世界的な金利上昇・インフレ加速で、株価の先行きは不透明です。このようなとき、世間では、相対的には安心感のあるのがバリュー株(割安株)投資と言われているようです。
そこで、たまたまネット記事で見かけた、2022年1月時点でのバリュー株として例示されていた株式を、仮にその時購入していたら、現在どうなっていたかを試算してみました(実際には購入していません・・・。頭の体操です)。
結論としては、冒頭の言葉に、ある程度の合理性はあると思った次第です。
まず、用語を整理します。
■バリュー株とグロース株
バリュー株⇒ 本来の企業価値よりも株価が低い状態にある銘柄(割安株) ⇒ 予想PERも、PBRも低い
グロース株⇒ 業績や利益の成長性が高く、今後も高い成長が見込まれる銘柄 ⇒予想PERも、PBRも高い
■予想PER(株価収益率)=株価÷予想EPS(1株当たり利益)
※PERが競合他社や自社の過去平均と高いと割高、低いと割安
■PBR(株価純資産倍率)=株価÷決算期末BPS(1株当たり純資産)
※BPRが競合他社や自社の過去平均と高いと割高、低いと割安
【2022年1月に割安と報道されたバリュー株の例を買っていたら・・・】
6か月前のネット証券のコラムで、次の基準で抽出した下記銘柄が、その時点での「バリュー株」として紹介されていました。
【選定条件】
① 予想配当率 3.5%
② 株価騰落率 5%未満(⇒株価が上昇していない銘柄を抽出する目的)
③ PBR 1倍以下
④ PER 10倍以下
⑤ 時価 1000億円以上
【2022年1月に、この条件で抽出した銘柄を購入した場合の2022年7月21日の損益】
上記条件で抽出されたのは「電源開発」「九州電力」「三菱マテリアル」「帝人」「ケーズHD」でした。
この銘柄は、何か意味があるわけでなく、たまたま私が見た6か月前のサイトにあったものですが、試しに、仮に、この5銘柄を2022年1月20日の株価で購入したとして、6か月後の現在どうなったかを計算したのが下図です。
このように、2つの銘柄は、6か月間に値を下げましたが、大きく上昇した銘柄もあるので、全体としては約13%上昇しています。
同じ期間の日経平均株価は、2022年1月20日が25,970円、2022年6月21日が27,800円ですので、約7%の上昇でした。
取り上げた銘柄がわずか5つですから、これだけでは、なんとも言えませんが、「金利上昇局面ではグロース株の株価は下がりやすい」(注)ということも考えれば、金利上昇が重荷となり、リセッション入りも懸念されいる現在において、バリュー株投資は一定の合理性はありそうです。
(注)金利上昇局面ではグロース株の株価は下がりやすいと言われる理由
PERは、株式益利回りの逆数ですので、PERが高い銘柄の株式益利回りは低いということになります。このため、金利が上昇してくるとPERの高いグロース株の利回り商品としての魅力は低下すると言われています。また、金利が高くなると、借入金が多い傾向にある成長企業には不利であるという面もあるように思います。
2.バリュー株の見つけ方
ネットを検索すれば、バリュー株と言われる銘柄は見つけることができると思います。また、証券会社に口座のある方は、各会社のスクリーニング機能で、上に述べたような条件を入力して絞り込むことも可能です。
しかし、この抽出では注意する点もあります。
例えば、PBRやPERが低いのは「割安」なのでがなく、もともとその企業の将来性が期待できないと評価されている場合があるからです。
つまり、PBR1倍以下、PER10倍以下でも、価値の割に割安ではなく、それなりに価値がないので安かったということもあり得るのです。
いずれにしろ、個別企業の株価の先行きは誰にもわかりません。
どんなに有望に思えても、外的環境や様々な理由で大きく株価が下落することも多いです。
株式投資は難しいですが、個人的には、一度に投資せず時間と銘柄を分散して投資すること、年に2割程度の株価下落があっても困らない金額の範囲で資産を振り分けること、短期的な値上がりよりは長期的な価値の増大を楽しみにすることが大事だと思っています。昔からの格言「売りは早かれ、買は遅かれ」等も重要な先人の知恵だと思っています。