今日は在職老齢年金についてお話します。
「在職老齢年金」とは、単純に「仕事をしていても、もらえる老齢年金」のことですが、別の意味もあります。
「在職老齢年金」とは、「収入額に応じて年金が減らされる仕組み」であるのです。
「在職老齢年金」とは何ですか?
70歳未満の方が会社に就職し厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上の方が厚生年金保険の適用事業所にお勤めになった場合には、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。これを「在職老齢年金」といいます。
つまり「減額リスクのある年金」が「在職老齢年金」です。
具体的な計算ルールは以下の通りです。
賃金による月収(毎月の賃金+1年間の賞与÷12)と年金額の合計が48万円を超える場合、超過分の半額が年金から差し引かれます。
ただし、老齢基礎年金(=国民年金)については、全額支給が続きますので安心です。
出典:日本年金機構HP解説
支給停止された年金は戻ってくる?
支給停止となった年金は、その後一生もらえることはないです。
年金額が減額または支給停止となっている年金について「支給停止」という言葉から、何か手続きをすれば後日戻ってくるのではないか?と思いがちですが、これは誤解です。「支給停止」されたら、「戻らない年金」となります。
在職老齢年金を受けるための条件は?
在職老齢年金は、60歳以上の方が、日本年金機構に手続きをすること支給され、収入の変化に応じて支給が調整されます。
給料や賞与の変動がある場合、会社が変更を通知し、年金額が変わると本人に通知が届きます。
給与以外の収入がある場合は?
給与以外の収入が多くても在職老齢年金の支給減額や停止とは無関係です。
在職老齢年金制度は、厚生年金の被保険者を対象としています。
要するに、会社で雇用されていて、厚生年金保険料を納めている方々(後で述べるように社長も入ります)が対象です。この場合は、上でご説明したように、年金支給が減額されたり停止される可能性があります。
しかし、厚生年金保険料の計算基礎にならない収入は無関係です。
例えば、「投資による収入、不動産収入、事業収入、個人年金、宝くじの当選金、保険解約金」などは、在職老齢年金の支給には影響しません。
個人事業主の場合は?
個人事業主の場合は対象外です。
個人事業主や自営業者は、基本的に厚生年金保険に加入することができません。厚生年金保険は事業主に雇われている被用者用の年金制度だからです。
職老齢年金は厚生年金加入者が対象です。このため、個人事業主に在職老齢年金制度が適用されることはありません。
それでは、個人事業主ではなく、法人の社長ならどうでしょうか?
「社長は雇われていない」と考えがちですが、実は、健康保険法や厚生年金法では、「法人の社長」は「適用事業所に使用される者」であるとされています。
したがって、会社を定年になって、別の法人の社長になった場合でも、厚生年金の加入者ですので、役員報酬次第では、上で説明した計算式によって在職老齢年金制度の対象となります(つまり。減額または停止される)。
70歳以上でも減らされる?
現在の制度では、答えはYESです。
平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合は、厚生年金保険の被保険者ではありませんが、在職老齢年金制度による支給停止が行われます。
本来、70歳以上の方は、厚生年金加入の会社に勤務していても、厚生年金の被保険者ではありません。しかし、会社としてはその方について支払った報酬月額の届出や、賞与を支払った場合の届出が必要とされています。
平成19年4月以降に70歳に達した方に対しては、それらの届出に基づいて、70歳未満の方と同様の計算式で、厚生年金がカットされまることになっています。
まとめ
以上のように、「在職老齢年金」とは、単純に「仕事をしていてももらえる老齢年金」ではなく、会社に勤めて給与をもらっていると、「収入額に応じて年金が減らされる仕組み」なのです。
大事な点は、①在職老齢年金制度の対象者は厚生年金の被保険者として働いている年金受給者、つまり会社員(含む社長)であること、②減らされる年金に基礎年金は含まれず厚生年金だけあること、です。
ご自身の年金について正確な情報を持ち、将来の収入計画を立てる際に考慮することが重要です。早期に、賢明なプランを立て、安心した老後を迎えましょう。
参考 「在職老齢年金」(日本年金機構)
※年金制度は頻繁に改正されます。本記事は2023/9/28時点の情報に基づいています。