リースバックには「普通借家契約」とは?

建物の賃貸借契約には、長期にわたって住むことができる通常の賃貸契約(普通借家契約)、あらかじめ期間が決められている賃貸契約(定期借家契約)の2種類があります。この差を理解しておくことが大切です。

このブログを読むと、老後に自宅のリースバックを検討する際には、普通借家契約にすべきだという理由がお分かりになるかと思います。

普通借家契約とは

住宅事情の悪かった日本では、弱い立場にある建物の借り手を保護する必要がありました。例えば、横暴な大家さんが、短い期間を定めて、借家契約を結び、更新のたびに退去や家賃増額を迫られては、借家人は困ります。

そこで、普通借家契約では、期間を定めてあったとしても、「正当な事由」が無ければ、借家契約の更新拒絶や解約はできないというルール(*)になっています。

「正当事由」とは、法的に認められた妥当な理由という意味ですが、過去の判例では次のような例があります。

  1. 建物改築の必要性:都心にある老朽化したビルを近代的なものに改築する必要がある場合、これが正当な理由と認められています。
  2. 賃貸人の経済的困窮:賃貸人が経済的に困窮しており、賃貸物件の売却が唯一の解決策である場合も、正当な理由とされています。
  3. 賃借人の事業の継続必要性:一方で、賃借人が長年にわたり物件で事業を行っていることなどから、賃借人にとって建物の使用継続が必要であると判断された場合、正当な理由とは認められない裁判例もあります。

一般には普通借家契約が多数派(全体の約95%)です。よく不動産屋さんの入り口に貼ってある貸しアパートの契約はほぼ、普通借家契約でしょう。借り手に有利な契約なので、期間限定の定期借家契約に比べて、家賃は少々高めです。なお、法律上は契約は口頭の合意でも可能ですが、実務上は契約書があるのが普通です。

*)根拠条文 借地借家法
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項(建物賃貸借契約の更新をしない場合)の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

定期借家契約とは

普通借家契約では、賃貸人は「正当事由」がない限り解約や契約更新を拒むことができませんでしたので、貸し手から見ると、契約期間の不確実性、家賃改定の困難さ、立退き料などの問題が生じました。

その結果として、賃貸住宅市場は狭小な住宅の供給に偏り、空家問題も発生したと国は考えたのです。そこで、平成11年(1999年)に借地借家法が改正され、新たに、定期借家制度(定期建物賃貸借制度)が導入されました。

定期借家契約とは、契約期間があらかじめ決められている賃貸借契約です。契約の更新がないため、契約期間が満了すると借主は退去しなくてはなりません。ただし、貸主と借主の双方が合意すれば、期間満了後の再契約は可能です。

また、定期借家契約は、借り手にしっかりと契約リスクの認識をしてもらうために、「公正証書等の書面契約」が必要です(*)。

*)根拠条文 借地借家法
(定期建物賃貸借)
第三十八条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。

賃料の増減額のルールの違い

建物の家賃が、物価や税金の変動などで、相場に比べて不相当になった場合は、定期借家契約と普通借家契約ともに、原則として賃料増減額請求権が認められます(借地借家法32条)。

ただし、
・定期借家契約は賃料増減額請求権を排除する特約が可能です(借地借家法第38条9項)。
・普通借家契約は、増額しないという特約のみ有効です(借地借家法32条1項)。

対抗要件に差はない

自分が借りている建物がいつの間にか、差し押さえられたり、第三者に売却されていた場合に、借主は退去せざるを得ないのでしょうか?

この点については、普通借家契約でも、定期借家契約でも借家契約には違いはありません。借家人は、建物の引渡しを受けていれば、それが第三者対抗要件となりますので、所有者が変わっても、元の契約通りに住み続けられます(*)。

*)根拠条文 借地借家法
(建物賃貸借の対抗力)
第三十一条 建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

これは、借主が物件を占有していることが明らかであれば、第三者がその借家権の存在を認識すべきだとされるためです。

2つの契約の使い分け

普通借家契約と定期借家契約の違いを知って、使い分けることが大切です。

<普通借家契約が有効な場合>
・高齢者が、生前に自宅を売却し、売った自宅を借りて住み続ける「リースバック」は、普通借家契約が適切です。

定期借家契約では、大家の意向次第で期間満了後に再契約できなければ退去しなければなりません。再契約できたとしても家賃を値上げされた場合は受け入れるか退去するかになってしまうからです。

<定期借家契約が有効な場合>
・高齢者のみの世帯で、広い一戸建の管理が負担になってきたため、一戸建は賃貸し、その賃料収入を活用してマンション等を賃借して住み替えたいときは、一戸建ては定期借家契約にすることが適当です。

定期借家契約を利用することで、契約期間が満了した時点で、賃貸を続けるか、売却するか、相続人が自ら居住するかなど選択肢が広がるからです。

まとめ

普通借家契約は、借り手が手厚く保護され、期間満了後は借主が希望すれば契約は更新されるので、長く住み続けることができます。
定期借家契約は貸主の合意がないと再契約ができず、退去しなければなりません。短期間の入居目的なら家賃が安いので良いですが、長く住むには向いていません。

賃貸物件を借りたり、リースバックで自宅を売却したりする場合は、定期借家契約と普通借家契約の違いを理解して、自分にとって適切な契約パターンを選びましょう。

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