公証人手数料 行政書士中村光男事務所

遺言を公正証書にすると安心という話は聞かれたことがあると思います。

そこで、遺言を公正証書にするために公証人に支払う手数料はどれくらいか?について解説します。

そもそも公証人とは

公証人は、国の公務である公証作用を担う実質的な公務員ですが、国から給与や補助金など一切の金銭的給付を受けず、国が定めた手数料収入によって事務を運営しており、手数料制の公務員とも言われています。

公証人は、全国で約500名おり、公証人が執務する事務所である公証役場は約300箇所あります。

国が定めた手数料については、内閣が、公証人法に基づいて政令である公証人手数料令で詳しく定めています。

遺言作成の手数料の構成は3つ

遺言を公正証書にしてもらう場合、公証人に支払う手数料は①財産の価額に応じた手数料 ②遺言加算 ③用紙代で構成されます。

財産の価額に応じた手数料

遺言で対象とする財産の価額に応じて手数料が計算されます。

ここで、注意する点は、「相続人1名ごとに」を「財産の額を表に当てはめて手数料を算出」し、各相続人の手数料を合算するという点です。

これはなぜかというと、この手数料は「法律行為ごとに」算定されるからです。遺言で、3名を相続人に指定したとすると、一つの遺言書で3個の法律行為を行ったと考えるのです。手数料令では以下のように書かれています。

公証人手数料例第9条(法律行為に係る証書の作成の手数料の原則)

第九条法律行為に係る証書の作成についての手数料の額は、この政令に特別の定めがある場合を除き、別表の中欄に掲げる法律行為の目的の価額の区分に応じ、同表の下欄に定めるとおりとする。

 

遺言の遺産総額で手数料を考えがちですが、そうではないということです。

手数料表(公証人手数料令第9条別表)

公証人手数料 行政書士中村光男事務所

なお、いつの時点の財産の価額か?が疑問となりますが、これは「法律行為の目的の価額は、公証人が証書の作成に着手した時の価額による。」(公証人手数料令第11条)と決められています。実際に相続が発生したときの遺産の金額は、現在と同じでなないと考えられますが、それでは手数料を確定できないので、公正証書の手数料を計算するためには、公正証書を作成する時点の価額で計算するということです。

財産総額が6,000万円のケースでは・・

【相続人】 3名 (妻、長男、長女)

【遺言内容】  妻に60%、長男・長女に20%ずつ相続させる

【この場合の手数料】

①財産の価額に応じた手数料

財産総額6,000万円を、遺言に従って分けると、妻分は6,000万円×60%=3,600万円、長男は6,000万円×20%=1,200万円、長女も1,200万円です。

相続人ごとに、上記の手数料に当てはめると、妻分は「3000万円を超え5000万円以下」ですので、手数料は29,000円です。長男と長女は「1000万円を超え3000万円以下」ですので、手数料は23,000円です。

このケースでは、「財産の価額に応じた手数料」は、29,000+23,000+23,00075,000となります。

②遺言加算

遺言加算とは、遺言の目的の価額が1億円以下のときに発生する手数料で,11,000円です。これは、公証人手数料令という政令で決まっていることです。この例では、遺言の目的の価額は1億円以下ですから、政令により、前にご説明した遺言加算が11,000円かかります。

公証人手数料令191項 遺言加算

第十九条 遺言の証書の作成(遺言の補充又は更正に係るものを除く。)についての手数料の額は、第九条の規定による額に一万千円を加算する。ただし、遺言の目的の価額が一億円を超えるときは、この限りでない。

③用紙代

文字通り紙代です。政令で、証書の枚数による手数料の加算が決まっています。証書を何枚作成するかで異なりますが、2,000円程度と考えてよいでしょう。

公証人手数料令第25条(証書の枚数による加算)

第二十五条 法律行為に係る証書の作成についての手数料については、証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により四枚(法務省令で定める横書の証書にあっては、三枚)を超えるときは、超える一枚ごとに二百五十円を加算する。

④合計

この例だと①75,000円 + ② 11,000円 + 2,000円 =88,000円となります。

なお、公証人以外にかかる費用としては、専門家費用(遺言相談や文案作成、公証役場や証人コーディネート等で5~10万円程度・・内容が複雑ならもっとかかることもあるかと思います。)、証人2名の立会い手数料(1名1万円程度が相場でしょうか)、戸籍や住民票収集費用などがあります。

特殊なケース

遺言者が公証役場まで出向けない場合の手数料

 遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となる場合があり(病床執務加算がされる場合です。)、これに、遺言加算手数料を加えます。この他に、旅費(実費)、日当(12万円、4時間まで1万円)が必要になります。

公証人手数料令第32条(証書の作成が病床でされたことによる加算)

第三十二条証書の作成が嘱託人の病床においてされたときは、前二節の規定による手数料の額(第十九条第一項、第二十五条又は第三十条の規定の適用がある場合にあっては、これらの規定による加算前の額)にその額の十分の五の額を加算する。

遺言で祭祀主催者を指定する場合の手数料は11,000円

祭祀の主宰者の指定は、相続または遺贈とは別個の法律行為であり、かつ、目的価格が算定できないので、その手数料は11,000円です。なぜ11,000円になるかというと、これも政令で「法律行為の目的の価額を算定することができないときは、その法律行為の目的の価額は、五百万円とみなす」とされているからです。

上記の表で分かるように、財産の価額が500万円のときは、11,000円となっています。

公証人手数料令大6条(算定不能の場合の法律行為の目的の価額)

第十六条 法律行為の目的の価額を算定することができないときは、その法律行為の目的の価額は、五百万円とみなす。ただし、その法律行為の目的の最低価額が五百万円を超えることが明らかなときはその最低価額とし、その法律行為の目的の最高価額が五百万円に満たないことが明らかなときはその最高価額とする。

まとめ

公正証書の作成というのは一生のうちに何回もあることではないでしょうから、遺言を作成するときに初めてお世話になるという方も多いでしょう。そのとき、公証人にいくらお支払するのかについて簡単にご説明しました。

詳しく知りたい方は、下記のリンクもご参考にしてください。

参考

日本公証人連合会ホームページ

公証人手数料令

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