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸のための審査を受けなければならない。
下記は、出入国在留管理庁のHP( http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/kanri/nyukoku_flow.html )から引用したフロー図です。
日本人の帰国
これに対し、日本人については、帰国の権利が保障されているので、入国と上陸という区別はありません。日本人は、日本の領域内に入り、かつ上陸することを「帰国」という概念を設けて、帰国の確認が行われます。
これについても、出入国在留管理庁のHPから図を引用します。
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