
最近、少年による犯罪のニュースが話題になっています。「厳罰化」を求める声も少なくありません。しかし、少年は人格形成の途上にあることから、目的は「処罰」よりも「性格の矯正と環境の調整に関する保護処分」に重点が置かれます。以下に、少年法と刑法の関係の概略、民法改正で成年年齢が20歳から18歳に引き下げられた影響について整理します。
初めに
日本では、少年法によって原則として20歳未満を「少年」と定義し、家庭裁判所が中心となって教育的措置を講じます。重大事件では検察官送致(逆送)されることがありますが、18歳未満には死刑を科すことはできません(少年法第51条、刑法第41条等)。懲役刑や無期刑についても、量刑判断において更生の可能性が重視されます。
刑法では、14歳未満の者の行為は処罰しないものとされています(刑法41条)が、少年法では20歳未満の者を「少年」と定義し、少年の非行を「犯罪少年」「触法少年」「虞犯(ぐはん)少年」の3種類に分けています。
また、民法改正により、成年が20歳から18歳になったことを受け、少年法は18歳以上の少年(18歳、19歳)を「特定少年」として扱いを厳しくしました。
少年法の仕組み
少年法は、20歳未満のものを少年と言います。
少年法は保護処分優先主義に立っています。少年事件については専門家である家庭裁判所調査員のいる家庭裁判所に一元的に集めることになっています。これを全件送致主義とも言います。
家庭裁判所が、非行少年の個別的事情を十分に調査して保護処分にするか、例外的に刑事処分にするかを決定します(少年法20条)。この例外的な「検察官への送致」決定を逆送と言います。
⇒保護処分には、少年院に収容する少年院送致と、社会内で保護観察や保護司の指導を受ける保護観察などがあります。
⇒逆送決定された後は、原則として検察官により刑事裁判所に起訴され、懲役刑・罰金刑などの刑罰が科されます。
逆送される場合
家庭裁判所が保護処分でなく、刑罰を科すべきと判断したときは、逆送決定がされます。
重大な事件(※)は、原則として逆送決定がされます。
【重大な事件】
・16歳以上の少年の犯した故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪(原則逆送対象事件)
・18歳以上の少年(特定少年)のときは、原則逆送対象事件が拡大されます。強盗罪、組織的詐欺事件など・・
犯罪少年
少年法3条1項1号「罪を犯した少年」は家庭裁判所の審判に付するとしています。これを「犯罪少年」といいます。犯罪少年には、年齢の限定がされていませんが、もともと刑法41条で14歳未満の少年の犯罪は罰しないとしているので、必然的に14歳以上20歳未満の罪を犯した少年を指しています。(少年法は20歳未満を少年としています。)
家庭裁判所は、犯罪少年のうち、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査又は審判の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは,検察官送致決定をします。
また、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた事件で、罪を犯したとき16歳以上の少年については、原則として検察官送致決定をしなければなりません。(少年法20条)
触法少年
触法少年とは、14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした者のことをいいます(少年法3条1項2号)。14歳未満は善悪の判断能力が乏しいため、刑法で禁じる犯罪を犯しても刑事責任は問われません。しかし、法は犯しているので「触法」少年となります。
触法少年には、逮捕も処罰もありませんし、少年法より児童福祉法上の措置が優先されます。児童相談所の手続を受けますし,一定の場合には警察から調査を受けることになります。そして、児童相談所が必要であると判断した場合には、犯罪少年と同じように、家庭裁判所の手続に移ります。
家庭裁判所は、都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときは、これらの少年を審判に付することができるとされています。
ぐ犯少年
犯罪そのものではなくても,将来犯罪や触法をするおそれがあるという場合は「ぐ犯」少年とされます(少年法3条1項3号)。ぐ犯とは、虞犯のことで「虞(おそれ)」は「おそれがある」という意味です。
成人であれば、犯罪を犯すおそれがあるだけでは刑事裁判にかけられませんが、少年法は刑罰で行為者を罰することより、教育によって犯罪傾向を解消することを狙っていますので、虞犯の段階であっても審判の対象にすることができるとしてます。
少年の事件の実名報道
少年法(第61条)によって、少年のとき犯した罪については、少年の更生に資するため、氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどによって犯人が誰であるかが分かるような記事・写真等の報道(これを推知報道と言います)が禁止されています。
しかし、18歳以上の特定少年については、逆送されて起訴された場合(非公開の書面審理で罰金等を科す略式手続の場合は除く。)には、その段階から、推知報道の禁止が解除されます。
これは、選挙権年齢や民法の成年年齢の引下げにより責任ある立場となった特定少年については、起訴され、公開の裁判で刑事責任を追及される立場となった場合には、推知報道を解禁し、社会的な批判・論評の対象となり得るものとすることが適当であると考えられたことによるものです。
少年への刑罰 先進諸国
日本の刑法第41条は「14歳に満たない者は、罰しない」と規定しており、さらに少年法第51条により「18歳未満の者に死刑を科してはならない」と明確に定められています。国際的にも、「少年は更生可能な存在」として扱い、刑罰よりも教育的支援を優先するのが一般的です。
ちなみに、ドイツでは、刑事責任年齢は日本と同様に14歳ですが、イギリスでは、10歳です。
刑事責任年齢
イングランドとウェールズにおける刑事責任年齢は10歳です。
スコットランドではルールが異なります。
これは、10歳未満の子供は逮捕されたり、犯罪で起訴されたりすることができないことを意味します。法律を破った10歳未満の子供には、他の罰則が科せられます。
10歳以上の子供
10 歳から 17 歳までの子どもが犯罪を犯した場合、逮捕され、法廷に連行される可能性があります。
子どもは大人とは異なる扱いを受け、次のような扱いを受けます。
- 少年裁判所で扱われる
- 異なる文を与えられた
- 成人刑務所ではなく、若者向けの特別保護センターに送られる
18歳の若者
18歳になると法律上は成人として扱われます。
刑務所に送られる場合、彼らは成人専用の刑務所ではなく、18歳から25歳までの若者を収容する施設に送られることになる。
また、日本が批准している国際条約でも以下のようになっています。
(1)市民的及び政治的権利に関する規約(ICCPR)
第6条第5項により、「18歳未満の者に死刑を科し、または執行してはならない」と定めています。
日本はこの条約を批准しており、国内法と矛盾しないよう制度整備がなされています。
(2)児童の権利に関する条約(CRC)
第37条では、「18歳未満の者に対し、拷問、残虐な処罰、死刑、終身刑(仮釈放の可能性なし)を行ってはならない」と規定。
子どもの権利保護が刑罰政策に大きな影響を及ぼしており、多くの国がこれに基づいて制度改革を進めています。
参考
法務省 少年法が変わります