家族の多様化を背景にした民法改正案について(親子の嫡出推定制度の改定と懲戒権の削除)

 202221日に、法制審議会で親子関係を巡る民法の規定の見直し案が決定したとの報道がありました。今回の見直しの内容は以下の通りです。その見直しの目的は、「児童虐待が社会問題になっている現状を踏まえて民法の懲戒権に関する規定等を見直すとともに、いわゆる無戸籍者の問題を解消する観点から民法の嫡出推定制度に関する規定等を見直す」という点です。

 【民法改定案】

  • 離婚後300日以内に生まれた子も、再婚していれば再婚相手の子と推定する。
  • 再婚禁止期間(100日)を廃止する。
  • 女性が婚姻前に妊娠、婚姻後に生まれた子は夫の子と推定する。
  • 嫡出否認の訴えを子や母にも認める。
  • 懲戒権の規定は廃止する。

 

1. 「離婚後300日以内に生まれた子も、再婚していれば再婚相手の子と推定する」案

 現在の民法の規定では、「婚姻成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子は,()夫の子と推定する。」となっています。このため、DV等で長く争って、ようやく離婚した後、再婚したとしても、離婚成立後300日以内に生まれた子は、元夫の子と推定されてしまうという問題点がありました。

これを避けるため、母親が出生届出をださないため無戸籍者が発生する原因となっていると考えられています。

 そこで、今回の改訂案では、婚姻成立後に生まれた子は,婚姻成立の日から200日以内に生まれた子であっても,夫の子と推定するとしています。また、婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子は,元夫の子と推定する(現行法どおり)ルールは残しつつ、母が元夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は,再婚後の夫の子と推定するという例外を設けることにしたのです。

 2.「再婚禁止期間(100日)を廃止する」案

 現在は、「婚姻成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子は,()夫の子と推定する。」となっているため、離婚後の結婚の間を100日空けることで、元夫の子か、現在の夫の子かという問題が発生しないようにしています。

しかし、今後は、結婚期間中に生まれた子は現在の夫の子と推定されますので、重複推定の心配がなくなりますので、再婚禁止期間も必要なくなることになります。

 3.「女性が婚姻前に妊娠、婚姻後に生まれた子は夫の子と推定する」案

 現在は、婚姻後200日後に生まれた子を婚姻中に妊娠した子と推定するとしています。このため、妊娠が分かって婚姻した場合などで、婚姻後200日以内に生まれた子は嫡出子(婚姻による子)と推定されないため、届け出で「嫡出子」とする必要がありました。

しかし、改正案によれば、今後は、婚姻成立後に生まれた子は,婚姻成立の日から200日以内に生まれた子であっても,夫の子と推定されますので、このような問題もなくなります。

 4.  「嫡出否認の訴えを子や母にも認める」案

 現在は、嫡出否認は夫のみの権利とされていました。これについては、一家の長が大きな権限を持つ「家」制度を引きずっているとの批判もありました。今後は夫の協力がなくても、未成年の子や母にも拡大する方向となりました。また、期間が短すぎるとの指摘も踏まえ、原則3から5年年に延ばす案となっています。

 5.  「嫡出否認の訴えを子や母にも認める」案

 現在は、親権者は、監護教育のために必要な範囲内で、子を懲戒する ことができる(民法第822条)ことになっています。これについては、児童虐待を正当化する口実になっているとの指摘が強くなっていました。

そこで、改定案では、民法第822条を削除する方向になりました。

 【まとめ】

 このような改定が正式に法律になるには、国会の審議が必要です。従来の民法は、安定した家制度を前提に、機械的に子供の親を決めるようなところが見受けられますが、その理由としては、子供の親を早期に確定して、子供の権利保護を図ろうという趣旨もあったと思います。しかし、離婚の増加、家族の多様化に加え、DV、児童虐待などの問題の多発など、新たな社会環境も生じています。今後、これらの変化を背景にして、民法でも個人としての母と子の立場が重視されていくのではないかと思います。