婚姻、離婚などの届出を勝手にされるおそれがある場合、本籍地の役所に出向いて、婚姻や離婚の「不受理申出書」を提出することで、本人が窓口に出頭して届け出たことを確認することができない限り、届出を受理(受付)しないようにすることができます。
しかし、素朴な疑問が生じます。なぜなら、平成20年5月1日から、養子縁組・協議離婚・婚姻・認知の届け出については、「窓口で本人確認」が必要とされているからです。届出の際にしっかりと本人確認が必要とされるなら、本人が知らぬ間に、これらの届け出がされることはないだろうと思うのが普通ですから、そもそも「不受理申出書」ってなぜあるのか?が疑問となります。
不受理申出書とは?
◎法務省によれば、以下のように説明されています。
【Q】私には離婚の届出をする意思はないのですが、妻から届出が出されても受理しないでほしいという申出はできるのでしょうか。
【A】婚姻、離婚、養子縁組、養子離縁、認知の5つの届出については、届出が提出される前に、本籍地役場に出向いて「不受理申出書」を提出することができます。なお、この申出の際に、ご本人であることを確認することになります。
(注1)裁判や審判、外国方式による婚姻証書の提出など、報告的な届出の場合は不受理申出がされていても受理されることになります。
(注2)原則として郵送での申出はできません。
◎「不受理申出書」のポイントは以下の点です。
・戸籍のある役場まで、申し出される方(申出人)本人の出頭が必要です。
・窓口に不受理申出書 1通(申出書は全国共通)を提出し、写真付きの本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)の提示が必要です。
・不受理の効果は無期限です。不受理が不要となった場合は、不受理の取り下げの申出書をご提出が必要です。
参考 法務省HP「戸籍の窓口での「本人確認」が法律上のルールになりました」
戸籍に関する届け出には、そもそも本人確認が必要なのでは?
冒頭に記載したように、平成20年5月から、婚姻、協議離婚、養子縁組、養子離縁、認知の5つの届出について、戸籍の窓口に来られた方の「本人確認」を必ず行うことになっています。いわゆる「戸籍届出の際の本人確認」ルールです。
これは、個人情報保護意識の高まりを背景に、「誰でも戸籍謄本等の交付請求ができる」という従来の戸籍の公開原則を改め、第三者が戸籍謄本等の交付請求ができる場合を制限し、また、虚偽の届出によって戸籍に真実でない記載がされないようにするため、戸籍届出の際の本人確認などが法律上のルールにしたものです。
しかし、それなら、本人が知り得ぬところで、「婚姻、協議離婚、養子縁組、養子離縁、認知」などの届け出がされる心配はないのではないか?と思ってしまいます。なぜ、今でもこれらの届け出を「不受理にして欲しい」という届出が存在しているのでしょうか?
戸籍届出の際の本人確認ルールの意外な落とし穴
実は、このルールでは「婚姻、協議離婚、養子縁組、養子離縁、認知の5つの届出(以下「婚姻等の届出」といいます。)について、戸籍の窓口に来られた方の「本人確認」を必ず行うことになります。そして、届出のご本人であることの確認ができなかった場合には、確認できなかったご本人(届出人)に対して、「婚姻等の届出」が受理されたことを、届出人の住所地に郵送等により通知することになります。」となっているのです。
このため、本人確認がされない婚姻や協議離婚の届出については、本人が通知を見て、役所に連絡したときには、すでに役所は戸籍に届出事項を記載していることが多いと言われています。このため、本人は、婚姻や協議離婚が真実でないことを裁判で争わなけれならないことになります。
また、通知を受け取った本人が、役所に連絡を遅らせてしまうと、虚偽の身分で第三者が国民保険証等の発行を受けることがあると言われます。
【参考】戸籍法の見直しに関する論点(2)
まとめ
かつては、消費者金融から借入れを行う等の目的で、他人が勝手にうその婚姻届や養子縁組届を提出して、戸籍に真実でない記載がされるという事件も発生しています。現在では、戸籍の届出の際の本人確認がルール化されているとはいえ、本人確認がされない届出もいったんは受け付けられ、本人には事後通知になっているので、気になる事情があるかたは、事前に「不受理届出」の検討をしてもいいかもしれません。
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