人生100年にGPIFを生かす 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

日本の年金の資産運用をしているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人/Government Pension Investment Fund)が資産規模200兆円を超える世界最大規模の機関投資家であることは有名ですが、GPIFの資産運用の考え方は、個人の資産運用の考え方の参考にもなると思います。

そこで、GPIFの基本的役割と個人の投資活動へのヒントを解説します。
(解説と図表はGPIFのHPから参照しました。)

公的年金は「世代間の支え合い」(賦課方式)

そもそもの前提として、日本の公的年金制度(厚生年金保険及び国民年金)は、現役世代が納める保険料で、その時々の高齢者世代に年金を給付しています(賦課方式)。

GPIF賦課方式 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

つまり、現役世代が将来受け取る年金は、その子どもや孫たちの世代が納める保険料でまかなわれることになります。

そのため、自分が納めた保険料が積み立てられ、将来自分に年金として戻ってくる仕組み(積立方式)ではありません。

年金積立金の意義

ただ、このまま少子高齢化が進むと、高齢者世代に給付する年金をまかなう現役世代からの保険料が少なくなります。公的年金制度が続くように、「年金積立金」で不足分を補う仕組みになっています。

 

年金積立金は未来の世代のためのお金

現役世代が納めた年金保険料のうち、年金の支払いなどに充てられなかったものが、将来世代のために積み立てられています。GPIFはこの年金積立金を、国内外 の資本市場で運用して増やしています。

年金積立金の運用収益や元本は概ね100年の年金の財政計画のなかで、将来世代の年金給付を補うために使われます。年金財源全体のうち、積立金からまかなわれるのは約1割です。

 

GPIFの資産運用方針と結果

GPIFの資産運用目標は、「長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保すること」です。
この目標を達成するための資産の投資先ですが、かつては、安全な国内債券が大半でしたが、その後、リスクとリターンの検証を重ねて、現在は、「国内債券25%・外国債券25%・国内株式25%・外国株式25%」という分かりやすい資産構成としています。

GPIF 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

このような1つのアセットクラスに資産を集中させない姿勢は参考になります。

その成果ですが、2001年から2023年現在累計では、収益額累計が126兆円、収益率は年率換算で3.91%です。

その間の日本の賃金上昇率は、残念ながらほぼ0%ですので、「長期的に積立金の実質的な運用利回り(積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保すること」という目標は達成されていると言えましょう。

GPIF 杉並区 | 行政書士中村光男事務所

ちんぎ
過去20年間の賃金上昇率はほぼ0.

概ね100年後に年金給付の1年分程度の積立金が残る

日本は、世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進んでいます。そのため、2004年に行われた年金制度改正では、保険料水準を将来にわたって固定するとともに、現在すでに生まれている世代が年金の受給を終えるまでの概ね100年間で、年金財政の均衡を図る方式が導入されました。

積立金は年金財政の安定化に活用することとされています。当初は年金給付の一部に積立金の運用収入を充て、一定期間後からは運用収入に加えて、積立金を少しずつ取り崩し、最終的に概ね100年後に年金給付の1年分程度の積立金が残るよう、積立金を活用していく財政計画が定められています。(首相官邸HPより

 

年金給付の財源(財政検証で前提としている概ね100年間の平均)は、その年の保険料収入と国庫負担で9割程度がまかなわれており、積立金から得られる財源は1割程度です。年金給付に必要な積立金は充分に保有しており、積立金の運用に伴う短期的な市場変動は年金給付に影響を与えません。

GPIFの資産運用から学ぶものは

・公的年金以外に、キャッシュフローを生む資産をもつ

GPIFは、国民の年金の財源である現役世代の保険料と国庫負担額を補完するキャッシュフローを国に提供しています。

この仕組みを個人の生活になぞらえると、仕事リタイア後の個人の老後は公的年金がベースですが、個人版GPIFともいうべき「キャッシュフローを生んでくれる金融資産」が欲しいということではないでしょうか。

例えば、公的年金以外に月5万円(年60万円)のキャッシュフローを得たいときに、運用利回りを正味3%と仮定すると、2000万円の資産が必要となります。

計算 2000万円×3%=60万円(年)

・資産運用は分散投資で

GPIFは長期的な分散投資を基本にしていますが、このことは、個人でも同様に心がけるべきでしょう。

分散投資すれば、リスクも分散します。ただ、GPIFと同様に国内外の株式と債券に25%ずつ配分すればいいかどうかは、悩みどころです。

リタイア後の生活では、インカムゲイン(利配)が貴重です。

GPIFのように、4資産のインデックス型の投信(市場連動型投信)へ同じ割合で投資をすれば、「キャピタルゲイン(時価の上昇)+インカムゲイン(利配収入)」の合計では最大になるかもしれないのです。しかし、定期的に配当があり、かつ顔の分かりやすい国内株式を銘柄分散すれば、ある程度の分散投資効果を得ることもできるのではないかと思いがちです。

この点は、個人的にも、より研究が必要なところかと思っています。

・資産運用は長期的視点で見る

長期的な運用においては、短期的な市場の動向により資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産構成割合を決めて長期間維持していくほうが、効率的で良い結果をもたGPIF  られています。

この考え方で、GPIFは 国内外の株式と債券に25%ずつ配分しているのです。

結果として、成績がマイナスの年もありますが、長期的にはプラス成長を続ける可能性が高くなります。

・資産を取り崩すこともあり

GPIFは、「一定期間後からは運用収入に加えて、積立金を少しずつ取り崩し、最終的に概ね100年後に年金給付の1年分程度の積立金が残るよう、積立金を活用していく」としています。

この考え方は、個人にも当てはまるでしょう。

ここで言っているのは、「元本を永久に使わないのではなく、ある時期からは、元本を取り崩しながら運用する」とい考え方です。

個人になぞらえると、65歳のときにある程度まとまったお金(たとえば2000万円)があるが、これを元本を取り崩さない場合は、先ほどの計算のように3%で運用すると、輸入増は毎年60万円ですが、元本を少しづつ取り崩していいとするならば、もう少し増えるということです。

具体的に計算すると、65歳で2000万の金融資産があり、これを3%で運用しながら、100歳(35年後)で使い切るようにしたい・・・と目標設定したときには、年間約94万円使えます。

資産2000万円、運用利回り3%のとき、期間別取り崩し可能金額

 

ちなみに、年率4%で運用できれば、35年間取り崩しの場合は、約108万円/年間となります。

これは、「資本回収係数」を使って計算します。ネット上にはたくさん計算サイトがありますので、自由に数値を入れてご試算ください。

例 https://keisan.casio.jp/exec/system/14289016360617

最後に

GPIFが開示している市場の見方などの情報は個人としてもよく見て、参考にすべきかと思います。なぜなら、GPIFは投資家(買い手)であって、銀行・証券会社のような売り手ではありません。投資家としての見方が、個人投資家には参考になるはずです。

GPIFでは、3か月ごとに、運用状況について理事長の簡潔なコメントが出ますが、定期的に、日本最大の機関投資家の見方を読むのも有益かと思います。

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