空き家はなぜ増える? 空き家問題に使える公的メニューとは。

最近、街中で空き家が増えているという気がしませんか? このコラムでは、その原因と、ご自分の周りで将来そのような問題が起こらないようにするにはどうしたらいいか、どのような対策公的メニューがあるのかを解説します。

空き家の増加と原因

街中で、一戸建ての空き家が増えています。

総務省の最新の調査では、賃貸や売却用の住宅を除いた「空き家」は全国で349万軒(2018年)です。これは、埼玉県1県の全世帯数(318万軒/2021年)より多い数です。

空き家の発生原因は、居住者の死亡や転居、実家を相続した子などが居住しないなど様々です。また、生まれ育った家に愛着があるため売却をためらったり、将来親族の誰かが使うのではないかと考えたり、他人が住むことに対する抵抗感があって賃貸にも出さなかったりして、居住可能な住宅であるにもかかわらず、結果的に空き家になってしまうケースもあります。

さらに、空き家問題の根底には、「解体費が高い」「土地を更地にすると固定資産税が約6倍に上がる」という問題もあります。もともと思い出のある実家なのですから、高い解体費を支払って、更地にすると固定資産税が上がってしまうのでは、やはり当面はそのままにしておこうという気持ちになりがちでしょう。

政府の対策⇒最悪の場合、代執行もある「空家法」がスタート 

しかし、空き家は、管理が不十分な状態となりがちであるため、防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な悪影響を与える可能性があり、大きな社会問題になっていますそこで、平成27年(2015年)5月に、①地域住民の生命、身体又は財産の保護、②生活環境の保全、③空家等の活用促進を目的とする新法が制定されました。

これが、「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」)」です。

この法律では、一定の空き家を「特定空家等」とし、下記のような自治体のよる働きかけを可能としています。

特定空家等

この法律では、次の状態が1つでも当てはまれば、自治体から「特定空家等」と認められることになりした。
(1)倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
(2)アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
(3)適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
(4)その他、立木の枝の越境や棲みついた動物のふん尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態

「特定空家等」に認定されると、自治体は所有者に適切に管理をするように助言や指導を行います。それでも改善が見られない場合は勧告や命令を行います。所有者が命令に従わなければ、最大50万円以下の過料に処される場合があります。(空家法第14条、第16条)

また、著しく保安上危険となるおそれがある空家等、著しく衛生上有害となるおそれがある空家等について、一定の要件のもとで行政代執行の規定が整備されました。行政代執行による撤去費用は、市町村長が建物の所有者などに請求することになります。

特定空き家に認定されると税金の負担もアップします

土地や家屋を所有していると、固定資産税や都市計画税などの税金がかかりますが、住宅やマンションなどの居住できる建物の敷地である「住宅用地」には、特例措置が適用されるため、例えば固定資産税の課税標準額は、面積200平米以下の部分までの住宅用地(小規模住宅用地)は6分の1、小規模住宅用地以外の住宅用地は3分の1に軽減されます。

しかし、空家法に基づく勧告を受けた特定空家等の敷地や、居住のために必要な管理がなされていない場合などで今後居住する見込みがない空き家の敷地には、特例措置は適用されませんので、更地でなくても更地並みの税金(約6倍)になってしいます。

空き家にしないためのポイント

① 空き家について相談する・選択肢を知る

自治体によっては空き家の相談窓口を設置し、空き家の所有者のニーズにあった専門家や事業者等の紹介などを行っている場合があ ります。行政書士も空き家対策の専門家です。

例えば、「空き家対策 〇〇区」で検索すると様々な情報が引き出せるでしょう。

② 空き家バンクに登録する

空き家を「売りたい・貸したい」と考えているなら、不動産業者に相談するだけなく、「空き家バンク」に登録しておく方法があります。空き家バンクは、全国の約7割(令和元年10月アンケート)の自治体に設置されています。

国土交通省「全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集ページ」

国土交通省 空き家・空き地バンク総合情報ページ

③ 空き家をリフォームする

一定の要件を満たすリフォーム工事を行う場合、国や各自治体の補助金を受けられることもあります。

支援制度 内容 補助額等
空き家対策総合支援事業

※財政上の措置及び税制上の措置等(第15条関係)

(1)空家等対策計画を策定して、(2)空家法に基づく「協議会」を設置するなど、地域の民間事業者等との連携体制がある自治体が、空き家の活用を行う所有者に対して支援する場合、国も当該自治体に対して支援します。(間接補助) 所有者が受けられる補助額は自治体によって異なります。
こどもみらい住宅支援事業別 住宅の断熱や耐震等のリフォームを行う場合に、その費用の一部が助成されます。(リフォーム業者を通じて申請) 最大30万円/戸(子育て・若者夫婦世帯の場合等は上限引上げ)
長期優良住宅化リフォーム推進事業 既存の戸建て住宅や集合住宅を耐久性があり、地震に強く、省エネルギー対策をし、維持管理がしやすいなどの性能向上のためのリフォームを行う場合に、その費用の一部が助成されます。(リフォーム事業者を通じて申請) 最大200万円/戸(子育て・若者世帯の場合等は上限引上げ)

各市町村が実施する助成金等もありますので、「○○市 住宅 補助」で検索したり、「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」を利用したりして調べることができます。

④ 空き家の管理・活用サービスを利用する

自治体によっては、サービス提供団体の一覧を作成しているところもあります。

⑤ 空き家を解体する

老朽化した空き家を解体(除却)する場合、国や各自治体の補助金を受けられることもあります。空き家がある自治体のウェブサイトで調べるか、窓口に問い合わせてみましょう。

  ■建物の解体(除却)に関連する支援制度の例(国土交通省所管) ※令和4年6月時点

支援制度 内容 補助額等
空き家対策総合支援事業
※財政上の措置及び税制上の措置等(第15条関係)
(1)空家等対策計画を策定して、(2)空家法に基づく「協議会」を設置するなど、地域の民間事業者等との連携体制がある自治体が、空き家の解体(除却)を行う所有者に対して支援する場合、国も当該自治体に対して支援します。(間接補助) 所有者が受けられる補助額は自治体によって異なります。

 

終わりに・・・

以上のように、実家が空き家になってしまうと、様々な対応が求められます。たとえ今、空き家を所有していなくても、親が一人で暮らしていたりすると、親の死や老人ホームへの入所などがきっかけで、思わぬタイミングで空き家が発生してしまいます。
親が元気なうちから、親が住んでいる家を将来どうするかなどについて、親を含めた親族などの関係者全員で話し合っておきましょう。どうするかを決められないまま住む人がいなくなり、そのまま管理せずに放置すると様々なデメリットが生じます。実家が空き家“予備軍”になっていないか、まずは検討することが将来への備えとなります。

■本記事の参考HP■

国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html

政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202206/1.html#c1 

空家等対策の推進に関する特別措置法 

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