戸籍は何のためにあるか。

戸籍の目的、記載事項、戸籍が必要とされる主たるケースについて整理しました。

戸籍は何のためにあるか?

法務省のHPでは、「戸籍制度は,日本国民の国籍とその親族的身分関係(夫婦,親子,兄弟姉妹等)を戸籍簿に登録し,これを公証する制度です。また,人の身分関係の形成(婚姻,離婚,縁組,離縁等)に関与する制度でもあります。」と記されています。

ここに書かれているように、戸籍が証明できるものは、次の2点です。

また、日本の戸籍は、夫婦単位の家族の登録簿ですから、婚姻、出生、離婚等で家族関係に変動があったときには、夫婦単位の戸籍が新たにつくられたり、子供が入籍したり、離婚した配偶者が除籍されたりします。

戸籍で証明できること

1.日本の国籍を持っている本人の存在証明

2.家族関係

戸籍が関与すること

婚姻,離婚,縁組,離縁、出生等 人の身分関係に影響がある事由

戸籍の記載事項

戸籍には、次の8項目が記載されます。住所は記載されていないのが注意点です。

1.氏名

2.  出生の年月日

3.戸籍に入った原因及び年月日

4.  実父母の氏名及び実父母との続柄

5.養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄

6.夫婦については、夫又は妻である旨

7.他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示

8.その他法務省令で定める事項

戸籍が求められる主たるケース

手続き上、「日本人たる本人の存在」や「家族関係」が証明されないと話が進まないときに、戸籍の出番です。主たるケースは、以下のような場合です。

戸籍の提出が求められる主な場合

〇相続手続を行うとき

〇公正証書遺言を書くとき

〇パスポートの申請をするとき

〇婚姻届を出すとき

〇年金の請求をするとき

〇保険金請求をするとき

 

相続や遺言の場合は、過去にさかのぼって被相続人と相続人のすべての関係の証明が必要ですので、現在の戸籍だけでは足りません。

パスポートの申請の場合は、本人の存在証明があればいいので、戸籍抄本(筆頭者と本人の情報だけが記載されている)で足りますが、同一戸籍内のご家族の方が同時に申請する場合は、戸籍謄本を1通提出いただくだけで全員の申請ができます。

婚姻届の場合に、必要とされるのは家族全員の情報のある戸籍謄本です。ただし、「婚姻届の提出先が、本籍地のある市区町村と同じ」場合は、戸籍謄本は本籍地のある市区町村で保管されているため、該当の夫または妻の戸籍謄本は、提出不要です。

年金請求の場合は、配偶者や子供の有無や年齢によって受取金額に差があることもありますので、家族全員の関係がわかる戸籍謄本が求められる場合があります。

戸籍の提出が求められないケースも

例えば、運転免許証を新たに作成するときは、求められるのは、日本人は本籍、外国人は国籍が記載された住民票(個人番号の記載がないもの又は個人番号をマスキングしたもの)です。

なぜ、戸籍ではなく、住民票なのかというのはよくわかりませんが、「戸籍の記載のある」住民票であることを求められていますから、「戸籍があることと住所は確認したいが、身分関係までは必要のない情報」であるということかもしれません。

なお、かつては、会社が入社する社員の戸籍提出を求める場合もあったかもしれませんが、現在では、ほとんどそのような事例はないのではないでしょうか。会社が社員の戸籍を預かるのは、個人情報保護の観点で問題が大であり、リスキーです。

会社が従業員の戸籍を求めても妥当かなという事例は、きわめて例外的であると思います。例えば慶弔規程で、多額の弔慰金を親族に支払う際に、どうしても戸籍でないと親族関係が確認できない特別の事情がある場合などでしょうか。その場合でも、確認してすぐ返却する方がベターに思えます。