最近、信託銀行による遺言や相続に関連するサービスのCMを目にする機会が増えてきたように思います。信託銀行を活用した相続対策とは具体的にはどのようなものでしょうか。代表的な例について、わかりやすく整理してみました。
信託とは
まず、信託とは何かです。
法的には「他人(受託者)をして一定の目的に従って財産の管理または処分をさせるために、その者に財産権そのものを移転し(所有権などの移転)、またはその他の処分をすること」(信託2)となります。
相続や遺言との関係で信託の利用を考える際には、信託とは、「信頼できる他者に自分の財産を託して管理・運用してもらう。そこから生じる利益や財産を、自分で受けとってほしいと思う人に渡してもらう仕組み」(「遺贈寄付という選択」星野哲氏著 より引用)という説明がとても分かりやすいと思います。
遺言信託
遺言信託は、公正証書遺言で遺言執行者を信託銀行にしておくことです。
遺言執行者は、遺言書の内容にしたがい、故人の意思を実現することが役目です。遺言執行者は、多くの場合、遺言書のなかで指定されます。遺言執行者は、個人でも法人でもよく、専門家である必要もありません。また法定相続人のような利害関係者も可能です。
ただし、被相続人より早く亡くなってしまうリスクも考えると、法人のほうが安心かもしれません。
信託銀行で取り扱っている遺言信託は、一定の手数料を対価として、遺言書の作成から保管、執行までをトータルでサポートしています。このサービスは、普段から財産の管理を依頼しているなど信託銀行との関係がある方が選ばれる場合が多いようです。手数料の目安は財産額の2%程度のようですが、個別には各信託銀行への問い合わせが必要です。
遺言信託では、「信託銀行への財産の移転」はありません。この点が、次以降の「本来の信託」機能を使ったサービスと異なる点です。
遺言代用信託
信託銀行等に財産を信託して、生存中は本人のために管理・運用してもらい、亡くなった後には、配偶者さまや子供たちに財産を引き継ぐことができる信託です。
この場合、信託契約で、故人の意思が実現できるので、遺言書の作成は必要ありません。
【遺言代用信託の例】
〇委託者が存命中 ⇒ 委託者本人を受益者とし、受託者(信託銀行)から定期的な支払を受ける。
〇委託者が死亡 ⇒ 配偶者や子供を第二受益者としておけが、信託銀行が、定期または一時に金銭支払いを受けられる。
第二受益者を、自分が支援したいNPO法人に指定しておけば、遺贈による寄付も可能となります(ただし、NPO法人の指定を受け付けるかどうかは、信託銀行によって差があります)。
生命保険信託
生命保険信託とは、信託銀行等が生命保険の保険金受取人となり、保険契約者(本人)が死亡の際には、信託銀行が、死亡保険金を受け取り、保険契約者が生前に定めた親族やその他の遺産を渡したい相手に、あらかじめ決められた方法で、受け取った保険金により金銭を支払う仕組みです。
財産を残したいご家族に、障がいをお持ちの方や認知症の方がいる場合、財産管理をどなたがするのかが問題になる場合があります。このような場合に、信託銀行等に死亡保険金の受取・管理を任せると、親族等への定時定額の支払いなどによる金銭の給付を任せることができて安心です。
また、遺贈による寄付に活用することも考えられます。たとえば、保険会社や信託銀行によっては、保険金受取人の受益者を親族以外の公益法人に指定できるところもあります。そのような生命保険信託を活用すれば、生命保険を契約していた方に、相続人がいない状況になってしまった場合なども、生命保険を解約することなく、生命保険信託によって、ご自分の生命保険金を、ご自分の支援するNPO法人や、公益法人等に活用してもらうことも可能となります。
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