ややこしい「相続関係説明図」と「法定相続情報一覧図」の差(遺産整理業務2)

昨日解説した「相続人調査」が完了すると、相続関係を分かりやすい簡易家系図にまとめることができます。この簡易家系図には、実は2種類あって、ひとつは昔からある「相続関係説明図」。もうひとつは、平成29年に新しくできた「想定相続情報一覧図」です。

の差は何でしょうか。またこの二つは何の役に立つのでしょうか。

相続関係説明図とは

相続関係説明図は、相続の時に、亡くなった人を中心として相続人が何人いてどんな続柄なのか、を記した図です。被相続人についての相続関係をまとめた簡単な家系図のようなものです。

【見本】法務局のHPにあるサンプルをご覧ください。

【作成方法】
1.相続人調査をする。
 相続人をもれなく確認するために、以下の戸籍や住民票の収集が必要です。
 (通常の相続の場合)
 ①被相続人の死亡から出生まで遡ったすべての戸籍
 ②被相続人の戸籍の附票または住民票
 ③相続人の現在の戸籍・附票(または住民票)
 (兄弟姉妹が相続人になる場合)

2.相続関係図のテンプレートを参考に、調査結果を記載する。
なお、分かれば以下の情報も記載します。

 ・相続人の最後の住所
 ・被相続人の最後の本籍
 ・登記簿上の住所(相続財産に不動産がある場合)

【作成するメリット】
相続関係説明図は、相続手続きを進めるうえで必ず作成が必要というわけではありません。しかし次のようなメリットがありますので作成した方が良いものです。

1.相続手続きの中で、相続関係説明図を添付すると、提出した戸籍謄本の等の原本を還付してもらえる。  

相続手続きでは、法務局や金融機関等に、被相続人と相続人のすべての戸籍を提出することが必要な場面が、たくさん出てきます。法務局では、相続関係説明図があれば、これらの戸籍は返してくれます(※)。また、金融機関も、金融機関のルールでそのように決めているところもあります。

  ※「相続関係説明図」がある場合の法務局の扱い⇒https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
  

2.相続人の関係が整理できてわかりやすくなります。

  戸籍の束をよく見れば、相続人の関係は理解できます。しかし、図になっていた方が圧倒的にわかりやすいです。銀行窓口で、相続関係を簡単に理解してもらうにも役立ちます。遺産分割協議書等に添付すれば、より明瞭です。のちのち、裁判等になるようなことがあれば、「相続関係説明図」の提出が求められることもあります。

法定相続関係情報一覧図とは

「法定相続情報一覧図」は、平成29年にできた「法定相続情報証明制度」を利用するために必要なものです。相続関係を一覧に表した図という点では、「相続関係説明図」と同じですが、「相続関係説明図」はある程度自由に作成してOKでしたが、「法定相続情報一覧図」は様式が決まっています。

登記所(法務局)に、「法定相続情報一覧図」と、戸除籍謄本等の束を提出すれば,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付します。その後の相続手続は、法定相続情報一覧図の写しを利用すれば、戸除籍謄本等の束を何度も出し直す必要がなくなります。

この制度は、相続後登記もされずに空き家として放置されている不動産が増えており、社会問題化していることが背景にあって、相続手続きを促進するためにできたものです。

また、「法定相続情報一覧図」を出せば、提出書類が省略できる行政手続きの範囲は、相続税手続きや年金等の手続きにも広がっています。また、金融機関でも、同様の活用を認めるところが増えています。

例 みずほ銀行 「法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)をご提出いただく場合は、被相続人が亡くなられたことおよび相続人を確認させていただくための戸籍謄本のご提出は原則不要です。 「法定相続情報一覧図の写し」の取得方法および制度の詳細については、法務省のホームページをご参照ください。」

【法定相続情報一覧図のテンプレート】
「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」は法務局のHPから下記のケース別でダウンロードできます。
〇法定相続人が配偶者及び子である場合
〇法定相続人が子のみである場合
〇法定相続人が配偶者及び親(父母)である場合
〇法定相続人が配偶者及び兄弟姉妹である場合
〇代襲相続が生じている場合
〇いわゆる旧民法(明治31年法律第9号)下における相続が生じている場合
〇法定相続人が配偶者及び子(養子を含む)である場合

法定相続情報制度の手続きの流れ

出典 法務局チラシ

手続きに必要な戸籍収集を行い相続人を確定する作業は、間違いがあってはその後の手続きが無効になりかねないほど大切なものです。法定相続情報一覧図の作成は、行政書士などの資格のある専門家が代理できますので、相談しながら進めるのが良いと思います。

サイト管理者の杉並区の行政書士中村光男です。ホームページにもお立ち寄りください。

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