2021年度の米金利・米ドルのシナリオ

 2020年の米ドルは、年初は110円程度で推移していたが、3月のコロナ禍で、一挙に103円台に下落、その後いったん110円前後に持ち直したものの、その後は、だらだらとドル安が続き、2020年12月現在では、103円台に落ちています。

 来年はどうなるか?この点に関し、2020.12.29の日経19面記事「米金利、強まる先高観」(南毅郎さん)の記事が、面白いと思ました。

 同記事では、例年は、前半に1ドル=100円を下回る円高となるが、後半にかけ反発するのではとの見立て。理由は、①ワクチン効果などによる米国経済の回復期待(21年度の成長率は3%とのIMF予測あり)による米国長期金利の上昇、②期待インフレ率の上昇低下による実質金利の上昇とのこと。

 ポイントは、ドルの高低は名目的な米10年国債の金利でなく、そこから、北インフレ率を引いた実質金利に注目すべきであるという指摘かと思います。

 ここまでは、理解しやすい話です。

 記事に、さらっと書いてある「期待インフレ率=市場の予想物価上昇率(BEI)」としつつ、「米ミシガン大の消費者調査でもインフレへの期待が大きく高まるにはいたっていない」と言っている点は私には少し、難題です。

 まず、BEIとは何か。野村証券のホームページによれば、以下の記述があります。

 BEIとは「市場が推測する期待インフレ率を示す指標のこと。英語表記(Break Even Inflation rate)を略して「BEI」とも呼ばれる。物価連動国債の売買参加者が予測する今後最大10年間(物価連動国債の残存期間次第で10年未満になる場合がある)における年平均物価上昇率を示す。ここでの物価変動はコアCPIと呼ばれる「全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)」を基準とする。

物価連動国債の利回りを実質金利と呼び、実質金利と長期金利(長期固定利付国債利回り)の間には理論的に「期待インフレ率≒長期金利-実質金利」という関係が成立する。実質金利は物価連動国債の市場価格から計算できるので、同年限の長期金利と対比することにより、期待インフレ率を逆算推計することが可能となっている。」

 ただし、期待インフレ率の測定自体は、BEIが絶対基準ということはなく、公益財団法人国際通貨研究所のホームページでは「期待インフレ率の測定方法としては、①家計や企業に対する中央銀行のアンケート調査から算出する、②ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI、固定利付債と物価連動国債の利回り格差)を利用する、③過去のインフレ率の実績から算出する、等が挙げられますが、厳密に計測することは困難です。」と解説があります。

 それはそうでしょう。以前、別の雑誌の記事で、ドル円の変動要因として、BEIのことを詳しく解説する記事を読んで、よく理解できなかったことがありましたが、本日のこの記事はさすが新聞記者の方で、わかりやすく書いてありました。少しは理解が進んだので、記者に御礼を言いたいです。