まとめ
韓国籍をもって日本に住んでいる方の、相続・遺言は韓国法に従います。
日本に財産があってもこれは同じです。韓国法では、本人が日本法で遺言・相続する意思を明示した場合は、日本法によるとしています。また、日本の法もこの考え方を支持しています。
したがって、日本に住む韓国籍の方が遺言をする場合は、上記の理由により、以下のような記載をする必要があります。
〇条 遺言者は、相続の準拠法として、遺言者の常居所在地である日本法を指定する。
この条項を入れておけば、あとは通常の遺言書の作成をすれば足ります。
法の適用に関する通則法
法の適用に関する通則法は、日本における国際私法を定める法律で、行為能力、成年後見、法律行為、相続など、さまざまな法律関係について準拠法を規定しています。
相続と遺言については、以下のように定められています。
(相続)
第三十六条 相続は、被相続人の本国法による。
(遺言)
第三十七条 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。
2遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC0000000078 より
このため、日本に住む外国人の遺言を作成する際には、その外国人の本国の法律を調べる必要があります。
日本に住む韓国籍の方の相続・遺言
韓国の国際私法(2022年7月5日施行、2022年1月4日全改正)では、77条で相続、78条で遺言について定められています。
これによれば、相続については、原則は韓国法によるが、遺言によって、明示的に日本法によるということが指定されている場合は、日本法によることができます。
また、相応じて、日本の「法の適用に関する通則」41条では、「当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による」と規定されています。
このため、韓国籍の方が、明示的に日本法によると遺言で指定すれば、日本の法律による相続が可能となります。
韓国と日本では、配偶者の法定相続分などに差がありますので、遺言がないと、日本の財産の配分についても、韓国法を参照する必要がでてきます。韓国籍の方は、それぞれの家族の実態に応じて、ご自分の意思を明確にした遺言を残しておく検討が望まれます。
<韓国 国際私法 >
第77条(相続)
①相続は、死亡当時被相続人の本国法による。
②被相続人が遺言に適用される方式により明示的に次の各号のいずれかに該当する法を指定するときは、相続は第1項にもかかわらずその法による。
1. 指定当時被相続人の日常居所地法。ただし、その指定は、被相続人が死亡までその国に日常居所を維持した場合にのみ効力がある。
2. 不動産に関する相続については、その不動産の所在地法
第78条(遺言)
①遺言は、遺言当時、遺言者の本国法による。
②遺言の変更又は撤回は、その当時、遺言者の本国法による。
③遺言の方式は、次の各号のいずれかの法による。
1. 遺言者が遺言当時又は死亡時に国籍を有する国の法律
2. 遺言者の遺言当時又は死亡当時の日常居所地法
3. 遺言当時の行為地法
4. 不動産に関する遺言の方式については、その不動産の所在地法
参考 韓国民法
https://www.law.go.kr/LSW/eng/engLsSc.do?menuId=2§ion=lawNm&query=%EB%AF%BC%EB%B2%95&x=0&y=0#liBgcolor0