遺言書は、家族と相談して書いた方がいいのか?

弁護士が遺言書を持ってきたシーン

先日、NHKの土曜日の夜のドラマ「群青領域」(主演 シム・ウンギョン)を見ていたら、シム・ウンギョンを助けてくれた下宿の女主人(樫山文枝)”おばあさん”が、亡くなって、所縁の人たちが偲んでいる会に、弁護士が現れて、おばあさんの遺言書を届けに来るというシーンがありました。この遺言書は、その場にいた誰もが知らぬもので、おばあさんが生前に一人で考えて記載し、弁護士に託したものに違いありません。

さて、一般に遺言を書く目的は、自分の財産を、遺族や縁のある人達に、どのように分配するかに関し、自分の意思を明確にすることです。

自分が亡くなった後の、配偶者や子供達の生活を思い浮かべながら、土地・建物・預金・債券等をそのように、分けるのが適切か考え遺言書にまとめるのは、なかなか骨の折れることです。本当にこれでいいのだろうかと思い悩むこともあるかと思います。

いっそのこと、何も残さずに、皆で良いように相談して分けてもらった方がいいのではないかと思う方も多いのではないかと思います。実際に、60歳以上で遺言を書いている方は500人に一人程度ではないかとの推測もあります。

しかし、骨は折れても、生前にどこにどのような財産があって、誰にどのように分けるかを、個人の深い思いで配分された遺言書があれが、残された人たちもずいぶん助かるでしょう。また、その遺言書に込められた愛情がしっかりと受け継がれると思います。

問題は、遺言は遺族の誰かと相談をして書くべきか、あるいは、自分だけで考えて書くべきかです。

正解はないが・・

この点は、ご本人の考え方や、ご親族の方々の日ごろの関係、各相続人およびその配偶者の年齢・職業・個性などによって、正解はないかと思います。

以下に記載するのは、どちらかにするかを検討するのに、気をつけたい点です。

〇遺言は単独でできる行為であること。

  人に何かを贈与する場合は、たとえ無償であっても、相手の承諾がなければ成立しません。しかし、遺言は、自分の財産を自分で処分することですので、相手の承諾は必要はなく、自分の考えで、相続分を指定することができます。(もっとも、相続人が相続を放棄することはできます。また、相続人の遺留分には注意が必要です。)

〇相続人に相談すると、相続人や配偶者の欲を刺激することがある。

  特に、相談された相続人が、その配偶者の方と相談すると、話が広がって感情的なしこりになることもあるようです。

〇相談すること自体で遺言の内容が偏ることがある。

  ある相続人に相談し意見を聴いたりすると、無視もできず、その意見を尊重せざるを得ない場合もある。また、相談した人に不利な内容は買いにくくなるかもしれません。

〇遺言の内容は、何回でも書き換えることができる。

  先に述べたように、遺言は単独でできるものです。時間が経過すれば、相続人の生活状況や、ご自分の気持ちが変わり、遺言を変更することも多いでしょう。そのたびに、相続人に相談したり同意を得るのは難儀です。

〇配偶者は特別。

  自分の財産とはいえ、配偶者の献身的なささえが大いにあって、築かれた財産でもあります。また、残された配偶者の生活は何十年になることもあるでしょう。事情は、各御家族で千差万別で一律の正解はないところです。ご自分の配偶者に相談するかしないかはそれぞれの方の考え方と思います。遺言書に自分の思いを記載する。

  ご遺族への感謝、財産分割に込めた思いなどを記載することで、相続人の方に思いを伝える良い方法と思います。

〇遺言があることは伝えて置く

  遺言の内容はともかくとしして、遺言があることを相続人の誰かに伝えておかないと、せっかくの遺言があることが誰にも分からないこともあるかもしれません。公正証書遺言にして、公証人役場で預かってもらうとか、自筆証書遺言にして、登記所による自筆証書保管制度を利用するなどして、その旨を相続人の誰かまたは、信頼できる人に伝えておくのが良いと思います。

「遺言書を書いたら、その内容を知った関係者が損得で動くことがあるので、生前に遺言内容は絶対に言ってはいけない」という専門家もいます。一方、「生前に、家族全員で、オープンに相続や遺産のことを話し合っておくべきだ」という専門家もいます。どちらがいいのかは、タイミングや、ご家族ご家族のご事情によって異なるような気がします。

「遺言のようなもの」を書いてみませんか

なんとなく、もやもやしますね。そこで、お勧めなのが「遺言のようなもの」を下書きしてみることです。

遺言を書くためには、遺言書について基礎的な勉強が必要です。自筆証書遺言を法的に有効に書くためには、民法で色々な決まりがあったりします。しかし、まずはざっくりとでいいので、メモを書く感覚で、自分に万が一のことがあった際に、今ある財産を誰にどう分けるか・・を書いてみませんか。もちろん、それは法的に有効な遺言とはなりません。しかし、そのようなメモを書いてみると、不思議に考えがまとまってきて、少し気持ちが整理された気がされるのではないかと思います。

法的に有効であること、税金の問題も上手にクリアーできること。これらのことは、最終的には専門家に相談した方が良いのですが、まずは、はじめの一歩で、「遺言書のようなもの」を書いてみる。お試しされてはいかがでしょうか。

 

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