使用貸借と贈与・相続

親子間で建物の使用を目的に土地を使用貸借した場合に、相続税や贈与税にどのような影響を与えるのでしょうか?

使用貸借と贈与税

民法では、無償で他人の物を使用・収益する契約を使用貸借と規定しています。

国税庁は、使用貸借にかかる使用借権の価額を0円とする取扱いを定めています。(注)→使用貸借通達(ただし、この取り扱いは個人間の使用貸借に限られます。)

使用借権が0円ですから、無償で使用している者が受けた経済的利益の額も0円なので贈与税は発生しません。

使用貸借と相続税

原則として土地を第三者に貸していれば相続税評価額が減額されます。

自分以外に賃借人の権利がある場合、借地借家法では不動産の賃借人の権利を規定しており、貸主の所有者としての土地利用は制限されるからです。

ただ使用貸借の場合は使用貸借契約は借地借家法における賃借人の権利保護の対象ではありません。

このため、貸主は不動産を自由に処分できるので、相続税評価額を減額されません。

(注)「使用貸借通達」
国税長通達「使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて」https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/731101/01.htm

法人の使用貸借(参考)

上記の使用貸借の価値をゼロ円とみなす取り扱いは、個人間の使用貸借に限定されています。これは、親子間の使用貸借など個人間の使用貸借は営利を目的としたものではないという前提があるからです。

一方、法人間はもちろんのこと、法人と個人間の使用貸借の個人についても、法人税の取り扱いルールに従います。

「法人税法」では、無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けは益金の額に含まれるとされます(法人税法22条2項)。

税法上、法人のすべての取引は時価に引き直して考えますので無償又は低廉で資産を譲り受けた場合に、時価との差額を受贈益として計上されることになります。

<法人の使用貸借のポイント>

  • 定義と適用:使用貸借とは無償で物品や土地を借りる契約ですが、法人が当事者の場合、税務上は賃貸借とみなされます。
  • 税務上の扱い
    • 権利金の認定:無償返還の届出がない場合、借地権相当の利益が移転したと見なされ、権利金が認定されます。
    • 地代の認定:無償返還の届出があれば、権利金は認定されず、相当の地代(→国税庁HPのみが認定されます。
  • 法的背景:民法上の使用貸借と税法上の賃貸借の扱いには違いがあり、法人の場合は経済的合理性に基づいて課税されます。

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ご注意:上記の記事は、概要です。実際の税務については個別のケースで異なりますので、税理士等専門家にご相談ください。