遺言と死後事務委任契約

遺言にはそのできることに限界があります。遺言でできないことを補うのが死後事務委任契約です。

遺言と死後事務委任は、どちらも自分の死後に関係する重要な書類ですが、それぞれに異なる役割があります。遺言で自分の死後の財産の承継や、葬儀などの死後事務に関する希望を書き記しておけば、相続人や親族に自分の意思を伝えることができます。しかし、遺言には法的拘束力がない付言事項もあり、また、遺言で指定した通りの死後事務が必ず行われるとは限りません。

その点、死後事務委任契約は、契約なので、委任した内容を受任者が法的義務として履行することになります。そのため、遺言で自分の死後事務に関する希望を具体的に記載しておき、それを死後事務委任契約で具体的な手続きとして委託しておくことで、自分の意思や希望をより確実に実現することができます。

このように、遺言がつきたところから、死後事務委任契約の出番があると言えます。

遺言とは?その限界は?

遺言の役割

個人が亡くなった後の財産は、遺言書がなくても法定相続によって相続がされます。しかし、法定相続では、遺言者の意思や想いが必ずしも反映されるとは限りません。

例えば、法定相続人以外に財産を残したい場合や、不動産を特定の相続人に相続させたい場合、遺産分割で争いになるのを避けたい場合などは、遺言書が必要です。

遺言書には、何を書いても構わないのですが、法律上の効力が生じるものは定められており、これを「遺言事項」といいます。

遺言事項

遺言事項は、リスト化されているわけではなく、民法などの法律に分散して書かれています。その内容をまとめると以下のようになります。

1.身分に関係すること

認知(民法781条2項)
未成年後見人の指定(民法839条1項)
未成年後見監督人の指定(民法848条)
相続人の廃除、廃除の取消(民法893条、894条2項)
祭祀主宰者の指定(民法897条1項但書)
遺言執行者の指定又は指定の委託(民法1006条)

2.相続に関係すること

相続分の指定又は指定の委託(民法902条1項)
特別受益の持戻し免除(民法903条3項)
遺産分割方法の指定又は指定の委託(民法908条)
5年以内の遺産分割の禁止(民法908条)
共同相続人間の担保責任の指定(民法914条)
遺留分侵害額の負担割合の指定(民法1047条1項2号但書)

3.財産に関すること

遺贈(民法964条)
信託の設定(信託法2条、3条)
財産の拠出(一般社団法人法158条2項)
保険金受取人の変更(保険法44条)

付言事項

遺言事項以外は、法的効力は認められず「付言事項」となります。

遺言書は、相続人の間でのトラブルを防ぐために欠かせない書類です。しかし、相続人間で不平等な内容にする場合や、葬儀や納骨の方法に関する希望を記載する場合は、相続人の不満や疑問が生じる可能性があります。

このような場合、付言事項に遺言を作成した経緯や、希望を記載しておくことで、相続人の理解を得やすくなります。

死後事務委任契約とは?遺言との関係は

遺言と死後事務委任の違い

遺言と死後事務委任は、どちらも自分の死後に関係する重要な書類ですが、それぞれに異なる役割があります。

遺言は、自分の死後に財産をどのように相続させるかや、葬儀や埋葬などの死後事務について、自分の意思を書き記しておくものです。一方、死後事務委任は、自分の死後に必要な事務手続きを、生前にあらかじめ他人に依頼しておくものです。

遺言は単独行為ですが、死後事務委任契約は契約です。そのため、遺言では、民法などで限定列挙されている事項しか実現できませんが、死後事務委任契約では、相手が同意すれば、様々なことを委託することができます。

また、遺言では、法的拘束力のない希望を「付言事項」として記載できます。例えば、自分の死後の葬式は簡素にして欲しいと遺言に記載できますが、それを守る義務が遺族にあるわけではありません。一方、「簡素な葬式を営むこと」を第三者と契約すれば、その第三者は法的義務を負うことになります。

遺言と死後事務委任の併用

遺言と死後事務委任は、それぞれに異なる役割を果たしますが、組み合わせることで、より確実に自分の意思や希望を実現することができます。

例えば、法定相続人以外の人に財産を残したい場合、遺言書で相続分を指定しておけば、相続人争いを防ぐことができます。また、葬儀や埋葬などの死後事務を、信頼できる人に任せたい場合、死後事務委任で具体的な手続きを依頼しておけば、安心して任せることができます。

このように、遺言と死後事務委任を併用することで、自分の死後における財産の承継や、葬儀などの死後事務を、より確実に実現することができます。

<ご参考>

杉並区、練馬区、中野区の行政書士 中村光男
生前6点セット「⑤死後事務委任契約」とは

まとめ

遺言と死後事務委任は、どちらも自分の死後に関係する重要な書類ですが、それぞれに異なる役割があります。遺言で自分の死後の財産の承継や、葬儀などの死後事務に関する希望を書き記しておけば、相続人や親族に自分の意思を伝えることができます。しかし、遺言には法的拘束力がない付言事項もあり、また、遺言で指定した通りの死後事務が必ず行われるとは限りません。

その点、死後事務委任契約は、契約なので、委任した内容を受任者が法的義務として履行することになります。そのため、遺言で自分の死後事務に関する希望を具体的に記載しておき、それを死後事務委任契約で具体的な手続きとして委託しておくことで、自分の意思や希望をより確実に実現することができます。

このように、遺言がつきたところから、死後事務委任契約の出番があると言えます。

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