例えば、自分が死亡したら自分の持っている山林を贈与するという契約を生前に、第三者と契約することができます。あるいは、家族がほとんど興味を示さない骨とう品のコレクションを、自分が死亡したら地元の美術館に贈与するという契約も可能です。

 このように、贈与者の死亡を効力の発生条件にする贈与を死因贈与といいます。死因贈与と遺贈に似ていますが、死因贈与は、双方の合意に基づく契約ですし、遺贈は被相続人の単独行為である点が異なります。

 このため、遺贈では、受遺者は「根耳に水」ということで、遺贈を受けることを拒否するかもしれません。一方で、死因贈与にすれば、お互いの事前合意があるので、そのような拒否は起こらない可能性が大きいと考えられます。

 したがって、自分の大切なコレクションを、自分の死亡後に誰かに引き継いで大切に管理してほしいという希望があるような事例では、遺贈ではなく、死因贈与契約を書面で締結し、確定日付を押してもらったり公正証書にしておくことが良いと思われます。

 死因贈与契約は、死後の財産処分に係ることや、死亡が効力発生条件となっていますので、民法では、遺贈の効力に関する規定が準用されます(554条)が、あくまでも契約ですので、遺贈のような厳格な形式は必要でないとされています。

 なお、死因贈与契約には、受贈者に一定の負担をさせることもできます。例えば、不動産を遺贈する代わりに、自分が生きている限り面倒を見て欲しいというような契約です。

 負担付きの死因贈与契約では、負担と贈与されるもの全体は対価関係にはないですが、負担の範囲では実質的に対価関係があると考えられますので、民法は贈与者は負担の限度で、「売主と同じ」担保の責任を負うとしています(551条2項)。