養方の傍系血族 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

民法734条は次のように規定します。

(近親者間の婚姻の禁止)

第734条 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。

 第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

謎とは

養子は「養親の嫡出子の身分を取得」する(民法809条)ので、養親と養子には血縁関係はありませんが、養子縁組すれば実子と変わらず「親子関係」が法律上認められるため、血族に含まれます

そのため、734条本文により、養親側の直系血族又は三親等内の傍系血族との結婚はできないはずです、

しかし「養子と養方の傍系血族との間では婚姻が可能」(民法734条1項但し書)という条項により、「養子は、養親の子供(義理の兄弟)と結婚してよい」とされています。

しかし「養親の実子」は「養方の傍系血族」ではなく「養方の実子」ではないか?というのが、この条文の謎です。

例えば、山田さんに養子の太郎さんと、実子の花子さんがいたときに、太郎さんと花子さんは結婚できますが、花子さんは「養方の実子」ではないか?と考えると、民法734条1項但し書の意味が分からなくなります。

どう読むか

しかし、法律の解説が間違っているのではありません。読み方を変えると理解できます。

つまり、この条項は「養子(太郎さん)から見て、養方(山田さんの親族)に含まれる傍系血族(花子さん)」は結婚してよいと読むのです。

a) なぜ、「養方の傍系血族」というかというと、普通養子の場合は、実親との親族関係は解消されないので、「実方の傍系血族」もあるからです。

太郎さんは、「養方の傍系血族」とは結婚できますが、「実方の傍系血族」との結婚には、「直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。」という制限を受けるということになります。

b) また、民法736条の記述と比較しても、ここでいう「養方の傍系血族」とは、「養親の傍系血族」ではないと解釈できます。

民法736条
(養親子等の間の婚姻の禁止)

第736条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。

民法736条は、養子親子関係にあった者との間では、離縁後も婚姻できないだけでなく、養子と養親の親、あるいは、養親と養親の配偶者との間等においても、離縁後の結婚は認められないことを定めています。

ここで「養親又はその直系尊属」という書き方に注目です。この書き方にならえば「養親の傍系血族」という意味で記載したいならそのように書くはずですから。

養子縁組に関係しない配偶者がいるという場合

養子縁組する人(養子でも養親でも)は既婚者で、養子縁組に関係しない配偶者がいるという場合はどうなるのでしょうか?

養子縁組の場合、養子が成人の場合は、養親が夫婦なら、養親は共同で養子縁組する必要があります。しかし、養子が成人の場合は、養親の片方とのみ養子縁組ができます。

もっとも、養子縁組は「親子の関係をつくる」届出ですから、養子や養親の配偶者自身が縁組に参加していなくても、相続権発生等の大きな影響があります。そのため、養子が成人の場合でも、配偶者を保護するために同意を必要としています。

民法
(配偶者のある者が未成年者を養子とする縁組)

第795条 配偶者のある者が未成年者を養子とするには、配偶者とともにしなければならない。ただし、配偶者の嫡出である子を養子とする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。


(配偶者のある者の縁組)

第796条 配偶者のある者が縁組をするには、その配偶者の同意を得なければならない。ただし、配偶者とともに縁組をする場合又は配偶者がその意思を表示することができない場合は、この限りでない。

逆に言えば、未成年者でないものが夫婦の一方とだけ養子縁組することは、縁組しない配偶者の同意があれば可能です。このとき、縁組していない養親の配偶者は、民法第734条の解釈上どう考えるのでしょうか。

この点は別項で考察したいと思います。

行政書士中村光男事務所について

行政書士中村光男ホームぺージへ

行政書士中村光男事務所連絡先